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83・悪神ギルド
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船が右に左に揺れる。茜たちはよろめきながらも前方に向かった。何か巨大なものが船を掴んで揺らしている。
「悪神ギルド…まだ完全に力を取り戻してないようじゃな」
九尾の呟きにダヌキが声を上げた。
「九尾様、あれが悪神ギルドなのですか?」
「うむ。今のうちに仕留めておこう」
外に出るなり九尾が巨大化する。テラもまた海の中に飛び込むなり巨大化した。
「ぎゅるる」
ギルドは幼い子供のように船を指で摘んでは左右に揺らしている。その度に波飛沫があがり、船に水が流れ込んでくる。このままでは沈没する。
「ギルド!覚悟!!」
九尾がギルドの首筋に鋭い歯を立てた。ギルドは驚いたのか仰け反りバランスを崩す。テラがその上から更にのしかかった。バシャンと大きな波飛沫があがり、茜たちは真正面から水を被った。
「茜、力を貸してくれ」
九尾に言われ、茜はペンダントを握り祈る。するとギルドが苦しみ出した。あっという間に霧散していく。
「むう、あ奴、本体じゃなかったようだ。さては奴め、魂を分けているな?」
九尾が小さくなる。テラも小さくなり戻って来た。
「魂を分けるって?」
「おそらく奴を顕現させた何者かに魂の分裂を強制されたのだろう。他にも被害が出ている可能性がある。イブと話せるか?」
茜が端末を取り出すとちょうど鳴りだした。
「イブ?」
「茜、無事か?主要な都市にギルドが現れて暴れた。甚大な被害が出ているところもある。神々が応戦したが、ギルドに加担する人間がいたらしい。神々は人間に攻撃しないからな」
「そんな…」
茜は目の前が暗くなった。
「茜、落ち着いて聞いてくれ。今回のことで国が動く。もちろん神々と合同でだ。お前はこのままベルベルトへ行くんだ。俺もすぐ追い掛ける。大丈夫だ」
イブの大丈夫はいつも茜を励ましてくれる。
「うん、ありがとう。イブ」
「茜様、部屋に戻って休みましょう。顔色がよくありません」
「うん」
なんとか部屋に戻ってきた茜は着替えてベッドに横になった。だが、まだ心臓がばくばくと脈打っており、落ち着かない。何度も寝返りを打ってみるが効果はなかった。何か飲んでみようと茜はそろりとベッドから下りた。ダヌキは部屋の外で警戒してくれている。
「茜や、怖い思いをさせたな」
九尾が現れて言った。
「でも、大丈夫だったし、大丈夫」
「…茜、これを飲め」
ふわり、とグラスが茜の目の前に現れる。茜はそれを握った。しゅわしゅわとグラスの中で、泡が弾けている。
「飲めば落ち着く。我の嫁が作ったのじゃ」
「九尾様のお嫁さん?」
「うむ。我の嫁は人間だ」
茜は驚いた。だがそれよりも喉が渇いている。こきゅ、と一口飲むと、爽やかな甘さと酸っぱさが広がった。
「レモネード?」
「うむ、美味いじゃろ?」
「うん、すごく」
なんだか心臓が静かになった気がする。茜は全て飲み干した。
「ありがとう、九尾様」
「茜、よく休め。明日から忙しくなる」
「うん」
茜は再びベッドに入り目を閉じた。
「悪神ギルド…まだ完全に力を取り戻してないようじゃな」
九尾の呟きにダヌキが声を上げた。
「九尾様、あれが悪神ギルドなのですか?」
「うむ。今のうちに仕留めておこう」
外に出るなり九尾が巨大化する。テラもまた海の中に飛び込むなり巨大化した。
「ぎゅるる」
ギルドは幼い子供のように船を指で摘んでは左右に揺らしている。その度に波飛沫があがり、船に水が流れ込んでくる。このままでは沈没する。
「ギルド!覚悟!!」
九尾がギルドの首筋に鋭い歯を立てた。ギルドは驚いたのか仰け反りバランスを崩す。テラがその上から更にのしかかった。バシャンと大きな波飛沫があがり、茜たちは真正面から水を被った。
「茜、力を貸してくれ」
九尾に言われ、茜はペンダントを握り祈る。するとギルドが苦しみ出した。あっという間に霧散していく。
「むう、あ奴、本体じゃなかったようだ。さては奴め、魂を分けているな?」
九尾が小さくなる。テラも小さくなり戻って来た。
「魂を分けるって?」
「おそらく奴を顕現させた何者かに魂の分裂を強制されたのだろう。他にも被害が出ている可能性がある。イブと話せるか?」
茜が端末を取り出すとちょうど鳴りだした。
「イブ?」
「茜、無事か?主要な都市にギルドが現れて暴れた。甚大な被害が出ているところもある。神々が応戦したが、ギルドに加担する人間がいたらしい。神々は人間に攻撃しないからな」
「そんな…」
茜は目の前が暗くなった。
「茜、落ち着いて聞いてくれ。今回のことで国が動く。もちろん神々と合同でだ。お前はこのままベルベルトへ行くんだ。俺もすぐ追い掛ける。大丈夫だ」
イブの大丈夫はいつも茜を励ましてくれる。
「うん、ありがとう。イブ」
「茜様、部屋に戻って休みましょう。顔色がよくありません」
「うん」
なんとか部屋に戻ってきた茜は着替えてベッドに横になった。だが、まだ心臓がばくばくと脈打っており、落ち着かない。何度も寝返りを打ってみるが効果はなかった。何か飲んでみようと茜はそろりとベッドから下りた。ダヌキは部屋の外で警戒してくれている。
「茜や、怖い思いをさせたな」
九尾が現れて言った。
「でも、大丈夫だったし、大丈夫」
「…茜、これを飲め」
ふわり、とグラスが茜の目の前に現れる。茜はそれを握った。しゅわしゅわとグラスの中で、泡が弾けている。
「飲めば落ち着く。我の嫁が作ったのじゃ」
「九尾様のお嫁さん?」
「うむ。我の嫁は人間だ」
茜は驚いた。だがそれよりも喉が渇いている。こきゅ、と一口飲むと、爽やかな甘さと酸っぱさが広がった。
「レモネード?」
「うむ、美味いじゃろ?」
「うん、すごく」
なんだか心臓が静かになった気がする。茜は全て飲み干した。
「ありがとう、九尾様」
「茜、よく休め。明日から忙しくなる」
「うん」
茜は再びベッドに入り目を閉じた。
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