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59・ランウェイ
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「茜っちー!こっちこっち!」
「マヤちゃん。いよいよ本番だね」
茜は手を振ってきた少女に近寄った。リハーサルを重ねるうちに、だんだんと親しくなったのだ。
「茜さん、お疲れ様です」
「リィちゃんもお疲れ様ー」
マヤとリィとは特別親しくなっていた。連絡先を交換し、今度遊ぶ約束をしたくらいだ。
「茜っちの衣装、茜っちが着るから映えるっていうかぁ?」
「確かにその通りですね」
二人にじーっと見つめられて茜は困った。今日の茜は黒いレース地のセットアップを着ていた。
もう来年の春に向けてのコーデらしい。足元は黒のシンプルなパンプスだ。
「えと…俺が地味?ってこと?」
「逆だよ!茜っち、チョー可愛いもん。そりゃイブ様と付き合えるわ!」
「妥当だと思います」
「わ…そんな…」
「茜っち、真っ赤ー!かーわいー!」
「もー!大人をからかわないのー!」
3人でワイワイしていると、そろそろだとスタッフから声を掛けられた。
(2人のお陰で随分緊張が解れたな)
リハーサル通りショーのプログラムが進む。次が茜の番だ。会場には人々の歓声と熱気で暑いくらいだ。そして、ランウェイを照らす照明がさらに茜を熱くさせる。
茜は歩き始めた。歓声の中を歩くのは緊張したが歩き終えてから、やり切ったという感動の方が大きかった。
「茜殿!観ていたぞ!」
「サアヤさん!」
サアヤが笑って端末の画面をこちらに向けてきた。そこにいたのはイブである。
「イブ!」
「茜、練習した甲斐があったな」
「イブがリアルタイムで観たいと思って、カメラを回したんだ。アーカイブも残るからそれも買ってくれよ?イブ?」
「分かった」
「サアヤさん、商売上手」
茜が感心しているとダヌキも現れる。
「お疲れ様です!茜様!」
「お疲れ様です、ダヌキさん!警備に問題は?」
茜はずっと、何かあるのではないかと不安になっていた。ダヌキが笑って首を振る。
「大丈夫です。何も問題ありませんよ」
茜はハッとなった。一瞬、何か聞こえた気がした。だが、周りの者は一切気に留めていない。
(疲れてるのかな)
茜は大きく息をした。
「茜様、お疲れのようですね。着替えて帰りましょうか」
「うん、そうする」
本当ならこれから打ち上げをすると聞いていたが、茜は初めから出席は無理そうだなと感じていた。やはりそこはひきニートである。体力というものがない。サアヤに相談した所、無理はしなくていいと言われていた。茜は楽屋でメイクを落とし、着替えた。
「皆さん、お疲れ様でした。お先に失礼致します」
「お疲れ様でしたー!」
茜はダヌキにおんぶされている。ホテルの部屋までもうすぐだ。
「皆いい子たちでよかった」
茜は嬉しかった。高校時代の怠惰な自分を今更思い出したのだ。毎日惰性のままレポートを書いて、ぎりぎりで提出し、なんとか単位をもらっていたあの頃を。
「茜様、疲れましたよね」
ダヌキに労られて、茜は思わず泣いてしまっていた。
「マヤちゃん。いよいよ本番だね」
茜は手を振ってきた少女に近寄った。リハーサルを重ねるうちに、だんだんと親しくなったのだ。
「茜さん、お疲れ様です」
「リィちゃんもお疲れ様ー」
マヤとリィとは特別親しくなっていた。連絡先を交換し、今度遊ぶ約束をしたくらいだ。
「茜っちの衣装、茜っちが着るから映えるっていうかぁ?」
「確かにその通りですね」
二人にじーっと見つめられて茜は困った。今日の茜は黒いレース地のセットアップを着ていた。
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「逆だよ!茜っち、チョー可愛いもん。そりゃイブ様と付き合えるわ!」
「妥当だと思います」
「わ…そんな…」
「茜っち、真っ赤ー!かーわいー!」
「もー!大人をからかわないのー!」
3人でワイワイしていると、そろそろだとスタッフから声を掛けられた。
(2人のお陰で随分緊張が解れたな)
リハーサル通りショーのプログラムが進む。次が茜の番だ。会場には人々の歓声と熱気で暑いくらいだ。そして、ランウェイを照らす照明がさらに茜を熱くさせる。
茜は歩き始めた。歓声の中を歩くのは緊張したが歩き終えてから、やり切ったという感動の方が大きかった。
「茜殿!観ていたぞ!」
「サアヤさん!」
サアヤが笑って端末の画面をこちらに向けてきた。そこにいたのはイブである。
「イブ!」
「茜、練習した甲斐があったな」
「イブがリアルタイムで観たいと思って、カメラを回したんだ。アーカイブも残るからそれも買ってくれよ?イブ?」
「分かった」
「サアヤさん、商売上手」
茜が感心しているとダヌキも現れる。
「お疲れ様です!茜様!」
「お疲れ様です、ダヌキさん!警備に問題は?」
茜はずっと、何かあるのではないかと不安になっていた。ダヌキが笑って首を振る。
「大丈夫です。何も問題ありませんよ」
茜はハッとなった。一瞬、何か聞こえた気がした。だが、周りの者は一切気に留めていない。
(疲れてるのかな)
茜は大きく息をした。
「茜様、お疲れのようですね。着替えて帰りましょうか」
「うん、そうする」
本当ならこれから打ち上げをすると聞いていたが、茜は初めから出席は無理そうだなと感じていた。やはりそこはひきニートである。体力というものがない。サアヤに相談した所、無理はしなくていいと言われていた。茜は楽屋でメイクを落とし、着替えた。
「皆さん、お疲れ様でした。お先に失礼致します」
「お疲れ様でしたー!」
茜はダヌキにおんぶされている。ホテルの部屋までもうすぐだ。
「皆いい子たちでよかった」
茜は嬉しかった。高校時代の怠惰な自分を今更思い出したのだ。毎日惰性のままレポートを書いて、ぎりぎりで提出し、なんとか単位をもらっていたあの頃を。
「茜様、疲れましたよね」
ダヌキに労られて、茜は思わず泣いてしまっていた。
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