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月の女神
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「わあ、ここが月の中かあ」
アイカとレイが階段から一歩、月の中に踏み込むと、銀色の空間が広がっていた。
誰か中にいるかと思ったがそこは、しんと静まり返っている。
「だあれえ?あたしは今忙しいの!」
こんな声が聞こえてくる。若い女性の声だった。
アイカとレイはその声を頼りに先に進んだ。
「ふー、お風呂上がりのアイスって美味しいー」
ソファに座って寛いでいたのは、寝る支度を整えた若い女性だった。
二人はそれに困って、遠くの方から彼女に声を掛けた。
「あのー、月の女神様ですかー?」
「そうだけど、もうあたし働くの嫌になっちゃったのよねえ。そんなところにいないでこっちに入ってきなさいよ」
二人はその言葉に従うことにする。二人は先にそれぞれ自己紹介をした。
「なに?あんた達、ルフのじーさんに言われてここまで来たワケ?」
「は、はい」
はーと彼女は嫌そうに息をついて、持っていた棒アイスにかぶりついた。
「アイスって美味しいー」
どうやら彼女の現実逃避が始まってしまったらしい。
「さてと、寝るかあ」
くああと月の女神があくびをしている。
二人はそれを必死に止めた。
「なによ、邪魔しないでよね」
「月の女神の仕事はこれからじゃないのか?」
レイの言葉に月の女神は明らかにむすっとしてみせた。
「なによ、ちょっとイケメンだからってあたしに命令するつもり?」
「いや、そうじゃなくて」
「女神様、なんでお仕事が嫌になっちゃったの?」
アイカが尋ねると、女神はうーんと腕を組んで考え始めた。
「月の仕事ってとにかく超ハードなの。潮の満ち引きってあるでしょ?
あれ全部手動なんだよ。あたしがバランスを見て潮位を動かしてるんだから」
「そうだったんだ」
アイカが驚くと女神が笑い出す。
「え、知らなかったの?やば!」
「知りませんでした。大変なお仕事なんですね」
「あんたみたいな兎がしょっちゅう餅つきに来るわよ」
「ええ?」
「わあ、皆意外と知らないんだねえ。あたしの中では常識だと思ってた」
女神がどこからかお茶を出してすすっている。
「うーん、ここまで認知されていない仕事だったとは」
女神の言葉にアイカとレイはハラハラしていた。
女神の仕事に対するモチベーションが下がっていると感じていたからだ。
「仕方ない、このあたしが頑張って女神業を世の中に広めますか」
「?!」
二人は驚いて女神を見つめた。
「何よ、あたしの顔になにか付いてる?」
「いえ、てっきり女神をやめるって言うかと思って」
レイがおずおず言うと女神は笑った。
「あたし、ガッツだけは自信あるのよね」
「頑張って、女神様」
アイカが応援すると女神がふふんと得意げに笑って見せた。
「後ね、あたしの名前はルミナスよ!
