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19・夏期講習終了!
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俺の為に組まれた翔也カリキュラムはもう終わりに近付いている。人間、やればできるもんだなあ。そして夏期講習は今日で最終日だ。
ここまであっという間の二週間だった。いつもと同じ流れでひたすら勉強する。毎日学校に登校すること自体が小学生以来だ。こうして登校するうちに他の子と少しだけど話すようになってきていた。皆、俺と同じで、大学進学を目指している。
偉いなって言ったら「翔也君もでしょ」と突っ込まれてしまった。困っていたら皆が優しく笑ってくれてこの学校に来て本当に良かったと思った。
「皆、これで夏期講習は終わりだけど油断せず勉強をしていってね。勉強は君たちを裏切らないから」
先生が最後にこう話していたのが印象的だった。
「ああ、疲れた」
「しょうや、お疲れー」
マオ君がいつものように飛びついて来る。
「お疲れ様、マオ君。レオ君も」
「翔也、顔色が悪い」
「うん、ちょっと具合悪いから薬飲もうと思って」
いつものポーチを漁ると薬が入っている。水筒のお茶で飲んだら少しホッとした。
プラシーボ効果かもしれないけど安心するって大事だからこうして飲むのも大事だ。
「やっと終わったな。毎日来られたってすごくないか?」
レオ君の言葉に俺は頷いた。
「うん、俺にも出来るんだって思えたよ」
「しょうやにはなんでも出来るんだよ」
ぎゅー、とマオ君が抱き着いてくる。
「とりあえず帰るか?学校締めるみたいだし」
レオ君の言葉に俺たちは頷いた。
家に帰って鍵を取り出そうとしたらなんだかいつもと様子が違うことに気が付いた。
ノブを握るとドアが開いた。誰かが中にいる。
もしかして泥棒?
ふと玄関の靴が目に入った。ヒールの高いピンク色の靴。そして黒の革靴。まさか。俺はその場で固まってしまった。
「翔也、お帰り」
思っていた通りの人が部屋の奥から現れる。
「お父さん、お母さん…?」
なんとかそれだけ言えた。
「こんなに大きくなったの」
お母さんの声が涙ぐんでいる。俺は困って、目をそらした。
「翔也、学校のお友達かな?」
お父さんが声を掛けてくれた。
「うん」
「はじめまして!」
「初めまして」
マオ君もレオ君も淀みなく挨拶をしている。
比べない…と自分に言い聞かせた。
じゃあ、これでと二人が俺に手を振る。俺も振り返した。さて、どうしようか。
「翔也、とりあえず中に入りなさい」
俺はそれに素直に従った。教材の入ったリュックは自分の部屋に置く。
「翔也、ドーナツあるの。食べる?」
小さな子供じゃないんだし、おやつにはつられないんだけど、一応頷いた。うーん、気まず過ぎる。そろっと時計を見たらまだ15時過ぎだった。兄さんが帰ってくるまであと4時間。
「夏期講習に行っていたの?」
「うん、今日で終わった。お父さんもお母さんもお盆に帰ってくるって聞いたけど」
二人が気まずそうな顔をする。何かあったんだ。
「あのね、翔也」
「父さんたちと暮らさないか?父さんたち、日本に戻ってくることになったんだ」
「え?戻ってこられるの?」
俺はびっくりした。
「早く言いたかったんだけど、父さんたちも引っ越しの準備すら出来てなくて」
「なら俺が手伝うよ」
「翔也?でもすごく遠いわよ?」
「俺、飛行機乗ってみたい」
二人はびっくりしていた。
「にゃおん」
するりとマオ君が現れる。いつも完璧だな、この子は。レオ君も悠々と現れた。
「克也から聞いていたけど猫ちゃんとハムスターを飼ってるなんてすごいじゃない」
メノウさんをそっと見つめたら、回し車を爆速で走っている。
「うん、皆、可愛いよ」
「克也は犬を飼いたいみたいだけど翔也は嫌なの?」
「嫌じゃないよ。でもこの子たちと喧嘩にならないかな」
俺はそれが心配だ。母さんが温かいミルクを出してくれた。せっかくだ、ドーナツを貰おう。
「頂きます」
適当にチョコレートでコーティングされているドーナツを手に取って齧りついた。わ、美味い。
