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23・スーパーコンピューター千里のありか②
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玄関から中に入ると、ドアは勝手に閉まった。イブがパチリと指を鳴らすとほのかだが明かりが灯る。
「イブってさり気なく魔法使えるよね?」
「あぁ。俺のいる次元は魔力持ちも珍しくないし、冒険者っていう職業も普通にあるからな」
「さすが異次元、スケールが違うよ。よし、とりあえずこのお屋敷を探索だ!」
「気を付けろよ、もしかしたら床が抜けるかもしれないし」
「何それ、怖い」
二人は慎重に洋館の中を探索した。中は至って普通だった。デスクの引き出しを開けて中身まで確認したが、何も無い。茜は拍子抜けした。宝探しに来たような気分だったからだ。
「なぁ茜、この建物ってどこから2階に上がるんだろうな?」
「え?」
イブの何気ない質問に茜の背筋にゾワッと鳥肌が立つ。
「に、2階なんてあるの?」
「あるだろ。ほら」
イブが電子端末を見せてくる。そこには画像が映し出されていた。茜はそれをよく眺めた。確かにイブの言う通り、2階の窓がある。
「本当だ…」
ピロン、とどこからか電子音が鳴って、茜は飛び上がった。
「こっちだ、茜」
イブに腕を掴まれて引っ張られる。茜も覚悟を決めて歩き出した。しばらく歩くと壁にぶつかる。
「突き当たったな…」
「行き止まり?いや…」
茜は壁に耳を当ててコツコツと拳で叩いてみた。他の壁も叩いてみるが、明らかに音が違う。
「イブ、もしかしたらこの壁、蹴り破れるかも」
「茜、下がってろ」
「うん」
イブが華麗に蹴りを繰り出した。バキンと壁が割れる。柔らかい木で出来ていたのが幸いした。
「さすが、イブ!」
「茜、よく分かったな」
「ゲームとか、こういう謎掛けは子どもの時から得意でさ」
困ったように茜が笑うと、イブに頭をわしわし撫でられる。
「茜の柔軟さはすごいって皆褒めてるぞ」
「そうなの?」
「ああ」
ピロン、とまた電子音がする。先程より明らかに近い。イブと茜は頷き合って先に進んだ。突然、階段がある。二人は埃っぽい階段を上った。
しばらく歩くと、ガーガー、と機械音がしている部屋に行き着く。二人が部屋を覗き込むとピロンとまたあの音が鳴った。
「入ってみよう」
人間の姿はない。それでも二人は慎重に部屋の中に足を踏み入れた。そこで動いていたのはプリンターである。プリントアウトされた用紙を茜は拾い上げた。
「王族名簿?」
イブも隣から覗き込んでくる。
「おいおい、これ、国家機密レベルだぞ」
「え!もしかして、俺たち捕まっちゃう?」
「うーん、不可抗力だけど、これは怒られはするかもな」
「そっかぁ」
それで済むならよかったと茜は胸を撫で下ろした。
「とりあえず通報しよう」
イブが端末を使い、警察を呼んでいる。茜は今も動き続けているプリンターを眺めていた。
「イブってさり気なく魔法使えるよね?」
「あぁ。俺のいる次元は魔力持ちも珍しくないし、冒険者っていう職業も普通にあるからな」
「さすが異次元、スケールが違うよ。よし、とりあえずこのお屋敷を探索だ!」
「気を付けろよ、もしかしたら床が抜けるかもしれないし」
「何それ、怖い」
二人は慎重に洋館の中を探索した。中は至って普通だった。デスクの引き出しを開けて中身まで確認したが、何も無い。茜は拍子抜けした。宝探しに来たような気分だったからだ。
「なぁ茜、この建物ってどこから2階に上がるんだろうな?」
「え?」
イブの何気ない質問に茜の背筋にゾワッと鳥肌が立つ。
「に、2階なんてあるの?」
「あるだろ。ほら」
イブが電子端末を見せてくる。そこには画像が映し出されていた。茜はそれをよく眺めた。確かにイブの言う通り、2階の窓がある。
「本当だ…」
ピロン、とどこからか電子音が鳴って、茜は飛び上がった。
「こっちだ、茜」
イブに腕を掴まれて引っ張られる。茜も覚悟を決めて歩き出した。しばらく歩くと壁にぶつかる。
「突き当たったな…」
「行き止まり?いや…」
茜は壁に耳を当ててコツコツと拳で叩いてみた。他の壁も叩いてみるが、明らかに音が違う。
「イブ、もしかしたらこの壁、蹴り破れるかも」
「茜、下がってろ」
「うん」
イブが華麗に蹴りを繰り出した。バキンと壁が割れる。柔らかい木で出来ていたのが幸いした。
「さすが、イブ!」
「茜、よく分かったな」
「ゲームとか、こういう謎掛けは子どもの時から得意でさ」
困ったように茜が笑うと、イブに頭をわしわし撫でられる。
「茜の柔軟さはすごいって皆褒めてるぞ」
「そうなの?」
「ああ」
ピロン、とまた電子音がする。先程より明らかに近い。イブと茜は頷き合って先に進んだ。突然、階段がある。二人は埃っぽい階段を上った。
しばらく歩くと、ガーガー、と機械音がしている部屋に行き着く。二人が部屋を覗き込むとピロンとまたあの音が鳴った。
「入ってみよう」
人間の姿はない。それでも二人は慎重に部屋の中に足を踏み入れた。そこで動いていたのはプリンターである。プリントアウトされた用紙を茜は拾い上げた。
「王族名簿?」
イブも隣から覗き込んでくる。
「おいおい、これ、国家機密レベルだぞ」
「え!もしかして、俺たち捕まっちゃう?」
「うーん、不可抗力だけど、これは怒られはするかもな」
「そっかぁ」
それで済むならよかったと茜は胸を撫で下ろした。
「とりあえず通報しよう」
イブが端末を使い、警察を呼んでいる。茜は今も動き続けているプリンターを眺めていた。
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