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99・柄揃え
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ドンゲコと茜は向かい合って立っている。2人の間の距離は数メートルはあるだろうか。そして、2人のすぐ目の前には5枚のカードが並んでいた。ドンゲコが豪快にガハハと笑う。
「茜よ、そのカードらにはそれぞれ点数がある。最後にお互いオープンして、全てのカードの合計点数が30点に近いほうが勝ちじゃ」
茜は表示されている点数を確認した。19点と心許ない。もちろんこの点はドンゲコには見えていない。茜は隣に控えているパネルマスターを見つめた。
彼にも何か役目が付加されているのかと茜は考える。
「手札の入れ替えは2回まで。このゲームは運が全てだからなぁ」
ドンゲコがゲロゲロと鳴きながら笑っている。
「ワシは手札は交換せん!茜、お前はどうする?」
「俺は3枚変えます」
茜は小さな数字のカードをチェンジした。
(16点?さっきより悪くなった)
「ワシは交換せん。茜よ、もうチャンスは最後だ。どうする?ゲコゲコ」
「…」
ここでチェンジしなければ勝ち目はない。
(ドンゲコ様の手札が30点ぴったりだった場合、俺はどちらにせよ…負け…)
茜は諦めるなと自らを鼓舞した。
「俺はもう一度カードを3枚変えます」
「ふふん、このゲームでワシに勝てるはずがない。ワシは幸運の神だぞ」
ドンゲコが自信満々に言う。茜は新しく来たカードを見つめた。現在26点。もう茜は手札を変えられない。
(どうする…?)
茜がチラリ、とパネルマスターを見ると小さく頷かれたように見えた。
(パネルマスターになにか案があるみたいだ。任せてもいいのかな)
茜は迷っていた。だが、ふと思い出す。
(いや、俺は周りと自分を信じるって決めたんじゃないか)
「ドンゲコ様、勝負です!」
「ゲコゲコ、いよいよか!ならばワシから手札をオープンする!」
ドンゲコの手札はやはり30点だった。茜はぐ、と拳を握り締める。
「俺の手札は…」
茜はパネルマスターに頷いてみせた。
「パネルマスター!ドンゲコ様の手札を俺のと入れ替えて!」
パネルマスターがパネルを操作し、茜とドンゲコの手札を交換した。
「な、なんじゃてえええ!!!」
茜の手札も入れ替え時に同時に公開される。もちろん、茜の勝利だ。
「守護神の力をここまで扱えるとは、さすが茜」
ドンゲコはその場にぺたっと座った。
「もういいじゃありませんか」
どこからか声がする。茜はそちらを見た。人型だが明らかにネズミだ。その人は真っ白な衣装に身を包んでいる。
「いや、俺はまだ判断材料が少ないと思うぜ」
もう一人は蛇のようだった。チロチロと舌を出しては茜を睨みつけてくる。
「あたしは…構わない」
犬の耳を生やした幼い少女まで現れた。
「うむぅ…サヌールはどう判断するやら」
ドンゲコが二重顎に手を当てて悩んでいる。ネズミの神が言った。
「とりあえず皆と一緒に、この迷路のゴールへ向かいましょう。サヌール様にはこの様子も伝わっているはずですから」
「チッ、仕方ねえ。おい、茜、ペンダントを出せ」
茜は言われるがままペンダントを差し出した。神々が宝珠へと姿を変えていく。
「では、行きましょうか」
ネズミの神に促され、茜は迷路を歩き出した。
「茜よ、そのカードらにはそれぞれ点数がある。最後にお互いオープンして、全てのカードの合計点数が30点に近いほうが勝ちじゃ」
茜は表示されている点数を確認した。19点と心許ない。もちろんこの点はドンゲコには見えていない。茜は隣に控えているパネルマスターを見つめた。
彼にも何か役目が付加されているのかと茜は考える。
「手札の入れ替えは2回まで。このゲームは運が全てだからなぁ」
ドンゲコがゲロゲロと鳴きながら笑っている。
「ワシは手札は交換せん!茜、お前はどうする?」
「俺は3枚変えます」
茜は小さな数字のカードをチェンジした。
(16点?さっきより悪くなった)
「ワシは交換せん。茜よ、もうチャンスは最後だ。どうする?ゲコゲコ」
「…」
ここでチェンジしなければ勝ち目はない。
(ドンゲコ様の手札が30点ぴったりだった場合、俺はどちらにせよ…負け…)
茜は諦めるなと自らを鼓舞した。
「俺はもう一度カードを3枚変えます」
「ふふん、このゲームでワシに勝てるはずがない。ワシは幸運の神だぞ」
ドンゲコが自信満々に言う。茜は新しく来たカードを見つめた。現在26点。もう茜は手札を変えられない。
(どうする…?)
茜がチラリ、とパネルマスターを見ると小さく頷かれたように見えた。
(パネルマスターになにか案があるみたいだ。任せてもいいのかな)
茜は迷っていた。だが、ふと思い出す。
(いや、俺は周りと自分を信じるって決めたんじゃないか)
「ドンゲコ様、勝負です!」
「ゲコゲコ、いよいよか!ならばワシから手札をオープンする!」
ドンゲコの手札はやはり30点だった。茜はぐ、と拳を握り締める。
「俺の手札は…」
茜はパネルマスターに頷いてみせた。
「パネルマスター!ドンゲコ様の手札を俺のと入れ替えて!」
パネルマスターがパネルを操作し、茜とドンゲコの手札を交換した。
「な、なんじゃてえええ!!!」
茜の手札も入れ替え時に同時に公開される。もちろん、茜の勝利だ。
「守護神の力をここまで扱えるとは、さすが茜」
ドンゲコはその場にぺたっと座った。
「もういいじゃありませんか」
どこからか声がする。茜はそちらを見た。人型だが明らかにネズミだ。その人は真っ白な衣装に身を包んでいる。
「いや、俺はまだ判断材料が少ないと思うぜ」
もう一人は蛇のようだった。チロチロと舌を出しては茜を睨みつけてくる。
「あたしは…構わない」
犬の耳を生やした幼い少女まで現れた。
「うむぅ…サヌールはどう判断するやら」
ドンゲコが二重顎に手を当てて悩んでいる。ネズミの神が言った。
「とりあえず皆と一緒に、この迷路のゴールへ向かいましょう。サヌール様にはこの様子も伝わっているはずですから」
「チッ、仕方ねえ。おい、茜、ペンダントを出せ」
茜は言われるがままペンダントを差し出した。神々が宝珠へと姿を変えていく。
「では、行きましょうか」
ネズミの神に促され、茜は迷路を歩き出した。
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