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47・取材

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「茜、お疲れ様」

イブに労られて、茜は頷いていた。

「イブもお疲れ様ー。あー、緊張したー」

イブがリモコンを操作する。見慣れない所作に茜は彼を見つめた。

「録画しておいた。バックアップも取った」

茜の自室にあるモニタから映像が流れ出す。その映像に茜は真っ赤になった。自分がしっかり映し出されていたからだ。あわあわしながらリポーターの質問に答えている。今日、店に取材が来たのだ。

「可愛いな、茜」

イブが満足そうに笑う。

「ちょ、イブ!!」

「猫たちの写真もっと刷っておけば良かったな。あれから問い合わせがすごい」

「え?もしかしてクレーム、みたいな?」

茜は急に不安になった。イブが茜の頭をくしゃりと撫でる。

「いや、クレームっていうより通販のリクエストだ」

「つ…つうはん?」

なんでそうなる、と茜はイブの言葉をオウム返しした。イブが真顔で頷く。

「来店して買いたいけど、今日みたいに売り切れてると悲しいからって」

「そ、そうだよね。アフターフォロー大事」

「だろ?だからその通販のサイトを作ろうって。デザインは茜がやりたいだろ?」

「やりたい!でも、いいの?」

「いいに決まってるだろ。茜が作った店だ」

茜はぽかん、とイブを見上げた。

「茜?」

茜はだんだん顔が熱くなるのを感じた。

「お、俺だけじゃ絶対出来なかったよ。イブや皆がいたから」

ぎゅっとイブに抱き締められていた。

「茜のそういうとこ、本当可愛いよな」

「俺が可愛いなんて、そんな」

イブにひょい、と抱き上げられていた。

「とりあえず茜には早急にデザイン案を出してもらいたい、期限は明日夕方、可能か?」

「やる!やらせて欲しい!」

「決まりだな。そうと決まったら寝よう。茜は疲れてるし、俺も疲れてる」

「うん、そうだね」

二人はベッドに寝そべった。横になった瞬間、強い眠気が襲いかかってくる。茜はすぐに眠っていた。

✢✢✢

「は…」

茜は目を開けた。ブラインドの隙間から太陽光を感じる。朝だと気が付いた。

「よし、店を開ける前にサイトのデザインを進めなくちゃ」

茜はPCの起動をした。仕事のメールチェックも怠らない。

(俺はなんであんなに頑なに働かなかったんだっけ?)

ニートだった自分を思い出して、茜は自嘲した。
発端は皆と同じように出来ないというところにあった気がする。周りの人間が当たり前に出来ることが何故か自分には出来ない。それがすごく悔しかった。出来るようになっている頃には、周りは更にその先へ進んでいるのだ。自分は他の者よりとびきり劣っているとすごく傷付いた。

(人と比べても意味がないのに)

茜はハッとなった。それは、ずっと探していた答えだったからだ。自分は自分で、他人にはなれない。そう思ったらなんだか気が楽になった。

(俺にだって得意なこと、あるじゃないか)

茜は再度ハッとなった。時計を見ると、もう朝の8時を回っている。猫カフェの支度をせねばと茜は立ち上がった。
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