イケメン猫ズと選ばれしお豆腐メンタル姫騎士のまったりな日常

はやしかわともえ

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1・夏~まったり秋(秘密基地)

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夏休みの後半は体調があまり良くなくて、俺はほとんどの時間を眠って過ごした。

「にぃぃ」

「ん…とら、ごめんね。一緒に遊んであげられなくて」

「にい」

とらに人差し指をかぷりと優しく咥えられた。気にするなということらしい。夏休みの課題が全て終わっていたのがまだ救いだ。どうやら夏期講習の疲れが今更出てしまったらしい。
たたっとくろが俺のお腹の上に乗ってくる。その重みと温かさになんだか安心して、俺はぐっすり眠っていた。

「ん…」

パチリと目を覚ますともう西日が射し込んでいる。少し調子が良くなった気がするな。むくりと起き上がる。部屋から出るとメノウさんがカラカラと回し車で遊んでいる。

「姫様!調子はいかがですか?」

「うん、少し元気になった…かも」

「ご飯をしっかり食べてお薬を飲んでくださいね」

メノウさん優しい。

「ありがとう、メノウさん」

冷蔵庫を開けると冷やし中華があった。これ、食べていいやつかな。そろっと皿を取り出してみる。お母さんたちは仕事だ。社会人に俺はなれるのかな。小さなころはちゃんとした大人になろうと思っていたけれど、今の時点では難しそうだなあという見解に変わってきている。
働くのは人間として当たり前のことなのに、俺はいつでもゆっくりだ。テーブルに冷やし中華の皿を置いて、サランラップを剥がした。麺を啜るとゴマダレの味がする。普通のタレも好きだけど、どちらかといえば俺はゴマダレが好きだ。
つるつる麺を食べていると、シャキシャキしたきゅうりゾーンがやって来た。うん、美味しい。
食事が摂れて、美味しいって思えるうちは俺はまだ大丈夫だ。

「しょうやー」

甘えたような声で俺を呼びながらマオ君がやって来る。もちろん、レオ君もいる。

「どうしたの?二人共?」

「秘密基地が出来たんだ!」

なんのこっちゃ、と思っていたらマオ君が俺の隣に座る。レオ君も向かいに座った。

「まあ簡単に言うと、俺たちの遊び場だ。父さんが作ってくれてな」

さすがお金持ちはスケールが違うなぁ。

「でね、その秘密基地に行くにはこの鍵が必要なんだよ」

コトリと置かれた鍵はぴかぴかして、綺麗だった。俺はそれをまじまじと見つめていた。

「しょうやに渡しておくね。失くさないように気を付けて」

「あ、ありがとう」

秘密基地、どんなところなんだろう。
俺はそっと鍵を掴んで眺めた。

「もし失くすのが心配なら、紐を通して首から提げたらどうだ?」

「レオ、ナイスアイデア!でもちょうどいい紐あるかなぁ?」

マオ君が首を傾げた。紐かぁ。

「姫様、この間革紐があるって言っておられましたよね?」

メノウさんの言葉に俺はハッとなった。随分前だけど入院している時に革製品を扱うワークショップに参加したんだった。

「メノウさん、ありがとう」

「とんでもございません」

勉強机の引き出しを開けると革紐が入っている。俺は鍵をそれに通して端と端を解けないようにぎゅっと縛った。

「出来た…」

一応解けてこないか引っ張って確認してみる。大丈夫そうだ。

「わ、素敵だよ、しょうや!」

「鍵の使い方を教える」

レオ君が言うには、この鍵はどこでも使えるらしい。ただし秘密基地に入れるのは一日一回だけ。
俺が無理をしていたりしても入れないそうだ。

「翔也、もうすぐ夏休みもおしまいだし、一度秘密基地を見に来いよ」

「秘密基地ツアーだね!」

マオ君がパッと顔を輝かせる。

「わ、分かった」

夏休みの最終日、俺は二人と秘密基地で遊ぶことにしたんだ。
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