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18・オアシス

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「ずっと砂だな」

「うん、すごいね」

心海たちは砂漠の中を歩いている。荷物はラクダに載せているので、身軽だ。砂漠は気温が高いので、心海たちはスイケに空気調整魔法をかけてもらっていた。お陰で普段と同じようにいられる。

「レリウス…様ってどんなやつなんだ?」

「幼女」

律の言葉に瑛太とスイケがハモる。

「幼女…って端的すぎないか?」

「俺はなんとなく分かったかも…」

心海が言うと、律が叫ぶ。

「ヲタク関連の話であることはよく分かった!」

「まぁまぁ、りっくん。ヲタも今は受容されてきてるんだし」

「心海、ヲタ受容されてきた理由の一つに外見があるからな!?今のヲタはな、擬態が上手いんだよ!」

「そうだったんだ」

ぽむ、と瑛太が手を打つ。

「おい、瑛太!お前には言ってないし、さりげなく心海に近寄るな!」

「えー、いいじゃない」

「うんうん、仲良きことは美しかな」

スイケが微笑ましそうに頷いている。

「ほらほら、もう夜が来てしまうよ。先を急ごう」

スイケの号令で心海たちは先を急いだ。途中のオアシスで休息を取ろうと言われる。月が真上に昇る頃、ようやくそのオアシスが見えてきた。

「すごい、急に湖があるんだ」

心海はふと灯りのついた家屋に目を取られた。

(異次元猫カフェ出張中?)

「ここちゃん、あのお店が気になるの?」

瑛太に話しかけられて心海は笑った。

「気になるけどお金もないし」

「本当だな。俺たちの世界の金、ここじゃ使えねえじゃねえか」

「まぁ一応両替は出来るけど、今日は疲れてるだろうから休もうね」

スイケの提案に皆が頷く。心海もへとへとだった。下半身が痛くてしょうがない。

「心海」

「わ!」

律にひょいと抱き上げられて、心海は驚いて彼に掴まった。律の顔がすぐそばにある。心海の顔はそれにかーっと熱くなった。顔を見られないように頑張って背けてみるが意味を成さない。

「り、りっくん。不意打ちは駄目だよ?」

一応怒っているという顔をしようとしてみたが無駄だった。律が笑う。

「心海、体痛いだろ?普段動かないもんな、お前」

「うん、動かない」

「今度一緒に走るか?」

「うん」

律の首に抱き着くとよしよしと頭を撫でられる。
一行はオアシスのそばにある宿屋に入った。丸いテントはまるで、遊牧民族を思わせる。心海は律と同室のようだ。

「明け方には出立したい。短い時間だけど、よく休むんだよ」

スイケに言われて二人は頷いた。部屋に入ってみると、一つ大きなベッドが置かれている。

「一緒に寝るしかねえな」

律の言葉に心海は動揺した。ベッドにすとんと座らされる。

「なぁ、心海?シャワーあるみたいだし、先に浴びてこいよ。寝間着もあるし」

「う、うん」

自分は何をそんなにドキドキしているのだろう。
律のことは心から信じているはずだ。

(違う…俺が期待しているんだよね)

恋人になりたい、いや、もっと深い関係に。心海はいつからかそう願っている。はじめにそう思ったのはいつだったか、もう定かではないが、確実に思っているのは間違いない。

シャワーはぬるくて、勢いも弱かったが、浴びたらさっぱりした。

「りっくん、お待たせ」

「おう」

律がタオルと着替えを手にシャワールームに消えたのを確認して、心海はほう、と息を吐いた。とにかく長い1日だった。ベッドに横になると目を閉じないといられないくらいだ。
心海はそのまま眠ってしまった。

「ん…」

心海が気が付くと律と目が合った。

「おはよ…?りっくん」

「まだ朝じゃないけどな。もっとこっち来い。ベッドから落ちるぞ」

律に手招きされて、心海は律に近寄った。
ぎゅ、と律に抱き締められている。

「はー、こうしたかった」

「りっくん、眠れる?」

「大丈夫だよ。お前触ってると癒やされるし」

「えっち」

「そ、そんなの仕方ねーだろ!」

心海はおかしくなって笑ってしまった。律もつられて笑っている。

「寝よう」

「うん」

律の体温と鼓動を感じて、心海はホッとして眠りに就いていた。
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