35 / 168
35・帰国
しおりを挟む
あの後、アリカはすぐ修理に回された。どうやら見たこともないウイルスが入れられたらしく、回復まで時間がかかるらしい。
「千里は一体何を企んでいるんだ?」
イブの言葉にサアヤはふむ、と顎に手を当てた。
「私が思うに、単純な破壊衝動だと思うよ」
「壊してどうなるってんだ?やり返されるかもしれないのに。ウイルスを注入する際に接触するはずだ」
いや、とサアヤは首を振った。
「自らをも破壊したいのかもしれないよ」
「自らを?」
茜は急に怖くなった。千里はまともじゃないと思ったからだ。
「大丈夫だ。アリカのバックアップならカリアが所有している。出来る限り千里の痕跡を探してみよう。今はそれしか手がかりがないからね」
「サアヤ、悪いが頼むぞ」
「あぁ、最初からそのつもりだったしな。茜殿の顔も見られて嬉しかったよ。二人共、息災でな」
「サアヤさん、ありがとうございます」
「茜殿、イブを頼むぞ」
サアヤが手を差し出してきたので、茜は握り返した。サアヤがにっこり笑って顔を近付けてきた。
「またサスナに来て欲しい。茜殿には私のプロジェクトに参加して欲しいんだ」
「プロジェクト?俺でいいなら参加します」
「ふふ、楽しみにしているよ」
どうやらサアヤは今、内容を話すつもりはないらしい。
「茜、行くぞ」
「うん」
茜はサアヤに会釈して、サスナの城を出た。
「あいつ、変わらねえな」
ふう、と息を吐くイブに、ダヌキが慌てた様子で言う。
「ひ、姫君は公式の場ではちゃんと服を着ていらっしゃいますよ」
「当たり前だろう、それは。まあ、その方があいつらしいけどな」
「ふふっ…」
茜は思わず噴き出してしまった。
「茜、笑ってる場合じゃないぞ」
やれやれ、とイブに肩をすくめられる。
「ふ、だって、なんか漫才みたいで…ふふ」
「だってさ、ダヌキ」
「夫婦漫才なら茜様の方が適任かと!」
ダヌキの真剣そうな声に茜は更に笑ってしまった。
「おい、ダヌキ。茜のツボを抉るんじゃない」
「も、申し訳ありません!」
「っはぁ、はぁ、笑い過ぎた…」
「茜、飯食ったらライアに帰るぞ」
「うん」
茜は飛行機に乗っている。ビジネスクラスでももう怯まない。思い返せば、サスナでは色々なことが起きた。
(帰ったらみんなにただいまって言わなくちゃ)
茜はヘッドホンを装着し、椅子を倒して目を閉じたのだった。
✢✢✢
「お帰りなさいませ!」
ライアのタワーマンションに着くなり、ミスターポテトが出迎えてくれた。
「茜様!お体は大丈夫ですか!!」
自分が誘拐されたことをイブの側近は知っているとイブから聞いていた。
「うん、心配かけてごめんなさい」
「とんでもありません。一応診察を受けましょう」
「え!」
「茜、そうしてもらえ」
イブに言われれば断れるはずもなく、茜は渋々だが頷いた。
猫のフロアに向かうと猫たちがリラックスして寝そべっている。いつの間にか猫同士、仲良くなったらしい。
「みんな、元気だった?」
茜が近付くとお腹を見せる子もいた。撫でると気持ちよさそうに目を閉じる。その姿は愛おしいという言葉に尽きる。
「茜様!猫さんの写真を撮るのはいつにしましょうか!」
「カフェの宣伝もすぐ出来るよう準備しています!」
いよいよ猫カフェ開店に向けて動き出せる。茜は確信したのだった。
「千里は一体何を企んでいるんだ?」
イブの言葉にサアヤはふむ、と顎に手を当てた。
「私が思うに、単純な破壊衝動だと思うよ」
「壊してどうなるってんだ?やり返されるかもしれないのに。ウイルスを注入する際に接触するはずだ」
いや、とサアヤは首を振った。
「自らをも破壊したいのかもしれないよ」
「自らを?」
茜は急に怖くなった。千里はまともじゃないと思ったからだ。
「大丈夫だ。アリカのバックアップならカリアが所有している。出来る限り千里の痕跡を探してみよう。今はそれしか手がかりがないからね」
「サアヤ、悪いが頼むぞ」
「あぁ、最初からそのつもりだったしな。茜殿の顔も見られて嬉しかったよ。二人共、息災でな」
「サアヤさん、ありがとうございます」
「茜殿、イブを頼むぞ」
サアヤが手を差し出してきたので、茜は握り返した。サアヤがにっこり笑って顔を近付けてきた。
「またサスナに来て欲しい。茜殿には私のプロジェクトに参加して欲しいんだ」
「プロジェクト?俺でいいなら参加します」
「ふふ、楽しみにしているよ」
どうやらサアヤは今、内容を話すつもりはないらしい。
「茜、行くぞ」
「うん」
茜はサアヤに会釈して、サスナの城を出た。
「あいつ、変わらねえな」
ふう、と息を吐くイブに、ダヌキが慌てた様子で言う。
「ひ、姫君は公式の場ではちゃんと服を着ていらっしゃいますよ」
「当たり前だろう、それは。まあ、その方があいつらしいけどな」
「ふふっ…」
茜は思わず噴き出してしまった。
「茜、笑ってる場合じゃないぞ」
やれやれ、とイブに肩をすくめられる。
「ふ、だって、なんか漫才みたいで…ふふ」
「だってさ、ダヌキ」
「夫婦漫才なら茜様の方が適任かと!」
ダヌキの真剣そうな声に茜は更に笑ってしまった。
「おい、ダヌキ。茜のツボを抉るんじゃない」
「も、申し訳ありません!」
「っはぁ、はぁ、笑い過ぎた…」
「茜、飯食ったらライアに帰るぞ」
「うん」
茜は飛行機に乗っている。ビジネスクラスでももう怯まない。思い返せば、サスナでは色々なことが起きた。
(帰ったらみんなにただいまって言わなくちゃ)
茜はヘッドホンを装着し、椅子を倒して目を閉じたのだった。
