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33・サスナの王族
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「やっとお参り出来た!」
茜たち一行はエボナ寺院にいる。この間のリベンジにとまたやってきたのだ。あの騒ぎが起きて、参拝客が減るのではないかと茜は危惧していたが、それは杞憂だった。むしろ、エボナの九尾が見られるかもしれないと客が増えたと聞いた。
「俺を助けてくれたのはもしかして九尾様だったのかな?」
「かもしれないな。エボナの九尾は和を司っている。この国、サスナは戦乱の時代が長かったからな」
ダヌキもそんなことを言っていたなと茜は思い出していた。
「茜様、社長、そろそろ」
ダヌキに声を掛けられて、二人は頷いた。いよいよ王族に会うのだと思うとドキドキするが、聞くべきことはちゃんと聞かなければならない。三人はタクシーに乗り込み、城へ向かった。
「あれがサスナのお城?」
茜が尋ねると、イブが頷く。城と聞いて、勝手に西洋風のものを想像していたが、瓦屋根の和風の城だった。さすがに城まではタクシーでは行けず、一行は門の近くで車から降りた。木々が風で揺れ、葉が擦れる音がする。門をくぐると、深い堀がある。赤い橋を渡り、さらに進むと城があった。
「今、この城は海外の方との会談に使われているんです。時々ですが、一般公開もされています」
王族は普段、別の住居で暮らしているとダヌキは話した。
「イブ!」
向こうからやって来たのは背の高い女性だった。長い黒髪を後ろで一つに結っている。ノースリーブと短パンという女性にしては無防備な格好だ。スタイルがいいので尚更そう見える。
「サアヤ!久しぶりだな」
「久しぶり。こっちへ」
サアヤと呼ばれた女性の後をついていくと、城の入口そばに、応接間があった。ゆったりしたソファにイブと茜は座り、ダヌキは隣に隙なく立っている。何が起きてもいいようにだ。サアヤは笑った。
「色々話したいこともあるが、本題に入ろう。千里が動いているのは間違いないからな」
「話が早くて助かる。で、なにか起きたか?」
「あぁ。国の金が横領された。所謂、活動費というやつかもしれないな」
「おいおい、大丈夫か?」
サアヤは笑う。
「まあやられたらやり返してやるさ。して、茜殿、あなたの話はイブから聞いている。機転が利く方だと」
サアヤに真正面から見つめられて、茜は固まった。
「茜殿、イブを支えてやって欲しい。それが旧い友人としてのお願いだ」
「は、はい」
茜が頷くとサアヤは満足そうに頷いた。
「私たちも千里を探すのに協力しよう。ウチにはアリカがいるからな」
「アリカ?」
「サアヤ様、お茶をお持ちしました」
メイド服を着た女性が現れる。
「ちょうどいい、アリカ。こっちへおいで」
アリカと呼ばれた女性が近付いてきた。サアヤが彼女の肩に手を置く。
「ウチのスーパーコンピューター、アリカだ。得意なのは国の警備と飛んできたミサイルを撃ち落とすことだ」
「私はイージス艦と連携しておりますゆえ」
「スーパーコンピューター?!」
茜は思わずじろじろアリカを見てしまった。彼女は人間にしか見えない。
「茜様に見つめられています」
ぽ、とアリカは顔を赤くした。
茜たち一行はエボナ寺院にいる。この間のリベンジにとまたやってきたのだ。あの騒ぎが起きて、参拝客が減るのではないかと茜は危惧していたが、それは杞憂だった。むしろ、エボナの九尾が見られるかもしれないと客が増えたと聞いた。
「俺を助けてくれたのはもしかして九尾様だったのかな?」
「かもしれないな。エボナの九尾は和を司っている。この国、サスナは戦乱の時代が長かったからな」
ダヌキもそんなことを言っていたなと茜は思い出していた。
「茜様、社長、そろそろ」
ダヌキに声を掛けられて、二人は頷いた。いよいよ王族に会うのだと思うとドキドキするが、聞くべきことはちゃんと聞かなければならない。三人はタクシーに乗り込み、城へ向かった。
「あれがサスナのお城?」
茜が尋ねると、イブが頷く。城と聞いて、勝手に西洋風のものを想像していたが、瓦屋根の和風の城だった。さすがに城まではタクシーでは行けず、一行は門の近くで車から降りた。木々が風で揺れ、葉が擦れる音がする。門をくぐると、深い堀がある。赤い橋を渡り、さらに進むと城があった。
「今、この城は海外の方との会談に使われているんです。時々ですが、一般公開もされています」
王族は普段、別の住居で暮らしているとダヌキは話した。
「イブ!」
向こうからやって来たのは背の高い女性だった。長い黒髪を後ろで一つに結っている。ノースリーブと短パンという女性にしては無防備な格好だ。スタイルがいいので尚更そう見える。
「サアヤ!久しぶりだな」
「久しぶり。こっちへ」
サアヤと呼ばれた女性の後をついていくと、城の入口そばに、応接間があった。ゆったりしたソファにイブと茜は座り、ダヌキは隣に隙なく立っている。何が起きてもいいようにだ。サアヤは笑った。
「色々話したいこともあるが、本題に入ろう。千里が動いているのは間違いないからな」
「話が早くて助かる。で、なにか起きたか?」
「あぁ。国の金が横領された。所謂、活動費というやつかもしれないな」
「おいおい、大丈夫か?」
サアヤは笑う。
「まあやられたらやり返してやるさ。して、茜殿、あなたの話はイブから聞いている。機転が利く方だと」
サアヤに真正面から見つめられて、茜は固まった。
「茜殿、イブを支えてやって欲しい。それが旧い友人としてのお願いだ」
「は、はい」
茜が頷くとサアヤは満足そうに頷いた。
「私たちも千里を探すのに協力しよう。ウチにはアリカがいるからな」
「アリカ?」
「サアヤ様、お茶をお持ちしました」
メイド服を着た女性が現れる。
「ちょうどいい、アリカ。こっちへおいで」
アリカと呼ばれた女性が近付いてきた。サアヤが彼女の肩に手を置く。
「ウチのスーパーコンピューター、アリカだ。得意なのは国の警備と飛んできたミサイルを撃ち落とすことだ」
「私はイージス艦と連携しておりますゆえ」
「スーパーコンピューター?!」
茜は思わずじろじろアリカを見てしまった。彼女は人間にしか見えない。
「茜様に見つめられています」
ぽ、とアリカは顔を赤くした。
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