16 / 26
1
16・夏休みスタート!
しおりを挟む
昨日、俺は学校で夏休みの宿題を受け取っていた。その量に俺は驚いて思わず、二度見してしまった。多い、と単純に思ってしまったのだ。大学受験をするなら、これくらいの課題は当たり前にやるべきなんだろう。それと、夏期講習は明日から始まる。分からないところや、理解の足りていないところを重点的に、興味のある範囲までみっちりとやるのだ。ドキドキするけど、ちょっと楽しみだな。
「すごいよねー、量」
夜、夕飯を食べた後、家で夏休みの計画表を作っていたらマオ君が猫の姿で言った。俺の足元で座っている。
「翔也は今、ちゃんと計画表を作ってるぞ」
レオ君も優雅に歩きながら言う。
「分かった。あとでやるよ。やればいいんでしょ」
二人と猫の姿でも話せるという事実に俺はびっくりしてしまった。
「しょうや、無理のないスケジュールでね」
俺は首を振って答えた。兄さんが台所で作り置きのおかずを作ってくれているのだ。
「翔也、きんぴらごぼうと肉じゃが作ったから、明日食べろよー」
「分かったー、ありがとうー」
俺は課題の量を見ながら計画表を作った。この計画だと、1日2時間は最低でも勉強する必要がある。でも、なんとかなりそうだ。頑張ろう。
「翔也、計画表作ってるのか?」
「うん。明日から学校で夏期講習だし、宿題もその時に一緒にやるんだよ」
「結構、時間長いんだろ?」
「えーっと、10時から15時過ぎまでかな。そんなに長くない」
「懐かしいなぁ」
兄さんも高校の頃は塾に通っていたから勉強の大変さが分かるのだろう。なんだかんだ言いながら、大学はしっかり国立に通っていたしなぁ。
「兄さん」
「ん?」
「俺も大学に通いたい」
「うん、通ったらいいじゃないか」
「でも、そのまま働けるようになるかな?」
「今だってパン屋で働いてるじゃないか」
「あれはお手伝いだもの」
ぽんぽんと兄さんが俺の頭を撫でる。
「お前は立派に働いてるよ」
「!うん」
嬉しくなって頷いたら兄さんが笑った。
「そういや通知表見たけど翔也はすごく頑張ってるんだなって分かった。テストの結果でよく分かるよな」
「ん…先生がすごく教えてくれたんだ」
困ってはにかんだら、兄さんが頷く。
「そういや、父さんと母さんだけどお盆に帰って来るってさ。なにか美味しいもの食べに行こうって」
そうだった、すっかり忘れてた。顔もろくに覚えていない両親とご飯を食べる。大丈夫かな?
でも嫌だなんて言えないしなあ。
「翔也の話聞きたいってさ」
「お、俺の話?」
それって苛められた挙げ句に病気になって社会に適応できなくなった俺の話だろうか?
「翔也、頑張ってるだろ?兄ちゃん、自慢しといた」
「でも俺、他の子より遅れて・・」
「翔也、比べないだろ?」
「あ」
そうだったと俺は気が付いた。人と比べてもいいことは何もない。
俺のペースで歩こうと決めたんだ。
「翔也、大丈夫なんだからな」
「ん」
兄さんが笑う。
「計画表は出来たのか?」
「うん、計画通りに出来るようにやる」
「無理しない程度にな」
俺は頷いた。無理しないとか、頑張り過ぎないとか、その線引きがまだ俺には難しい。
いつも無理して頑張り過ぎて大変な思いを周りにさせてしまうから。
俺はなんで生きているんだろうってずっと考えてきた。だからって死にたいわけではない。
でも時々ものすごく消えたい気持ちになる。それは絶対に兄さんには言えない。言われたら困るだろうし、また入院だって言われてしまいそうだ。
俺だって出来る事なら、普通の人生を送ってみたい。普通の幸せな人生を、当たり前に生きていたい。
部屋に戻るとマオ君が人型になって一生懸命計画表を作っている。大変そうだ。
「お手伝いしようか?」
「いいの?」
「マオ・・明日から夏期講習だぞ。早く寝ろ。翔也も寝ないと持たないぞ」
「うん」
俺たちはレオ君の言葉にただただ頷いていた。
「すごいよねー、量」
夜、夕飯を食べた後、家で夏休みの計画表を作っていたらマオ君が猫の姿で言った。俺の足元で座っている。
「翔也は今、ちゃんと計画表を作ってるぞ」
レオ君も優雅に歩きながら言う。
「分かった。あとでやるよ。やればいいんでしょ」
二人と猫の姿でも話せるという事実に俺はびっくりしてしまった。
「しょうや、無理のないスケジュールでね」
俺は首を振って答えた。兄さんが台所で作り置きのおかずを作ってくれているのだ。
「翔也、きんぴらごぼうと肉じゃが作ったから、明日食べろよー」
「分かったー、ありがとうー」
俺は課題の量を見ながら計画表を作った。この計画だと、1日2時間は最低でも勉強する必要がある。でも、なんとかなりそうだ。頑張ろう。
「翔也、計画表作ってるのか?」
「うん。明日から学校で夏期講習だし、宿題もその時に一緒にやるんだよ」
「結構、時間長いんだろ?」
「えーっと、10時から15時過ぎまでかな。そんなに長くない」
「懐かしいなぁ」
兄さんも高校の頃は塾に通っていたから勉強の大変さが分かるのだろう。なんだかんだ言いながら、大学はしっかり国立に通っていたしなぁ。
