イケメン猫ズと選ばれしお豆腐メンタル姫騎士のまったりな日常

はやしかわともえ

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16・夏休みスタート!

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昨日、俺は学校で夏休みの宿題を受け取っていた。その量に俺は驚いて思わず、二度見してしまった。多い、と単純に思ってしまったのだ。大学受験をするなら、これくらいの課題は当たり前にやるべきなんだろう。それと、夏期講習は明日から始まる。分からないところや、理解の足りていないところを重点的に、興味のある範囲までみっちりとやるのだ。ドキドキするけど、ちょっと楽しみだな。

「すごいよねー、量」

夜、夕飯を食べた後、家で夏休みの計画表を作っていたらマオ君が猫の姿で言った。俺の足元で座っている。

「翔也は今、ちゃんと計画表を作ってるぞ」

レオ君も優雅に歩きながら言う。

「分かった。あとでやるよ。やればいいんでしょ」

二人と猫の姿でも話せるという事実に俺はびっくりしてしまった。

「しょうや、無理のないスケジュールでね」

俺は首を振って答えた。兄さんが台所で作り置きのおかずを作ってくれているのだ。

「翔也、きんぴらごぼうと肉じゃが作ったから、明日食べろよー」

「分かったー、ありがとうー」

俺は課題の量を見ながら計画表を作った。この計画だと、1日2時間は最低でも勉強する必要がある。でも、なんとかなりそうだ。頑張ろう。

「翔也、計画表作ってるのか?」

「うん。明日から学校で夏期講習だし、宿題もその時に一緒にやるんだよ」

「結構、時間長いんだろ?」

「えーっと、10時から15時過ぎまでかな。そんなに長くない」

「懐かしいなぁ」

兄さんも高校の頃は塾に通っていたから勉強の大変さが分かるのだろう。なんだかんだ言いながら、大学はしっかり国立に通っていたしなぁ。

「兄さん」

「ん?」

「俺も大学に通いたい」

「うん、通ったらいいじゃないか」

「でも、そのまま働けるようになるかな?」

「今だってパン屋で働いてるじゃないか」

「あれはお手伝いだもの」

ぽんぽんと兄さんが俺の頭を撫でる。

「お前は立派に働いてるよ」

「!うん」

嬉しくなって頷いたら兄さんが笑った。

「そういや通知表見たけど翔也はすごく頑張ってるんだなって分かった。テストの結果でよく分かるよな」

「ん…先生がすごく教えてくれたんだ」

困ってはにかんだら、兄さんが頷く。

「そういや、父さんと母さんだけどお盆に帰って来るってさ。なにか美味しいもの食べに行こうって」

そうだった、すっかり忘れてた。顔もろくに覚えていない両親とご飯を食べる。大丈夫かな?
でも嫌だなんて言えないしなあ。 

「翔也の話聞きたいってさ」

「お、俺の話?」

それって苛められた挙げ句に病気になって社会に適応できなくなった俺の話だろうか?

「翔也、頑張ってるだろ?兄ちゃん、自慢しといた」

「でも俺、他の子より遅れて・・」

「翔也、比べないだろ?」

「あ」

そうだったと俺は気が付いた。人と比べてもいいことは何もない。
俺のペースで歩こうと決めたんだ。

「翔也、大丈夫なんだからな」

「ん」

兄さんが笑う。

「計画表は出来たのか?」

「うん、計画通りに出来るようにやる」

「無理しない程度にな」

俺は頷いた。無理しないとか、頑張り過ぎないとか、その線引きがまだ俺には難しい。
いつも無理して頑張り過ぎて大変な思いを周りにさせてしまうから。
俺はなんで生きているんだろうってずっと考えてきた。だからって死にたいわけではない。
でも時々ものすごく消えたい気持ちになる。それは絶対に兄さんには言えない。言われたら困るだろうし、また入院だって言われてしまいそうだ。
俺だって出来る事なら、普通の人生を送ってみたい。普通の幸せな人生を、当たり前に生きていたい。

部屋に戻るとマオ君が人型になって一生懸命計画表を作っている。大変そうだ。

「お手伝いしようか?」

「いいの?」

「マオ・・明日から夏期講習だぞ。早く寝ろ。翔也も寝ないと持たないぞ」

「うん」

俺たちはレオ君の言葉にただただ頷いていた。

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