8 / 21
8・三角形
しおりを挟む
「よし、入稿完了だよ」
次の日、漫研はお祝いムードだった。出展するスペースも無事に決まったらしい。これで肝心の本さえ出来れば準備は完了だ。心海はホッと息を吐いた。初めてのことだらけで、毎日がドキドキだ。
「ねえ、ここちゃん」
先輩の一人にずいと顔を寄せられて心海は少し後ずさった。
「なんでしょう?」
「コスプレに挑戦してみない?」
「へ?」
予想外の言葉に心海は固まることしかできない。
「俺がコスプレ…?」
「そうなの、ここちゃんなら絶対に可愛くなると思うし!」
「可愛くって…まさか…」
「そう!このドレス!ここちゃんなら着られるでしょう!」
もう断りきれない空気になっている。それにコミックマーケットというイベントはお祭りに近いと聞いている。ええい、ままよと心海は頷いていた。
「分かりました、着ます」
「本当?いいの?やったー!」
「その代わり、ちゃんと可愛くしてくださいね」
「するするー!」
「ここちゃんのコスプレ、僕も見たかったから嬉しいな」
瑛太が話しかけてくる。確か彼もコスプレ班に引き抜かれていた。顔がいいというのは、それだけで武器になる。
「瑛太くんは何を着るの?」
「ドレスだよ、ここちゃんの対のデザインのドレス」
「わぁ、瑛太くんが着たら本物のお姫様みたいになるね!」
「ここちゃんだってなるよ」
「そ、そうかな?」
えへへ、と照れていると、瑛太に手を取られていた。
「あの、君の幼馴染のことなんだけど…」
そういえば喧嘩はまだ終わっていなかった。
「りっくんに君にちゃんと謝ってって言ったよ。もう怒ってないから大丈夫」
「そうじゃないんだ。お詫びに三人で遊園地に行かない?」
「え」
「前にも言ったけど、僕はここちゃんをまだ諦められない。でも僕と君、二人でデートするわけにはいかないよね?だから三人でならどうかなって」
なるほどと心海は思った。もしかしたら三人で仲良く出来るかもしれない。だが決裂する場合も考えられる。
「えっと、とりあえずりっくんに聞いてみるね」
「ありがとう、ここちゃん。イベント、頑張ろうね」
「うん」
今日はバイトがなかったので心海は早めに帰宅することにした。せっかくイベントに行くのなら、贔屓にしているサークルを見に行きたい。というわけで、スマートフォンを駆使して、サークルチェックをしている。
(ふあぁ!いい感じにえっちー。これも買うし、これも買う。そうだ、取り置いてもらえるか頼んでみよ)
自宅の最寄り駅に到着し、家に入ると静かだった。
「りっくんはまだ帰ってこないし、通販で買った同人誌でも読もうっと」
心海は今一番好きなジャンルの同人誌を自分のご褒美に買っていた。律の前では出さないように気を付けている。セクシュアルというのは人それぞれだからだ。
「この展開を待っていた!きゃっほー!」
心海はすっかり同人誌を堪能したのだった。
次の日、漫研はお祝いムードだった。出展するスペースも無事に決まったらしい。これで肝心の本さえ出来れば準備は完了だ。心海はホッと息を吐いた。初めてのことだらけで、毎日がドキドキだ。
「ねえ、ここちゃん」
先輩の一人にずいと顔を寄せられて心海は少し後ずさった。
「なんでしょう?」
「コスプレに挑戦してみない?」
「へ?」
予想外の言葉に心海は固まることしかできない。
「俺がコスプレ…?」
「そうなの、ここちゃんなら絶対に可愛くなると思うし!」
「可愛くって…まさか…」
「そう!このドレス!ここちゃんなら着られるでしょう!」
もう断りきれない空気になっている。それにコミックマーケットというイベントはお祭りに近いと聞いている。ええい、ままよと心海は頷いていた。
「分かりました、着ます」
「本当?いいの?やったー!」
「その代わり、ちゃんと可愛くしてくださいね」
「するするー!」
「ここちゃんのコスプレ、僕も見たかったから嬉しいな」
瑛太が話しかけてくる。確か彼もコスプレ班に引き抜かれていた。顔がいいというのは、それだけで武器になる。
「瑛太くんは何を着るの?」
「ドレスだよ、ここちゃんの対のデザインのドレス」
「わぁ、瑛太くんが着たら本物のお姫様みたいになるね!」
「ここちゃんだってなるよ」
「そ、そうかな?」
えへへ、と照れていると、瑛太に手を取られていた。
「あの、君の幼馴染のことなんだけど…」
そういえば喧嘩はまだ終わっていなかった。
「りっくんに君にちゃんと謝ってって言ったよ。もう怒ってないから大丈夫」
「そうじゃないんだ。お詫びに三人で遊園地に行かない?」
「え」
「前にも言ったけど、僕はここちゃんをまだ諦められない。でも僕と君、二人でデートするわけにはいかないよね?だから三人でならどうかなって」
なるほどと心海は思った。もしかしたら三人で仲良く出来るかもしれない。だが決裂する場合も考えられる。
「えっと、とりあえずりっくんに聞いてみるね」
「ありがとう、ここちゃん。イベント、頑張ろうね」
「うん」
今日はバイトがなかったので心海は早めに帰宅することにした。せっかくイベントに行くのなら、贔屓にしているサークルを見に行きたい。というわけで、スマートフォンを駆使して、サークルチェックをしている。