✢✢✢
「お帰りなさいませ!」
ライアのタワーマンションに着くなり、ミスターポテトが出迎えてくれた。
「茜様!お体は大丈夫ですか!!」
自分が誘拐されたことをイブの側近は知っているとイブから聞いていた。
「うん、心配かけてごめんなさい」
「とんでもありません。一応診察を受けましょう」
「え!」
「茜、そうしてもらえ」
イブに言われれば断れるはずもなく、茜は渋々だが頷いた。
猫のフロアに向かうと猫たちがリラックスして寝そべっている。いつの間にか猫同士、仲良くなったらしい。
「みんな、元気だった?」
茜が近付くとお腹を見せる子もいた。撫でると気持ちよさそうに目を閉じる。その姿は愛おしいという言葉に尽きる。
「茜様!猫さんの写真を撮るのはいつにしましょうか!」
「カフェの宣伝もすぐ出来るよう準備しています!」
いよいよ猫カフェ開店に向けて動き出せる。茜は確信したのだった。
1
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
【完結】私立秀麗学園高校ホスト科⭐︎
亜沙美多郎
BL
本編完結!番外編も無事完結しました♡
「私立秀麗学園高校ホスト科」とは、通常の必須科目に加え、顔面偏差値やスタイルまでもが受験合格の要因となる。芸能界を目指す(もしくは既に芸能活動をしている)人が多く在籍している男子校。
そんな煌びやかな高校に、中学生まで虐められっ子だった僕が何故か合格!
更にいきなり生徒会に入るわ、両思いになるわ……一体何が起こってるんでしょう……。
これまでとは真逆の生活を送る事に戸惑いながらも、好きな人の為、自分の為に強くなろうと奮闘する毎日。
友達や恋人に守られながらも、無自覚に周りをキュンキュンさせる二階堂椿に周りもどんどん魅力されていき……
椿の恋と友情の1年間を追ったストーリーです。
.₊̣̇.ෆ˟̑*̑˚̑*̑˟̑ෆ.₊̣̇.ෆ˟̑*̑˚̑*̑˟̑ෆ.₊̣̇.ෆ˟̑*̑˚̑*̑˟̑ෆ.₊̣̇.ෆ˟̑*̑˚̑*̑˟̑ෆ.₊̣̇
※R-18バージョンはムーンライトノベルズさんに投稿しています。アルファポリスは全年齢対象となっております。
※お気に入り登録、しおり、ありがとうございます!投稿の励みになります。
楽しんで頂けると幸いです(^^)
今後ともどうぞ宜しくお願いします♪
※誤字脱字、見つけ次第コッソリ直しております。すみません(T ^ T)
拝啓お父様。私は野良魔王を拾いました。ちゃんとお世話するので飼ってよいでしょうか?
ミクリ21
BL
ある日、ルーゼンは野良魔王を拾った。
ルーゼンはある理由から、領地で家族とは離れて暮らしているのだ。
そして、父親に手紙で野良魔王を飼っていいかを伺うのだった。
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
【完結】お嬢様の身代わりで冷酷公爵閣下とのお見合いに参加した僕だけど、公爵閣下は僕を離しません
八神紫音
BL
やりたい放題のわがままお嬢様。そんなお嬢様の付き人……いや、下僕をしている僕は、毎日お嬢様に虐げられる日々。
そんなお嬢様のために、旦那様は王族である公爵閣下との縁談を持ってくるが、それは初めから叶わない縁談。それに気付いたプライドの高いお嬢様は、振られるくらいなら、と僕に女装をしてお嬢様の代わりを果たすよう命令を下す。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
その溺愛は伝わりづらい
海野幻創
BL
人好きのする端正な顔立ちを持ち、文武両道でなんでも無難にこなせることのできた生田雅紀(いくたまさき)は、小さい頃から多くの友人に囲まれていた。
しかし他人との付き合いは広く浅くの最小限に留めるタイプで、女性とも身体だけの付き合いしかしてこなかった。
偶然出会った久世透(くぜとおる)は、嫉妬を覚えるほどのスタイルと美貌をもち、引け目を感じるほどの高学歴で、議員の孫であり大企業役員の息子だった。
御曹司であることにふさわしく、スマートに大金を使ってみせるところがありながら、生田の前では捨てられた子犬のようにおどおどして気弱な様子を見せ、そのギャップを生田は面白がっていたのだが……。
これまで他人と深くは関わってこなかったはずなのに、会うたびに違う一面を見せる久世は、いつしか生田にとって離れがたい存在となっていく。
【7/27完結しました。読んでいただいてありがとうございました。】
【続編も8/17完結しました。】
「その溺愛は行き場を彷徨う……気弱なスパダリ御曹司は政略結婚を回避したい」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/911896785
↑この続編は、R18の過激描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います
塔原 槇
BL
会社員、兎山俊太郎(とやま しゅんたろう)はある日、「やっぱり女の子が好きだわ」と言われ別れを切り出される。彼氏の売れないバンドマン、熊井雄介(くまい ゆうすけ)は人気上昇中の清純派アイドル、桃澤久留美(ももざわ くるみ)と付き合うのだと言う。ショックの中で俊太郎が出社すると、幼馴染の有栖川麗音(ありすがわ れおん)が中途採用で入社してきて……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる