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おまけ
雨
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「雨…止まないなぁ」
茜はさっとカーテンを開けて、ベランダから外を窺っている。近付かなければ下が見えないバルコニーなら、高所恐怖症の茜でも外を見ても大丈夫なことが最近分かった。
「茜、一緒にケーキ食おう。どうした?」
ぎゅっと後ろからイブに抱き締められて茜はびくっとなった。まだこの人が少し怖い茜である。
「い、イブ。急に近付いちゃやだ」
「え…もしかして俺が怖いのか?」
イブは明らかにショックを受けているが、茜は容赦なく怖いよと付け足した。だが、茜は精一杯背伸びをして、イブの頬を撫でる。そんな茜をイブは片腕で軽々抱き上げてしまう。
「ね、イブ、知ってる?」
「ん?何をだ」
「ライアの伝説だよ」
イブはしばらく考えて、ああと頷いた。
「虹の先を恋人と見られたら、一生一緒にいられるってやつか?」
茜は恥ずかしくなったが、素直に頷いた。
「イブと一緒に見られたらいいなあと思って」
「茜は可愛いなぁ」
ぎゅううとイブに抱き締められる。
「でもずっと雨が降ってるから見られないよね」
しゅん、と茜は俯いた。
「うーん、金でなんとかなるなら俺もなんとか出来るけど、天気ばかりはなぁ」
「イブの金持ち…」
茜がじとっとイブを睨む。
「ははは。茜には敵わないな。よし、ケーキを食べて天気が良くなるのを待とう」
「うん」
イブにおろしてもらい、二人は熱いコーヒーを淹れた。茜の分はミルクがたっぷり入っている。
「わ、大きいねぇ」
箱を開けた茜は歓声を上げていた。シャインマスカットがケーキの上にでんと載っているのだ。
「いいだろ?でかい方が」
「イブはすごく経済を回してるよね」
「それくらいしかできないしな」
二人はテーブルにそれらを運び、食べ始めた。
「わ、スポンジふわふわ。生クリームも美味しい」
「茜は食レポ出来るんだな?」
ふふっとイブに笑われて茜は少し恥ずかしくなった。
「こ、これくらい普通だもん」
「そうか」
ん、と茜はふと窓の方に視線を移した。
「あー!」
「茜?」
茜が窓に駆け寄る。
「イブ!早く来て!虹だよ!」
イブも茜のそばにやって来た。二人は虹を見つめる。
「虹の先なんて見えないよー」
「でも、綺麗だな」
茜はちらっとイブを見上げた。自分はこの人と一生を添い遂げる。
(あぁ、俺、だんだんイブを好きになってる)
「イブ」
茜はイブの袖を知らず知らずに掴んでいた。いつの間にかイブに肩を抱き寄せられている。
「茜。俺たち、ずっと仲良くいような」
「うん」
茜がイブを見上げると、食べられるようにキスされていた。
おわり
茜はさっとカーテンを開けて、ベランダから外を窺っている。近付かなければ下が見えないバルコニーなら、高所恐怖症の茜でも外を見ても大丈夫なことが最近分かった。
「茜、一緒にケーキ食おう。どうした?」
ぎゅっと後ろからイブに抱き締められて茜はびくっとなった。まだこの人が少し怖い茜である。
「い、イブ。急に近付いちゃやだ」
「え…もしかして俺が怖いのか?」
イブは明らかにショックを受けているが、茜は容赦なく怖いよと付け足した。だが、茜は精一杯背伸びをして、イブの頬を撫でる。そんな茜をイブは片腕で軽々抱き上げてしまう。
「ね、イブ、知ってる?」
「ん?何をだ」
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イブはしばらく考えて、ああと頷いた。
「虹の先を恋人と見られたら、一生一緒にいられるってやつか?」
茜は恥ずかしくなったが、素直に頷いた。
「イブと一緒に見られたらいいなあと思って」
「茜は可愛いなぁ」
ぎゅううとイブに抱き締められる。
「でもずっと雨が降ってるから見られないよね」
しゅん、と茜は俯いた。
「うーん、金でなんとかなるなら俺もなんとか出来るけど、天気ばかりはなぁ」
「イブの金持ち…」
茜がじとっとイブを睨む。
「ははは。茜には敵わないな。よし、ケーキを食べて天気が良くなるのを待とう」
「うん」
イブにおろしてもらい、二人は熱いコーヒーを淹れた。茜の分はミルクがたっぷり入っている。
「わ、大きいねぇ」
箱を開けた茜は歓声を上げていた。シャインマスカットがケーキの上にでんと載っているのだ。
「いいだろ?でかい方が」
「イブはすごく経済を回してるよね」
「それくらいしかできないしな」
二人はテーブルにそれらを運び、食べ始めた。
「わ、スポンジふわふわ。生クリームも美味しい」
「茜は食レポ出来るんだな?」
ふふっとイブに笑われて茜は少し恥ずかしくなった。
「こ、これくらい普通だもん」
「そうか」
ん、と茜はふと窓の方に視線を移した。
「あー!」
「茜?」
茜が窓に駆け寄る。
「イブ!早く来て!虹だよ!」
イブも茜のそばにやって来た。二人は虹を見つめる。
「虹の先なんて見えないよー」
「でも、綺麗だな」
茜はちらっとイブを見上げた。自分はこの人と一生を添い遂げる。
(あぁ、俺、だんだんイブを好きになってる)
「イブ」
茜はイブの袖を知らず知らずに掴んでいた。いつの間にかイブに肩を抱き寄せられている。
「茜。俺たち、ずっと仲良くいような」
「うん」
茜がイブを見上げると、食べられるようにキスされていた。
おわり
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