(ふあぁ!いい感じにえっちー。これも買うし、これも買う。そうだ、取り置いてもらえるか頼んでみよ)
自宅の最寄り駅に到着し、家に入ると静かだった。
「りっくんはまだ帰ってこないし、通販で買った同人誌でも読もうっと」
心海は今一番好きなジャンルの同人誌を自分のご褒美に買っていた。律の前では出さないように気を付けている。セクシュアルというのは人それぞれだからだ。
「この展開を待っていた!きゃっほー!」
心海はすっかり同人誌を堪能したのだった。
40
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【幼馴染DK】至って、普通。
りつ
BL
天才型×平凡くん。「別れよっか、僕達」――才能溢れる幼馴染みに、平凡な自分では釣り合わない。そう思って別れを切り出したのだけれど……?ハッピーバカップルラブコメ短編です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
周りが幼馴染をヤンデレという(どこが?)
ヨミ
BL
幼馴染 隙杉 天利 (すきすぎ あまり)はヤンデレだが主人公 花畑 水華(はなばた すいか)は全く気づかない所か溺愛されていることにも気付かずに
ただ友達だとしか思われていないと思い込んで悩んでいる超天然鈍感男子
天利に恋愛として好きになって欲しいと頑張るが全然効いていないと思っている。
可愛い(綺麗?)系男子でモテるが天利が男女問わず牽制してるためモテない所か自分が普通以下の顔だと思っている
天利は時折アピールする水華に対して好きすぎて理性の糸が切れそうになるが、なんとか保ち普段から好きすぎで悶え苦しんでいる。
水華はアピールしてるつもりでも普段の天然の部分でそれ以上のことをしているので何しても天然故の行動だと思われてる。
イケメンで物凄くモテるが水華に初めては全て捧げると内心勝手に誓っているが水華としかやりたいと思わないので、どんなに迫られようと見向きもしない、少し女嫌いで女子や興味、どうでもいい人物に対してはすごく冷たい、水華命の水華LOVEで水華のお願いなら何でも叶えようとする
好きになって貰えるよう努力すると同時に好き好きアピールしているが気づかれず何年も続けている内に気づくとヤンデレとかしていた
自分でもヤンデレだと気づいているが治すつもりは微塵も無い
そんな2人の両片思い、もう付き合ってんじゃないのと思うような、じれ焦れイチャラブな恋物語
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
総長の彼氏が俺にだけ優しい
桜子あんこ
BL
ビビりな俺が付き合っている彼氏は、
関東で最強の暴走族の総長。
みんなからは恐れられ冷酷で悪魔と噂されるそんな俺の彼氏は何故か俺にだけ甘々で優しい。
そんな日常を描いた話である。
異世界転生した俺の婚約相手が、王太子殿下(♂)なんて嘘だろう?! 〜全力で婚約破棄を目指した結果。
みこと。
BL
気づいたら、知らないイケメンから心配されていた──。
事故から目覚めた俺は、なんと侯爵家の次男に異世界転生していた。
婚約者がいると聞き喜んだら、相手は王太子殿下だという。
いくら同性婚ありの国とはいえ、なんでどうしてそうなってんの? このままじゃ俺が嫁入りすることに?
速やかな婚約解消を目指し、可愛い女の子を求めたのに、ご令嬢から貰ったクッキーは仕込みありで、とんでも案件を引き起こす!
てんやわんやな未来や、いかに!?
明るく仕上げた短編です。気軽に楽しんで貰えたら嬉しいです♪
※同タイトルの簡易版を「小説家になろう」様でも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・話の流れが遅い
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談? 本気? 二人の結末は?
美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
推し変なんて絶対しない!
toki
BL
ごくごく平凡な男子高校生、相沢時雨には“推し”がいる。
それは、超人気男性アイドルユニット『CiEL(シエル)』の「太陽くん」である。
太陽くん単推しガチ恋勢の時雨に、しつこく「俺を推せ!」と言ってつきまとい続けるのは、幼馴染で太陽くんの相方でもある美月(みづき)だった。
➤➤➤
読み切り短編、アイドルものです! 地味に高校生BLを初めて書きました。
推しへの愛情と恋愛感情の境界線がまだちょっとあやふやな発展途上の17歳。そんな感じのお話。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!(https://www.pixiv.net/artworks/97035517)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる