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19・月の神殿
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次の日、これから出発するというなか、心海は昨日の猫カフェの建物を見てみた。まだ朝早いせいかもしれないが、灯りは点いていない。
「どしたー?心海ー?なんか気になるもんあったのか?」
律がぶらぶらとやってくる。心海はううん、と首を振った。
「昨日の猫カフェ、まだ閉まってるなって思っただけだよ」
「あ、本当だな。そうだ。帰ったら猫カフェ行こうぜ!」
「え!りっくんが猫カフェ?」
心海が首を傾げると、律が腕を組む。
「いや、お前が行くならよ」
心海はそれに嬉しくなった。
「うん!行こう!約束だよ!」
「おう」
月の神殿に辿り着くためには砂嵐をなんとかしなければならないらしい。だが、そんな砂嵐をスイケはあっさりと封じ込めた。
「スイケってすげえ奴だったんだな」
律が感心しているのがスイケには不本意らしい。
「僕は教師なのだから、これくらいは当たり前だよ。朝飯前ってやつさ」
「分かったよ、そんな怒るなよな」
月の神殿は石で出来ており、中はひんやりとしていた。当然真っ暗なので、スイケが魔法を唱え、場を明るくする。
(なんだろう、不思議な感覚…。懐かしい?ような)
心海はキョロキョロと辺りを見渡した。自分はこの世界に関係ない。勝手にそう思っていたが、もしかしたら違うのかもしれない。そう思った矢先だった。
「ココレット様!!」
幼い子供が泣きながら駆け寄ってくる。心海はハッとした。
「レリウス…」
「やはり…やはりココレット様でしたか」
レリウスは心海の腹に顔を埋めて泣いている。心海は彼の長い金髪をよしよしと撫でた。
「一体、どうゆうことだ?」
律がスイケを睨む。そんなスイケもふぅむ、と腕を組んだ。
「心海くん、君はもう全てを思い出しているはずだ。僕たちに話してくれるかい?」
心海は頷いた。
自分が神という存在から退いて人間になった経緯を。
✢✢✢
(今日も訓練してる)
心海がココレットだった頃、伯爵家の息子であるリツの訓練を見守るのが密かな楽しみだった。彼のそばにいきたいとココレットは毎日のように願っていたが、自分は神である。そんなことは不可能だと思っていた。ある時、大きな争いがあった。リツもそれに参戦しており、ココレットは不安な毎日を送った。そして、リツは帰ってこなかった。
ココレットは戦いを憎んだ。せめてリツの体がどこかに残っていないかとあちこちを探し回った。だが、ココレットも古い神である。だんだんと自分を保てなくなってきていた。そして、最後の手段を使ったのだ。神をやめ、人間として生きることを。リツはココレットが関わることで、因果を体内にためていた。ココレットがその因果を手繰り寄せるのは簡単なことだった。
「りっくんが、好きだったんだ。誰にも負けないくらい」
「心海、お前…」
「ココレット様は最期まで立派でしたよ。私はそんなあなたに育てて頂いたんです」
レリウスが泣き腫らした顔で見上げてくる。
「でも、皆を騙したことに変わりないよ」
心海はこれからどうしようと考えていた。
「騙してなんかいねえよ!」
律が叫ぶ。
「りっくん?」
「お前はココレットだったかもしれねえ!でも今は新田心海っていう普通の人間だろ!」
「りっくん、ありがとう」
心海はその場にしゃがみ泣いた。律が抱き寄せてくれる。
「好きだよ、心海。愛してる」
「うん、俺もだよ」
二人は見つめ合った。
「どしたー?心海ー?なんか気になるもんあったのか?」
律がぶらぶらとやってくる。心海はううん、と首を振った。
「昨日の猫カフェ、まだ閉まってるなって思っただけだよ」
「あ、本当だな。そうだ。帰ったら猫カフェ行こうぜ!」
「え!りっくんが猫カフェ?」
心海が首を傾げると、律が腕を組む。
「いや、お前が行くならよ」
心海はそれに嬉しくなった。
「うん!行こう!約束だよ!」
「おう」
月の神殿に辿り着くためには砂嵐をなんとかしなければならないらしい。だが、そんな砂嵐をスイケはあっさりと封じ込めた。
「スイケってすげえ奴だったんだな」
律が感心しているのがスイケには不本意らしい。
「僕は教師なのだから、これくらいは当たり前だよ。朝飯前ってやつさ」
「分かったよ、そんな怒るなよな」
月の神殿は石で出来ており、中はひんやりとしていた。当然真っ暗なので、スイケが魔法を唱え、場を明るくする。
(なんだろう、不思議な感覚…。懐かしい?ような)
心海はキョロキョロと辺りを見渡した。自分はこの世界に関係ない。勝手にそう思っていたが、もしかしたら違うのかもしれない。そう思った矢先だった。
「ココレット様!!」
幼い子供が泣きながら駆け寄ってくる。心海はハッとした。
「レリウス…」
「やはり…やはりココレット様でしたか」
レリウスは心海の腹に顔を埋めて泣いている。心海は彼の長い金髪をよしよしと撫でた。
「一体、どうゆうことだ?」
律がスイケを睨む。そんなスイケもふぅむ、と腕を組んだ。
「心海くん、君はもう全てを思い出しているはずだ。僕たちに話してくれるかい?」
心海は頷いた。
自分が神という存在から退いて人間になった経緯を。
✢✢✢
(今日も訓練してる)
心海がココレットだった頃、伯爵家の息子であるリツの訓練を見守るのが密かな楽しみだった。彼のそばにいきたいとココレットは毎日のように願っていたが、自分は神である。そんなことは不可能だと思っていた。ある時、大きな争いがあった。リツもそれに参戦しており、ココレットは不安な毎日を送った。そして、リツは帰ってこなかった。
ココレットは戦いを憎んだ。せめてリツの体がどこかに残っていないかとあちこちを探し回った。だが、ココレットも古い神である。だんだんと自分を保てなくなってきていた。そして、最後の手段を使ったのだ。神をやめ、人間として生きることを。リツはココレットが関わることで、因果を体内にためていた。ココレットがその因果を手繰り寄せるのは簡単なことだった。
「りっくんが、好きだったんだ。誰にも負けないくらい」
「心海、お前…」
「ココレット様は最期まで立派でしたよ。私はそんなあなたに育てて頂いたんです」
レリウスが泣き腫らした顔で見上げてくる。
「でも、皆を騙したことに変わりないよ」
心海はこれからどうしようと考えていた。
「騙してなんかいねえよ!」
律が叫ぶ。
「りっくん?」
「お前はココレットだったかもしれねえ!でも今は新田心海っていう普通の人間だろ!」
「りっくん、ありがとう」
心海はその場にしゃがみ泣いた。律が抱き寄せてくれる。
「好きだよ、心海。愛してる」
「うん、俺もだよ」
二人は見つめ合った。
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