さ、楽しくなってきたわー!」
どうやらルミナスはやる気になってくれたらしい。アイカとレイはホッと息をついたのだった。
「ねえ、二人とも。あんた達、付き合ってんの?」
二人は頷いた。
「ならあんた達がずっと一緒にいられる様に祈るわ。ルフはあたしにそれをさせたくて、あんた達を呼んだのね。
一応あたしは上位の神に分類されるし、ルフのじーさんもいいとこあるのね」
「ありがとう、ルミナスさん」
「たまにはここに遊びに来てよね!」
「はい、また来ます」
二人が階段を降りると既に朝だった。
「む…どうやら上手く行ったようじゃな。よくやったぞ」
ルフがそう言いながら伸びをしている。ルフはいつも通りマイペースだ。
「さあ、レイ。お主の祖母とやらの家に行くかの。お主らは疲れておる。休んだ方が良い」
再びルフの背中に二人は乗った。
ルフに言われて気が付いたが、徹夜だったのは間違いない。
いろいろなことがあった。
レイの祖母の家に着いた二人は挨拶もそこそこに布団に入ったのだった。
アイカとレイが階段から一歩、月の中に踏み込むと、銀色の空間が広がっていた。
誰か中にいるかと思ったがそこは、しんと静まり返っている。
「だあれえ?あたしは今忙しいの!」
こんな声が聞こえてくる。若い女性の声だった。
アイカとレイはその声を頼りに先に進んだ。
「ふー、お風呂上がりのアイスって美味しいー」
ソファに座って寛いでいたのは、寝る支度を整えた若い女性だった。
二人はそれに困って、遠くの方から彼女に声を掛けた。
「あのー、月の女神様ですかー?」
「そうだけど、もうあたし働くの嫌になっちゃったのよねえ。そんなところにいないでこっちに入ってきなさいよ」
二人はその言葉に従うことにする。二人は先にそれぞれ自己紹介をした。
「なに?あんた達、ルフのじーさんに言われてここまで来たワケ?」
「は、はい」
はーと彼女は嫌そうに息をついて、持っていた棒アイスにかぶりついた。
「アイスって美味しいー」
どうやら彼女の現実逃避が始まってしまったらしい。
「さてと、寝るかあ」
くああと月の女神があくびをしている。
二人はそれを必死に止めた。
「なによ、邪魔しないでよね」
「月の女神の仕事はこれからじゃないのか?」
レイの言葉に月の女神は明らかにむすっとしてみせた。
「なによ、ちょっとイケメンだからってあたしに命令するつもり?」
「いや、そうじゃなくて」
「女神様、なんでお仕事が嫌になっちゃったの?」
アイカが尋ねると、女神はうーんと腕を組んで考え始めた。
「月の仕事ってとにかく超ハードなの。潮の満ち引きってあるでしょ?
あれ全部手動なんだよ。あたしがバランスを見て潮位を動かしてるんだから」
「そうだったんだ」
アイカが驚くと女神が笑い出す。
「え、知らなかったの?やば!」
「知りませんでした。大変なお仕事なんですね」
「あんたみたいな兎がしょっちゅう餅つきに来るわよ」
「ええ?」
「わあ、皆意外と知らないんだねえ。あたしの中では常識だと思ってた」
女神がどこからかお茶を出してすすっている。
「うーん、ここまで認知されていない仕事だったとは」
女神の言葉にアイカとレイはハラハラしていた。
女神の仕事に対するモチベーションが下がっていると感じていたからだ。
「仕方ない、このあたしが頑張って女神業を世の中に広めますか」
「?!」
二人は驚いて女神を見つめた。
「何よ、あたしの顔になにか付いてる?」
「いえ、てっきり女神をやめるって言うかと思って」
レイがおずおず言うと女神は笑った。
「あたし、ガッツだけは自信あるのよね」
「頑張って、女神様」
アイカが応援すると女神がふふんと得意げに笑って見せた。
「後ね、あたしの名前はルミナスよ!
さ、楽しくなってきたわー!」
どうやらルミナスはやる気になってくれたらしい。アイカとレイはホッと息をついたのだった。
「ねえ、二人とも。あんた達、付き合ってんの?」
二人は頷いた。
「ならあんた達がずっと一緒にいられる様に祈るわ。ルフはあたしにそれをさせたくて、あんた達を呼んだのね。
一応あたしは上位の神に分類されるし、ルフのじーさんもいいとこあるのね」
「ありがとう、ルミナスさん」
「たまにはここに遊びに来てよね!」
「はい、また来ます」
二人が階段を降りると既に朝だった。
「む…どうやら上手く行ったようじゃな。よくやったぞ」
ルフがそう言いながら伸びをしている。ルフはいつも通りマイペースだ。
「さあ、レイ。お主の祖母とやらの家に行くかの。お主らは疲れておる。休んだ方が良い」
再びルフの背中に二人は乗った。
ルフに言われて気が付いたが、徹夜だったのは間違いない。
いろいろなことがあった。
レイの祖母の家に着いた二人は挨拶もそこそこに布団に入ったのだった。
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