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25・独り占め

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(なんか久しぶりに帰って来た気がするよ)

茜は自室に荷物を置いた。何より気になるのは猫たちのことである。猫のフロアに向かうと、ぴょんっと何かが飛んできて、茜は咄嗟に受け止めていた。

「キング?!」

「なぁ」

「茜様!良かったー。帰ってこられたんですね。
キングさんが最近ずっとご機嫌ななめで」

「やっぱり茜様じゃないと駄目なんです」

二人の女性スタッフに溜息を吐かれて茜は苦笑いすることしか出来ない。茜はキングの頭を撫でた。

「キング、お姉さんたちに優しくしなきゃー。君は王様なんだよ?」

「にゃあ」

当のキングは分かっているのかいないのか、わからない。茜がよしよし、とキングを撫でてやると、体を擦り付けてくる。

「なー」

「あらあら、皆来ちゃいましたね」

「わぁ」

いつの間にか猫たち13匹全員がケージから外に出て自由に遊び回るようになっていた。茜の足にすり寄ってくる猫もいる。

(これなら猫カフェも始動できそうかも)

「お、なんか賑やかだな」

イブがふらりと現れた。手には大きな箱を持っている。

「社長!お疲れ様です!」

「おう、お疲れ様。ケーキの差し入れ持ってきた。ここはもういいから皆で食ってくれ」

「やったぁ!」

女性スタッフ二人が頭を下げてオフィスに向かっていく。

「茜。キング、お前にべったりだな」

「うん。こんなに甘えん坊さんだったっけ?」

「多分お前がいなかったから寂しかったんだよ」

「そっかー。ごめんね、キング」

「にゃあ」

キングは安心したのか茜の腕の中で欠伸をしている。

「とりあえず猫たち構いながら話さないか?今後のことについて」

茜はそれが大事な話であることを悟った。千里のことや、王族名簿のこともある。何かが起こっているのは間違いない。二人は部屋の真ん中に置いてある柔らかなソファに座った。猫たちが各々自由に過ごしている。キングは茜の膝の上から動かなかったが。

「仕事を調整してみたけど、どう頑張っても来週までライアを動けないんだ」

「イブは社長さんだし、仕方ないよ」

「茜、お前、飛行機に乗ったことは?」

「ないよ」

イブが笑う。

「ボディガードを付ける。サスナへ飛んでくれないか?」

「え、いいけど、ボディガードなんて大げさじゃない?」

「茜に変な虫が付かないように付けるだけだ」

また変な虫か、と茜は頷いた。虫よけスプレーの効かない虫なんて強靭だなあと茜は違った意味で感心している。

「いいよ、それでどうすればいいの?」

「サスナの王族に俺の学生時代の仲間がいてな。なにか変なことが起きていないか確認して欲しいんだ。ただサスナは今、祭りが開催されていて賑やかだと思うけど」

「お祭り、楽しそう!」

「にゃあ」

キングがぐぐぐ、と伸びをしている。

「茜、明日発てるか?」

「分かった、すぐ荷物作るね」

「俺も仕事が終わり次第追い掛ける。危ないことはするなよ」

「大丈夫だよ」

茜とイブは頷き合った。
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