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66・神殺し

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「茜くん、よく報せてくれたわね」

午後、仕事を片付けた茜はダヌキと共に警察署に来ている。先程の動画データを提出したのだ。
この間対応してくれた刑事、ミオリが、コーヒーを二人に出してくれた。

「この映像、すごくクリアね。何かしたの?」

「一応動画の解析はしてみました。アリカさんにも同じような体格の人物をサスナで探してもらっています」

「それならサスナの警察も動いているわね。茜くんを狙っているなら、あなたに直接接触してくるかもしれない」

「分かってます。イブが警備レベルを上げてくれていて…」

「私たちも不審な人物がいないか探ってみる…」

ドタドタと刑事たちがやってくる。

「九尾がやられたぞ!」

ダヌキがその言葉に立ち上がる。茜はダヌキを手で制した。

「茜様…」

「大丈夫だよ、ダヌキさん。九尾様はそんなに簡単にやられない。あなたが一番分かってるでしょ?」

「は、取り乱しました」

ミオリがそばにあったテレビの電源を点ける。どうやらヘリコプターからの映像だ。九尾がうずくまっている。

「九尾様!」

ダヌキがモニターにしがみつくように近寄った。モヤがかかり、視認しにくいが人影がある。それは片手に刀を持っていた。

「あれが神殺しの刀?」

「はい、そうです。九尾様…」

ダヌキは今にも泣き出しそうだ。ダヌキのたくましい背を茜はさすった。自分に今出来ることはこれくらいだ。

(九尾様、お願い。死なないで)

茜がそう強く祈った瞬間だった。円形の白いペンダントが手の中にあった。ペンダントの縁には9つの丸い石を嵌めるようになっている。その内の一つ、赤い石が嵌っている。

「これ…」

ダヌキが茜を見つめる。

「それは一体?」

「分からないけど急に現れて…」

「そうだ!九尾様は!!」

ダヌキが再びテレビに縋り付くと、もう九尾の姿はなかった。

「いない?九尾様はどこへ?」

コオンと鳴き声がして、小さな九尾が現れた。

「ふう、助かったわい」

「九尾様!!良かった!」

ダヌキの歓声に九尾が口の端を歪める。

「はは。満身創痍ってやつじゃ。まさか我に神殺しの刀を向けてくるやつがおるとは」

「九尾様!犯人の顔は!!」

「うむ、布で巻いてあってな、よく見えなんだ」

ぐむ、とダヌキが悔しそうにする。

「茜、よく力を発現してくれた」

「力?」

それじゃと九尾が前足でペンダントを示す。

「それには神々の力を込められる。お前は我を認めた。だからここに我が来られたのじゃ」

「え、九尾様を俺が認めた?」

茜が聞き返すとそうじゃと九尾が頷く。

「そんな」

「茜、お前は神に愛されておる。各地の神々に会え。よいな」

九尾は消えていった。

「茜様、アーレに行きましょう。アレクサンダーもあなたを待っている」

「茜くん、警察は全力であなたをサポートするわ。また何か分かったら報せて頂戴」

「はい、分かりました」

これから何が起きるのだろう。分からないが、何もしないのはもう嫌だ、茜はそう強く思っていた。
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