「兄さん」
「ん?」
「俺も大学に通いたい」
「うん、通ったらいいじゃないか」
「でも、そのまま働けるようになるかな?」
「今だってパン屋で働いてるじゃないか」
「あれはお手伝いだもの」
ぽんぽんと兄さんが俺の頭を撫でる。
「お前は立派に働いてるよ」
「!うん」
嬉しくなって頷いたら兄さんが笑った。
「そういや通知表見たけど翔也はすごく頑張ってるんだなって分かった。テストの結果でよく分かるよな」
「ん…先生がすごく教えてくれたんだ」
困ってはにかんだら、兄さんが頷く。
「そういや、父さんと母さんだけどお盆に帰って来るってさ。なにか美味しいもの食べに行こうって」
そうだった、すっかり忘れてた。顔もろくに覚えていない両親とご飯を食べる。大丈夫かな?
でも嫌だなんて言えないしなあ。
「翔也の話聞きたいってさ」
「お、俺の話?」
それって苛められた挙げ句に病気になって社会に適応できなくなった俺の話だろうか?
「翔也、頑張ってるだろ?兄ちゃん、自慢しといた」
「でも俺、他の子より遅れて・・」
「翔也、比べないだろ?」
「あ」
そうだったと俺は気が付いた。人と比べてもいいことは何もない。
俺のペースで歩こうと決めたんだ。
「翔也、大丈夫なんだからな」
「ん」
兄さんが笑う。
「計画表は出来たのか?」
「うん、計画通りに出来るようにやる」
「無理しない程度にな」
俺は頷いた。無理しないとか、頑張り過ぎないとか、その線引きがまだ俺には難しい。
いつも無理して頑張り過ぎて大変な思いを周りにさせてしまうから。
俺はなんで生きているんだろうってずっと考えてきた。だからって死にたいわけではない。
でも時々ものすごく消えたい気持ちになる。それは絶対に兄さんには言えない。言われたら困るだろうし、また入院だって言われてしまいそうだ。
俺だって出来る事なら、普通の人生を送ってみたい。普通の幸せな人生を、当たり前に生きていたい。
部屋に戻るとマオ君が人型になって一生懸命計画表を作っている。大変そうだ。
「お手伝いしようか?」
「いいの?」
「マオ・・明日から夏期講習だぞ。早く寝ろ。翔也も寝ないと持たないぞ」
「うん」
俺たちはレオ君の言葉にただただ頷いていた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。
真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆
【あらすじ】
どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。
神様は言った。
「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」
現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。
神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。
それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。
あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。
そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。
そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。
ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。
この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。
さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。
そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。
チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。
しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。
もちろん、攻略スキルを使って。
もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。
下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。
これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。
【他サイトでの掲載状況】
本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる