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75・レイ②
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「レイって言うのは今から七年前に急に現れた天才プログラマーだ。自費でOSソフトを作成して販売したのを皮切りに一気に有名になった」
イブの説明にチェイカがうんうんと頷いている。
「そのソフト、本当に便利なんだよ。なんていうんだっけ?そういうの?」
「かゆいところに手が届く…か?」
「そうそれ!こうしたいなぁって思うとちゃんと出来る感じ」
「それはすごいソフトだね。まず俺の次元にはないものだったよ。あれ…?」
茜は思い付いて血の気が引いた。
「茜?どうした?」
「その、もしの話なんだけど、レイさんが次元を跳んでたら大変なんじゃ」
「それはないな」
「僕もそう思う」
なんで?と茜が首を傾げると、二人は声を揃えるように言った。
「「レイは次元飛躍に反対していたから」」
「なんで?」
「レイはそれだけこの次元を愛してるみたいだからな。一応次元飛躍装置の使用履歴を10年前まで遡って確認してみたけど、レイらしき人物はいなかった」
「イブ、仕事早いね!」
「ふん、それくらいチェイカにも出来るよ」
「あ、またそうやって僕を馬鹿にする!」
むぐぐとチェイカが頬を膨らませる。
「馬鹿になんてしてねえ、お前はしっかり茜を守ってくれた。本当にありがとう」
「げげー、イブが僕にお礼言うとか明日は槍降るよ」
ぞぞぞとチェイカが自分を抱き締めながら震えている。その様子に茜は思わず笑ってしまった。
「で、これから茜とイブはどうするの?」
「あぁ、茜には神々に会って事情を話して協力してもらわなくちゃいけないからなぁ」
「つまり茜、大忙しってこと?」
「まあそうなる」
「イブ、あんまりしんどいのはやだよ?」
茜の言葉にイブは唸った。どうすればいいか考える必要がある。
「よし、そろそろ飯を食いに行くか。チェイカも帰らなきゃいけないしな」
「泊まってもいいなら泊まるけど?」
「夫婦の邪魔をするな、チビスケ」
「むー」
チェイカが唇を尖らせる。あははと茜も力なく笑うことしか出来なかった。
✢✢✢
茜は着替えてベッドにうつ伏せになってPCを見ている。そんな茜の後ろからイブがのしかかってきた。
「茜、レイのこと探ってんのか」
「うん、アリカさんのデータベース見せてもらってるの」
「ふーん」
する、とイブの手が寝巻きの中に入ってきて茜は震えた。
「あ、イブ…そういうの今は」
ぎゅっと後ろからイブに抱き締められていた。
「イブ?」
「茜、辛くなったら辞めていいからな」
「…イブ、それはさすがに無責任過ぎでしょ」
「そうか…でもどうすればいい?可愛い嫁さんになんもしてやれない」
茜はイブの手を握り締めた。
「大丈夫。イブは俺のために色々してくれるでしょう?」
「大したことは…」
「十分だよ、イブ。俺、頑張りたい」
「茜…」
茜はイブの方に向き直り彼の唇にキスをした。
「イブ、俺ねフリースクールに行ってみようと思う」
「そりゃまた急な話だな」
茜はPCの画面をイブに見せた。それはフリースクールのページである。フリースクールは世界各地に点在している。
「このフリースクール、宝探しっていうカリキュラムがあるの!世界中を巡る理由になるし、基本的に交通費や生活費は無料なんだよ。その代わり一定期間働かなきゃいけないんだけどね」
「茜にはちゃんと給料があるじゃないか」
「ふふ、でも俺、色々な仕事がしてみたいんだ。お給料は子供に充てたい」
「それなら発情はどうする?」
「イブ、その時は助けてくれる?」
「構わねえけど、でも心配だ。薬も忘れないで飲めよ?」
「約束する!」
