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17・翔也カリキュラム
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「お弁当、これでいいかな」
兄さんが作ってくれたきんぴらと肉じゃがを弁当箱に詰めたらまだ隙間があったので、急遽たまごやきを焼いた。
お米は別の小さなタッパーに入れる。
「お、美味そうだな」
「レオ君」
レオ君が悠々と歩いてきた。
「マオ君は?」
「叩き起こすから大丈夫だ。翔也は先に行け」
「うん。鍵はどうすればいい?」
「掛けておくから翔也が鍵は持っていろ」
「ありがとう」
学校に到着すると他の夏期講習に参加する生徒たちが沢山いた。普段こんなに生徒を見たことがないから怖気づきそうになってしまう。
「しょうやー」
「わあ」
後ろからマオ君が体当たりをしてきて、俺はびっくりした。
「マオ、急にぶつかっていくな。翔也が怪我するぞ」
「あ、ごめんねしょうや。朝会えなかったからつい」
「間に合ってよかった」
俺が笑うとマオ君がぎゅっと抱き着いてきた。
「大好きだよ、しょうや」
中に入るといつもより校内が騒がしい。
「すごい、この学校ってこんなに生徒いるんだ」
「しょうやはこっちだってさ」
「へ?」
よく見ると名前が書かれている。
「俺たちはこっちだ。また昼に落ちあおう」
「後でね!」
「うん」
俺は教室に入った。
「おはようございます」
そこにいたのは数名の生徒だ。皆それぞれ挨拶を返してくれる。
緊張しながら席に着くと先生がやって来る。
やばい、時間ギリギリだったんだ。明日はもう少し早く来ないと。ドキドキしていると先生からプリントを配られた。
なんだろう、結構分厚いぞ。
そのプリントの表紙には翔也カリキュラムと大きく書かれていた。
「皆、それ気になるよね」
先生がそう声を掛けてくれる。
「それ、皆が過去に間違えた問題とその応用が載ってるの。まずは30分、自分の力だけでやってみて。教科書を見てもいいわ。じゃ、スタート」
プリントを一枚捲ってみる。すると英語の例題と問題がびっしり載っている。うわあ、すごいんだ。夏期講習って。
俺はまず確実に分かる問題を解いてみることにした。英語の難しい所は語順だろう。日本語とは明らかに違う。そこが理解できなくて躓く人が多い。
怪しい部分は教科書を見ながら解いてみる。うん、この間先生に習った所だから意外と覚えてるぞ。
「おっと」
思わず俺は声を漏らしてしまった。ここ、この間、間違えた所だ。それは覚えているのに解答がどうだったか、すっかり忘れている。これはどうだったかな。困っているとタイマーが鳴る。もう30分経ったの?まだ全然答えていないのに。先生が立ち上がった。
「はい、ここまで。ではここから先生が順番に回っていくので自分で取り組めるところはどんどんやってみて。きっと自分の苦手な問題が分かって来るよー」
先生のカリキュラム作成スキル、半端ない。俺はこつこつ問題を解き始めた。一つ分かったこと、それは関係代名詞の使い方や時制の問題がどうも怪しいということだろうか。分かるまで繰り返し解いていくしかない。俺は教科書を片手に何度も何度も問題を解いていった。
「翔也君、集中出来てるね。怪しいとこ見つかった?」
「あの、このthatって…」
「うん、後ろの文を繋いでるの」
関係代名詞は書かれないことも多いらしい。そこまで把握しなきゃいけないのかと眼の前が暗くなる。
「大丈夫、ゆっくりやっていこう。あとね、そのプリント、国語と中国語の問題も入ってるからまた明日以降にやっていきましょうね」
それから先生に何度も教えてもらって俺はようやく覚えてきた。帰ったら復習しよう。
気が付くと昼休みになっている。
「しょうや!どうだった?疲れた?」
マオ君が心配そうに声を掛けてくれる。
「うん、疲れた。でもすごく勉強になった」
「良かったねえ。しょうや楽しそう」
「昼飯食おうぜ。翔也、ホテルのカレーライス食べたのか?」
「うん、美味しくてびっくりしたよ」
「まあ値段いいからなあ」
そうなのか!と俺が青くなっているとレオ君が笑う。
「父さん、金はあるから心配するな」
「しょうやとまた話したいって言ってたから、こんどは焼き肉連れてってってお願いしたの!」
レオ君もマオ君も本当にお父さんを信頼してるんだな。なんだか羨ましいな。
「俺、父さんと母さんに合わせる顔がないよ」
「しょうや…」
「どうして俺はこんななんだろうっていつもいつも思うんだ。生まれてこないほうがよかったのにって」
「しょうや、そんな悲しいこと思わないでよ」
「翔也がいなかったら俺たちやお兄さんもいなかったかもしれない。もしかしたらもっとひどい世界になっていたかもしれない」
「マオ君、レオ君…うん」
二人が励ましてくれてちょっと楽になった。
「お弁当食べようか」
「あぁ」
「しょうや、たまごやき頂戴」
マイナスにばかり考えていると、いいことは逃げていくのかもしれない。
