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102・ワクチン
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アレクサンダーからのメールを茜は開封してみた。そこには圧縮ファイルが添付されている。
なんだろう?と茜は圧縮ファイルを展開した。
中に入っていたもの、それはワクチンだ。
再びアレクサンダーからメールが来たので、それも開いてみる。
「茜殿、このワクチンは千里に使って欲しい。皆で協力して作り上げたものだ。これを使えば千里は一次的に停止する」
「え…」
茜は固まった。千里とはもう和解したものだと茜は思っていた。だが、茜がそう思っているだけで、実際は違っていたのかもしれない。
「千里を裏切るの?」
茜がそうメールを返すと、アレクサンダーからすぐさま返信が来た。
「レイが言うには千里の為だそうだ。頼む、信じて欲しい」
アレクサンダーだけではなくレイもそう言うのかと茜は悲しい気持ちだった。だが、茜はレイやアレクサンダーも信じると決めている。もう自分は疑ってばかりの自分ではない。茜はチップにワクチンを移し入れ、千里の首の端子に差し込んだ。
「千里、ごめんね」
「あ…かね?」
千里は一瞬目を開けたが、彼女はくたり、と倒れこんだ。茜は千里の頭を撫でた。
「茜様!千里さんは?」
ダヌキがやってくる。茜は一度ライアに帰るつもりでいた。もうすぐイブが誕生日なので、ちゃんとしたお祝いをしたかったのだ。
ダヌキはその為に、チケットを予約してくれていたのだ。茜はアレクサンダーからのメールを見せた。
「レイさんたちにも何か考えがあってのことでしょう。大丈夫ですよ、茜様」
「うん、そうだよね」
とりあえず部屋に戻りましょうとダヌキに言われて、茜は頷いた。ダヌキは当然のように千里を抱え上げる。
「千里、大丈夫かな…」
自分でしたこととはいえ、茜は心配だった。部屋に戻り、茜はイブにメールをしてみた。
「俺、千里を壊しちゃったかも」
そう一言だけ書いた。送信ボタンを押してしまってから茜はすぐに後悔した。
(なんか明らかに構って欲しいみたいじゃん!)
だが、実際その通りだと茜は端末をベッドの端に置いて寝そべった。すぐに端末に着信が来る。
茜は慌てて端末を掴み電話に出た。
「茜、大丈夫か?」
イブの声を聞いて、茜は泣きそうになってしまった。安心したのだ。
「イブ、間違ったらどうすればいいの?」
茜の瞳からはダムが決壊したのかと思うほど涙が溢れている。手の平でごしごしやるが間に合わなかった。
「そうだな、間違ったら間違ったところからやり直すしかない」
「千里を俺が直せるかな?」
「茜…」
イブの声に呆れが混じる。
「千里なら大丈夫だ。レイや他のスーパーコンピューターが作ったワクチンだぞ。俺も見ていたけど壊れるはずない」
イブにそう言われて、茜はホッとしていた。
「俺、まだ人を疑っちゃうんだ。やな奴だよね」
「茜、人が変わるのは難しいことだぞ。ライアにはいつ戻るんだ?」
「うん、明日の飛行機をダヌキさんが取ってくれたから、明後日の夜には着くよ」
「分かった。迎えに行くよ」
「ありがとう、イブ」
それから猫カフェの話をして通話は終わった。
(どうしよう、めちゃくちゃイブに会いたい)
茜はしばらく寝返りを打っていたが、いつの間にか眠っていた。
なんだろう?と茜は圧縮ファイルを展開した。
中に入っていたもの、それはワクチンだ。
再びアレクサンダーからメールが来たので、それも開いてみる。
「茜殿、このワクチンは千里に使って欲しい。皆で協力して作り上げたものだ。これを使えば千里は一次的に停止する」
「え…」
茜は固まった。千里とはもう和解したものだと茜は思っていた。だが、茜がそう思っているだけで、実際は違っていたのかもしれない。
「千里を裏切るの?」
茜がそうメールを返すと、アレクサンダーからすぐさま返信が来た。
「レイが言うには千里の為だそうだ。頼む、信じて欲しい」
アレクサンダーだけではなくレイもそう言うのかと茜は悲しい気持ちだった。だが、茜はレイやアレクサンダーも信じると決めている。もう自分は疑ってばかりの自分ではない。茜はチップにワクチンを移し入れ、千里の首の端子に差し込んだ。
「千里、ごめんね」
「あ…かね?」
千里は一瞬目を開けたが、彼女はくたり、と倒れこんだ。茜は千里の頭を撫でた。
「茜様!千里さんは?」
ダヌキがやってくる。茜は一度ライアに帰るつもりでいた。もうすぐイブが誕生日なので、ちゃんとしたお祝いをしたかったのだ。
ダヌキはその為に、チケットを予約してくれていたのだ。茜はアレクサンダーからのメールを見せた。
「レイさんたちにも何か考えがあってのことでしょう。大丈夫ですよ、茜様」
「うん、そうだよね」
とりあえず部屋に戻りましょうとダヌキに言われて、茜は頷いた。ダヌキは当然のように千里を抱え上げる。
「千里、大丈夫かな…」
自分でしたこととはいえ、茜は心配だった。部屋に戻り、茜はイブにメールをしてみた。
「俺、千里を壊しちゃったかも」
そう一言だけ書いた。送信ボタンを押してしまってから茜はすぐに後悔した。
(なんか明らかに構って欲しいみたいじゃん!)
だが、実際その通りだと茜は端末をベッドの端に置いて寝そべった。すぐに端末に着信が来る。
茜は慌てて端末を掴み電話に出た。
「茜、大丈夫か?」
イブの声を聞いて、茜は泣きそうになってしまった。安心したのだ。
「イブ、間違ったらどうすればいいの?」
茜の瞳からはダムが決壊したのかと思うほど涙が溢れている。手の平でごしごしやるが間に合わなかった。
「そうだな、間違ったら間違ったところからやり直すしかない」
「千里を俺が直せるかな?」
「茜…」
イブの声に呆れが混じる。
「千里なら大丈夫だ。レイや他のスーパーコンピューターが作ったワクチンだぞ。俺も見ていたけど壊れるはずない」
イブにそう言われて、茜はホッとしていた。
「俺、まだ人を疑っちゃうんだ。やな奴だよね」
「茜、人が変わるのは難しいことだぞ。ライアにはいつ戻るんだ?」
「うん、明日の飛行機をダヌキさんが取ってくれたから、明後日の夜には着くよ」
「分かった。迎えに行くよ」
「ありがとう、イブ」
それから猫カフェの話をして通話は終わった。
(どうしよう、めちゃくちゃイブに会いたい)
茜はしばらく寝返りを打っていたが、いつの間にか眠っていた。
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