結局イブが折れる形で話はまとまった。フリースクールはいつからでも入学出来るらしい。茜は近い内に話を聞きに行こうと決めたのだった。
イブの説明にチェイカがうんうんと頷いている。
「そのソフト、本当に便利なんだよ。なんていうんだっけ?そういうの?」
「かゆいところに手が届く…か?」
「そうそれ!こうしたいなぁって思うとちゃんと出来る感じ」
「それはすごいソフトだね。まず俺の次元にはないものだったよ。あれ…?」
茜は思い付いて血の気が引いた。
「茜?どうした?」
「その、もしの話なんだけど、レイさんが次元を跳んでたら大変なんじゃ」
「それはないな」
「僕もそう思う」
なんで?と茜が首を傾げると、二人は声を揃えるように言った。
「「レイは次元飛躍に反対していたから」」
「なんで?」
「レイはそれだけこの次元を愛してるみたいだからな。一応次元飛躍装置の使用履歴を10年前まで遡って確認してみたけど、レイらしき人物はいなかった」
「イブ、仕事早いね!」
「ふん、それくらいチェイカにも出来るよ」
「あ、またそうやって僕を馬鹿にする!」
むぐぐとチェイカが頬を膨らませる。
「馬鹿になんてしてねえ、お前はしっかり茜を守ってくれた。本当にありがとう」
「げげー、イブが僕にお礼言うとか明日は槍降るよ」
ぞぞぞとチェイカが自分を抱き締めながら震えている。その様子に茜は思わず笑ってしまった。
「で、これから茜とイブはどうするの?」
「あぁ、茜には神々に会って事情を話して協力してもらわなくちゃいけないからなぁ」
「つまり茜、大忙しってこと?」
「まあそうなる」
「イブ、あんまりしんどいのはやだよ?」
茜の言葉にイブは唸った。どうすればいいか考える必要がある。
「よし、そろそろ飯を食いに行くか。チェイカも帰らなきゃいけないしな」
「泊まってもいいなら泊まるけど?」
「夫婦の邪魔をするな、チビスケ」
「むー」
チェイカが唇を尖らせる。あははと茜も力なく笑うことしか出来なかった。
✢✢✢
茜は着替えてベッドにうつ伏せになってPCを見ている。そんな茜の後ろからイブがのしかかってきた。
「茜、レイのこと探ってんのか」
「うん、アリカさんのデータベース見せてもらってるの」
「ふーん」
する、とイブの手が寝巻きの中に入ってきて茜は震えた。
「あ、イブ…そういうの今は」
ぎゅっと後ろからイブに抱き締められていた。
「イブ?」
「茜、辛くなったら辞めていいからな」
「…イブ、それはさすがに無責任過ぎでしょ」
「そうか…でもどうすればいい?可愛い嫁さんになんもしてやれない」
茜はイブの手を握り締めた。
「大丈夫。イブは俺のために色々してくれるでしょう?」
「大したことは…」
「十分だよ、イブ。俺、頑張りたい」
「茜…」
茜はイブの方に向き直り彼の唇にキスをした。
「イブ、俺ねフリースクールに行ってみようと思う」
「そりゃまた急な話だな」
茜はPCの画面をイブに見せた。それはフリースクールのページである。フリースクールは世界各地に点在している。
「このフリースクール、宝探しっていうカリキュラムがあるの!世界中を巡る理由になるし、基本的に交通費や生活費は無料なんだよ。その代わり一定期間働かなきゃいけないんだけどね」
「茜にはちゃんと給料があるじゃないか」
「ふふ、でも俺、色々な仕事がしてみたいんだ。お給料は子供に充てたい」
「それなら発情はどうする?」
「イブ、その時は助けてくれる?」
「構わねえけど、でも心配だ。薬も忘れないで飲めよ?」
「約束する!」
結局イブが折れる形で話はまとまった。フリースクールはいつからでも入学出来るらしい。茜は近い内に話を聞きに行こうと決めたのだった。
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