俺は人より弱いから尚更だ。気を付けよう。周りの人に悲しい顔をさせるのはもう沢山なんだ。
兄さんが作ってくれたきんぴらと肉じゃがを弁当箱に詰めたらまだ隙間があったので、急遽たまごやきを焼いた。
お米は別の小さなタッパーに入れる。
「お、美味そうだな」
「レオ君」
レオ君が悠々と歩いてきた。
「マオ君は?」
「叩き起こすから大丈夫だ。翔也は先に行け」
「うん。鍵はどうすればいい?」
「掛けておくから翔也が鍵は持っていろ」
「ありがとう」
学校に到着すると他の夏期講習に参加する生徒たちが沢山いた。普段こんなに生徒を見たことがないから怖気づきそうになってしまう。
「しょうやー」
「わあ」
後ろからマオ君が体当たりをしてきて、俺はびっくりした。
「マオ、急にぶつかっていくな。翔也が怪我するぞ」
「あ、ごめんねしょうや。朝会えなかったからつい」
「間に合ってよかった」
俺が笑うとマオ君がぎゅっと抱き着いてきた。
「大好きだよ、しょうや」
中に入るといつもより校内が騒がしい。
「すごい、この学校ってこんなに生徒いるんだ」
「しょうやはこっちだってさ」
「へ?」
よく見ると名前が書かれている。
「俺たちはこっちだ。また昼に落ちあおう」
「後でね!」
「うん」
俺は教室に入った。
「おはようございます」
そこにいたのは数名の生徒だ。皆それぞれ挨拶を返してくれる。
緊張しながら席に着くと先生がやって来る。
やばい、時間ギリギリだったんだ。明日はもう少し早く来ないと。ドキドキしていると先生からプリントを配られた。
なんだろう、結構分厚いぞ。
そのプリントの表紙には翔也カリキュラムと大きく書かれていた。
「皆、それ気になるよね」
先生がそう声を掛けてくれる。
「それ、皆が過去に間違えた問題とその応用が載ってるの。まずは30分、自分の力だけでやってみて。教科書を見てもいいわ。じゃ、スタート」
プリントを一枚捲ってみる。すると英語の例題と問題がびっしり載っている。うわあ、すごいんだ。夏期講習って。
俺はまず確実に分かる問題を解いてみることにした。英語の難しい所は語順だろう。日本語とは明らかに違う。そこが理解できなくて躓く人が多い。
怪しい部分は教科書を見ながら解いてみる。うん、この間先生に習った所だから意外と覚えてるぞ。
「おっと」
思わず俺は声を漏らしてしまった。ここ、この間、間違えた所だ。それは覚えているのに解答がどうだったか、すっかり忘れている。これはどうだったかな。困っているとタイマーが鳴る。もう30分経ったの?まだ全然答えていないのに。先生が立ち上がった。
「はい、ここまで。ではここから先生が順番に回っていくので自分で取り組めるところはどんどんやってみて。きっと自分の苦手な問題が分かって来るよー」
先生のカリキュラム作成スキル、半端ない。俺はこつこつ問題を解き始めた。一つ分かったこと、それは関係代名詞の使い方や時制の問題がどうも怪しいということだろうか。分かるまで繰り返し解いていくしかない。俺は教科書を片手に何度も何度も問題を解いていった。
「翔也君、集中出来てるね。怪しいとこ見つかった?」
「あの、このthatって…」
「うん、後ろの文を繋いでるの」
関係代名詞は書かれないことも多いらしい。そこまで把握しなきゃいけないのかと眼の前が暗くなる。
「大丈夫、ゆっくりやっていこう。あとね、そのプリント、国語と中国語の問題も入ってるからまた明日以降にやっていきましょうね」
それから先生に何度も教えてもらって俺はようやく覚えてきた。帰ったら復習しよう。
気が付くと昼休みになっている。
「しょうや!どうだった?疲れた?」
マオ君が心配そうに声を掛けてくれる。
「うん、疲れた。でもすごく勉強になった」
「良かったねえ。しょうや楽しそう」
「昼飯食おうぜ。翔也、ホテルのカレーライス食べたのか?」
「うん、美味しくてびっくりしたよ」
「まあ値段いいからなあ」
そうなのか!と俺が青くなっているとレオ君が笑う。
「父さん、金はあるから心配するな」
「しょうやとまた話したいって言ってたから、こんどは焼き肉連れてってってお願いしたの!」
レオ君もマオ君も本当にお父さんを信頼してるんだな。なんだか羨ましいな。
「俺、父さんと母さんに合わせる顔がないよ」
「しょうや…」
「どうして俺はこんななんだろうっていつもいつも思うんだ。生まれてこないほうがよかったのにって」
「しょうや、そんな悲しいこと思わないでよ」
「翔也がいなかったら俺たちやお兄さんもいなかったかもしれない。もしかしたらもっとひどい世界になっていたかもしれない」
「マオ君、レオ君…うん」
二人が励ましてくれてちょっと楽になった。
「お弁当食べようか」
「あぁ」
「しょうや、たまごやき頂戴」
マイナスにばかり考えていると、いいことは逃げていくのかもしれない。
俺は人より弱いから尚更だ。気を付けよう。周りの人に悲しい顔をさせるのはもう沢山なんだ。
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