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68・アーレへ
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「チェイカ、今のアーレの現状をなるべく具体的に教えてくれ」
皆、飲み物を手にぐるりと円を描くように革張りのソファに座っている。イブの言葉に、チェイカは頷いた。
「最近、異次元飛躍装置が流通してきたおかげもあって、空いていそうな土地にアーレに入って来た移民を住まわせているんだ。だからそっちの方はなんとかなりそうなんだけど…」
「けど?なんだ?」
「移民に紛れて、変な奴らが国内に侵入してるって何度も通報があった。犯罪を起こしているわけじゃないみたいなんだけど、広場にある寺院の辺りを探ってるって」
「そいつらが例の神殺しか」
イブの言葉にチェイカは頷いた。
「そうなんだと思う。アレクサンダーがそいつらを探してるけど、なかなか見つからなくて参ってる」
「もしかしたら、変装されてるかもな」
茜はこの前、イブが使った変装ブローチを思い出していた。スーパーコンピューターが高性能であるのは間違いない。だからこそ単純な仕掛けに引っ掛かってしまう。茜はチェイカにサスナでの話をした。
「え!アリカがそんなに簡単に騙されちゃうんだ。もしかしたらアレクサンダーもそういう簡易的な変装まで対応しきれないかも」
チェイカが不安そうに言う。
「それがスーパーコンピューターの弱点ってやつか」
イブが両手を組む。
「でも千里には効かなそう」
茜がそう呟くと、イブは唸った。
「とりあえずアーレに行ってみよう。茜の加護って言うのは、よく分からないけどな」
「そう、俺の加護ってなに?」
チェイカがえっへんと薄い胸を仰け反らせた。
「占いのオババ様が言ってたんだ!茜は神に愛されてるって。だからアーレに来て欲しいんだ。お願い、テラ様を守って」
どうやらチェイカたちは茜を迎えに来たらしい。
「茜、アーレに行こう。神もそうだが、アレクサンダーのことも心配だ」
「うん、すぐに支度するよ」
茜はスーツケースに荷物をまとめ始めた。イブも手伝ってくれる。しばらくして、荷物を作り終えた。
「やった!茜がアーレに来てくれるなんて嬉しい!」
「チェイカ、遊びに行くんじゃねえんだぞ」
「分かってるよ!」
チェイカがイブの言葉にムスッとしながら答える。イブは自分の仕事を片付けてから追いかけると言ってくれた。茜はイブに手を振って、チェイカらと共にライアの空港を目指した。
「ふふん、茜は僕が守るよ!」
チェイカがふんぞり返る。彼の両太ももには白いベルトが巻かれており、短剣らしきものが差さっている。この世界は闘いが当たり前のようだ。ダヌキの時も刀の持ち込みが許されていたなぁと茜は今更思い出していた。
「チェイカ様は強いんだね」
「うん!強いよ!」
「殿下、茜様、こちらです」
じいやと呼ばれる老人にに呼ばれてしばらく歩くと、茜は固まった。一台の飛行機が停まっている。
「え、もしかしてプライベートジェットなの?」
「茜は初めて?」
チェイカにきょとんと返され、さすが王族と茜は、身分の差を改めて思い知らされた。
皆、飲み物を手にぐるりと円を描くように革張りのソファに座っている。イブの言葉に、チェイカは頷いた。
「最近、異次元飛躍装置が流通してきたおかげもあって、空いていそうな土地にアーレに入って来た移民を住まわせているんだ。だからそっちの方はなんとかなりそうなんだけど…」
「けど?なんだ?」
「移民に紛れて、変な奴らが国内に侵入してるって何度も通報があった。犯罪を起こしているわけじゃないみたいなんだけど、広場にある寺院の辺りを探ってるって」
「そいつらが例の神殺しか」
イブの言葉にチェイカは頷いた。
「そうなんだと思う。アレクサンダーがそいつらを探してるけど、なかなか見つからなくて参ってる」
「もしかしたら、変装されてるかもな」
茜はこの前、イブが使った変装ブローチを思い出していた。スーパーコンピューターが高性能であるのは間違いない。だからこそ単純な仕掛けに引っ掛かってしまう。茜はチェイカにサスナでの話をした。
「え!アリカがそんなに簡単に騙されちゃうんだ。もしかしたらアレクサンダーもそういう簡易的な変装まで対応しきれないかも」
チェイカが不安そうに言う。
「それがスーパーコンピューターの弱点ってやつか」
イブが両手を組む。
「でも千里には効かなそう」
茜がそう呟くと、イブは唸った。
「とりあえずアーレに行ってみよう。茜の加護って言うのは、よく分からないけどな」
「そう、俺の加護ってなに?」
チェイカがえっへんと薄い胸を仰け反らせた。
「占いのオババ様が言ってたんだ!茜は神に愛されてるって。だからアーレに来て欲しいんだ。お願い、テラ様を守って」
どうやらチェイカたちは茜を迎えに来たらしい。
「茜、アーレに行こう。神もそうだが、アレクサンダーのことも心配だ」
「うん、すぐに支度するよ」
茜はスーツケースに荷物をまとめ始めた。イブも手伝ってくれる。しばらくして、荷物を作り終えた。
「やった!茜がアーレに来てくれるなんて嬉しい!」
「チェイカ、遊びに行くんじゃねえんだぞ」
「分かってるよ!」
チェイカがイブの言葉にムスッとしながら答える。イブは自分の仕事を片付けてから追いかけると言ってくれた。茜はイブに手を振って、チェイカらと共にライアの空港を目指した。
「ふふん、茜は僕が守るよ!」
チェイカがふんぞり返る。彼の両太ももには白いベルトが巻かれており、短剣らしきものが差さっている。この世界は闘いが当たり前のようだ。ダヌキの時も刀の持ち込みが許されていたなぁと茜は今更思い出していた。
「チェイカ様は強いんだね」
「うん!強いよ!」
「殿下、茜様、こちらです」
じいやと呼ばれる老人にに呼ばれてしばらく歩くと、茜は固まった。一台の飛行機が停まっている。
「え、もしかしてプライベートジェットなの?」
「茜は初めて?」
チェイカにきょとんと返され、さすが王族と茜は、身分の差を改めて思い知らされた。
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