「大きなワンちゃんなら性格も穏やかだし、一度見に行ってみない?」
大きなワンちゃんて…。俺はなんとか頷いてドーナツを食べたのだった。
ここまであっという間の二週間だった。いつもと同じ流れでひたすら勉強する。毎日学校に登校すること自体が小学生以来だ。こうして登校するうちに他の子と少しだけど話すようになってきていた。皆、俺と同じで、大学進学を目指している。
偉いなって言ったら「翔也君もでしょ」と突っ込まれてしまった。困っていたら皆が優しく笑ってくれてこの学校に来て本当に良かったと思った。
「皆、これで夏期講習は終わりだけど油断せず勉強をしていってね。勉強は君たちを裏切らないから」
先生が最後にこう話していたのが印象的だった。
「ああ、疲れた」
「しょうや、お疲れー」
マオ君がいつものように飛びついて来る。
「お疲れ様、マオ君。レオ君も」
「翔也、顔色が悪い」
「うん、ちょっと具合悪いから薬飲もうと思って」
いつものポーチを漁ると薬が入っている。水筒のお茶で飲んだら少しホッとした。
プラシーボ効果かもしれないけど安心するって大事だからこうして飲むのも大事だ。
「やっと終わったな。毎日来られたってすごくないか?」
レオ君の言葉に俺は頷いた。
「うん、俺にも出来るんだって思えたよ」
「しょうやにはなんでも出来るんだよ」
ぎゅー、とマオ君が抱き着いてくる。
「とりあえず帰るか?学校締めるみたいだし」
レオ君の言葉に俺たちは頷いた。
家に帰って鍵を取り出そうとしたらなんだかいつもと様子が違うことに気が付いた。
ノブを握るとドアが開いた。誰かが中にいる。
もしかして泥棒?
ふと玄関の靴が目に入った。ヒールの高いピンク色の靴。そして黒の革靴。まさか。俺はその場で固まってしまった。
「翔也、お帰り」
思っていた通りの人が部屋の奥から現れる。
「お父さん、お母さん…?」
なんとかそれだけ言えた。
「こんなに大きくなったの」
お母さんの声が涙ぐんでいる。俺は困って、目をそらした。
「翔也、学校のお友達かな?」
お父さんが声を掛けてくれた。
「うん」
「はじめまして!」
「初めまして」
マオ君もレオ君も淀みなく挨拶をしている。
比べない…と自分に言い聞かせた。
じゃあ、これでと二人が俺に手を振る。俺も振り返した。さて、どうしようか。
「翔也、とりあえず中に入りなさい」
俺はそれに素直に従った。教材の入ったリュックは自分の部屋に置く。
「翔也、ドーナツあるの。食べる?」
小さな子供じゃないんだし、おやつにはつられないんだけど、一応頷いた。うーん、気まず過ぎる。そろっと時計を見たらまだ15時過ぎだった。兄さんが帰ってくるまであと4時間。
「夏期講習に行っていたの?」
「うん、今日で終わった。お父さんもお母さんもお盆に帰ってくるって聞いたけど」
二人が気まずそうな顔をする。何かあったんだ。
「あのね、翔也」
「父さんたちと暮らさないか?父さんたち、日本に戻ってくることになったんだ」
「え?戻ってこられるの?」
俺はびっくりした。
「早く言いたかったんだけど、父さんたちも引っ越しの準備すら出来てなくて」
「なら俺が手伝うよ」
「翔也?でもすごく遠いわよ?」
「俺、飛行機乗ってみたい」
二人はびっくりしていた。
「にゃおん」
するりとマオ君が現れる。いつも完璧だな、この子は。レオ君も悠々と現れた。
「克也から聞いていたけど猫ちゃんとハムスターを飼ってるなんてすごいじゃない」
メノウさんをそっと見つめたら、回し車を爆速で走っている。
「うん、皆、可愛いよ」
「克也は犬を飼いたいみたいだけど翔也は嫌なの?」
「嫌じゃないよ。でもこの子たちと喧嘩にならないかな」
俺はそれが心配だ。母さんが温かいミルクを出してくれた。せっかくだ、ドーナツを貰おう。
「頂きます」
適当にチョコレートでコーティングされているドーナツを手に取って齧りついた。わ、美味い。
「大きなワンちゃんなら性格も穏やかだし、一度見に行ってみない?」
大きなワンちゃんて…。俺はなんとか頷いてドーナツを食べたのだった。
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