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34・アリカ

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キュウウウウとモーター音が鳴っている。アリカの動作音だ。こうしてみると彼女が機械であることがようやく理解出来る。

「アリカ、どこかに千里の痕跡はないか?」

サアヤの問いにアリカは首を横に振った。

「現時点ではノーヒットです。千里さんが痕跡を残すことは滅多にないですが、このアリカ、必ずや見つけ出します」

「サアヤ、アリカは警備用なんだろう?こっちにまわして大丈夫なのか?」

イブの問いにサアヤは笑った。

「サスナにはスーパーコンピューターがもう一人いるからな。そちらの子は機密で見せることは出来ないが」

「さすがサスナだな」

「いやいや、さすがに中央のアーレには敵わないよ」

「それは言えてる」

「アーレ?」

茜が首を傾げるとイブが頷いた。

「この世界でトップを誇る国だ。技術的にも経済的にも」

「すごいね」

「確かイブはアーレにも顔が利くだろう?そちらにも協力を頼んだらどうだ?君の話だと、千里は国家機密をあちこちにばらまいていたんだろう?」

「まぁ、そうなるんだろうな。じゃなきゃ、ここの金を横領なんてされてないだろうし。でもそれをやったのが千里だってよく気付いたな?」

目を閉じていたアリカがぱちりと目を開いた。

「カリアが突き止めました。私も微かですが、気配を感じました」

「カリアってさっき言ってた機密の子か?」

サアヤが頷く。

「アリカはこうして独立していられるが、カリアはそうもいかなくてね。ただし、性能だけ見ればアリカより遥かに高い。だが、アリカだっていいコンピューターなのは間違いない」

「そうだな。今だってこうして俺たちの為に動いてくれている。ありがとう、アリカ」

アリカは微笑んだ。その瞬間、アリカがぴくんと震える。

「サアヤ様、千里さんの痕跡です。位置情報を出します」

アリカのそばにあったモニターに画面が映し出される。それは数字のみの列だった。位置情報ということから緯度と経度なのは間違いない。

「ここどこだ?」

「…ガ…」

アリカががくがくと震え始める。

「アリカ!すぐに接続を切れ!これはウイルスだ!」

「ガガ…」

「アリカさん!」

アリカは沈黙した。

✢✢✢

「千里、お前は本当に性能がいいな」

「性能がいいに決まっているでしょう?あたしは一番最初で一番最後のスーパーコンピューターなんだよ?」

「そうだったな。にしても、神々を利用しようとしたら出しゃばるやつがいるとは」

「茜の力だよね?」

「あぁ、そうだ。あいつの持つ力、神々に愛される力だ」

「神を支配したらあたしも人間になれるかな?」

「まずは世界を壊してからだ。そしたら新しく作り直すぞ」

「ふふ、アダムさん、楽しそう」

「千里、ウイルスを流すのは構わねえが、やり過ぎて痕跡を残すなよ」

「あいあいさ」
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