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13・お父様
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「しょうや!!」
「お誕生日おめでとうー!」
「姫様、ご立派になられて」
今日は俺の18歳の誕生日だった。レオ君、マオ君、メノウさんがお祝いしてくれて嬉しい。
お菓子を3人で食べる。
「お兄さん、きっとケーキを買ってくるよね」
「お菓子食べ過ぎないようにしないとな」
兄さんは今日のために出掛けるぎりぎりまで料理の仕込みをしていた。ご馳走だからって言ってた。楽しみだなぁ。
「あのね、僕たち、プレゼントを用意したの!」
「え」
俺が驚いている間もなくマオ君が包みを取り出した。なんだろう。
「はい、しょうや」
「あ、ありがとう」
俺が包みを受け取ると、二人が開けてみてとにこにこしている。
ドキドキしながら開けたら色鉛筆と塗り絵だった。
「わ、嬉しい」
「前にしょうやが暇な時間ゲーム以外で何かしたいって言ってたから」
確かに言っていた。ポロッと言っただけなのによく覚えていてくれたなぁ。
「ありがとう、二人共」
泣きそうになって、慌てて目を擦る。
「あのね、しょうや」
「俺たちのいるホテルに一度来てくれないか?」
「へ?ホテルに?」
「お父様が君に会いたいって」
お父様?俺はぽかんとしてしまった。なんでそんな人が俺に会いたいなんて。
「翔也のことを案じていてな」
「心配かけちゃってるんだね」
それなら会って謝ったほうがいい。
「しょうやは何も気にしなくていいんだよ」
「あぁ、父さんは過去にショーヤの父君だった人だから」
命を失ったショーヤ姫は本当に愛されていたんだなってそれだけで分かる。その生まれ変わりが俺で…ん?なんだかよく分からなくなってきた。
「また詳しい日程は報せるから」
「うん、お願いします」
お菓子を食べ終わってから3人でゲームをした。メノウさんもその様子を見ていてくれていたようだ。
「しょうや!そこ!追い抜いちゃえ!!」
「負けねえ!!」
なんだかまったりし過ぎて大丈夫かなってなってきた。でも俺の人生はゆっくりすることが大事みたいだし、慌てない方がいいよなあ。
「しょうや、惜しかったね」
レースゲームでは負けてしまったけど楽しかった。二人が猫の姿に戻る。兄さんが帰って来るのを待とうということになった。
19時過ぎ、玄関から音がする。兄さんだ。
「翔也、ただいま。ケーキがなかなかなくてな」
俺がケーキの箱を受け取るとすごく大きくてびっくりだった。
「翔也はチョコレートケーキが好きだろう?ネットで探してみたけど、なかなか予約も出来なくて」
「それ有名店とかでしょう?」
「ああ。というかそれ以外で見つけられなかったんだ」
兄さん、ネット下手すぎか。
「今から飯作るな」
「俺も手伝うよ」
「じゃあ、野菜を切ってもらおうかな」
「分かった」
兄さんはビーフシチューを作ろうとしていたらしい。いつもお肉がごろごろ入っている、嬉しい一品だ。
それに俺が乱切りに切ったニンジンと玉ねぎを炒めて入れて煮込む。
「よし、ビーフシチューはこれでいいな。サラダを作ろう。翔也はバケットを切ってトースターで焼いてくれないか?」
「了解」
俺はパン切り包丁を取り出してバケットを切った。どれくらい食べるのかな?
「沢山切るの?」
「ああ。そうだなあ。二人だし半分くらいでいいんじゃないか?」
「了解」
バケットを切ってトースターで焼き上げる。お、ビーフシチューがいい匂いしてきた。
「よし、翔也休憩だ。後は兄ちゃんやるからな」
「いいの?」
「今日は翔也の誕生日だぞ」
あ、と俺は思い出した。マオ君とレオ君のお父さんに会うことを話さなくちゃと思ったのだ。
俺が今日の話をすると、驚かれた。そりゃあそうだよね。
友達とはいえそのお父さんと会うなんてレアケース過ぎる。
「まああの紫の石のこともあるし、ちゃんと話した方がいいのかもな」
兄さんは最終的に折れた。兄さんは柔軟な考えの持ち主だ。兄さんが兄さんで良かったと思う。
しばらくテレビを観ていたら兄さんが出来たぞと呼んでくれた。台所から出来たばかりの料理を運ぶ。
「わああ、美味しそう」
「翔也、さ、食べよう」
「いただきます」
「誕生日おめでとう」
「ありがとう」
今年の誕生日はなんだか温かい。俺がこの世界に生きていていいんだって初めて思った。
「翔也、その包み」
「あ、マオ君とレオ君たちがプレゼントをくれたの」
「それは嬉しかったな。返さなくちゃな」
「二人の誕生日聞いておく」
兄さんが笑って頷いた。
「何をもらったんだ?」
「塗り絵と色鉛筆」
「翔也前から何かやりたいって言ってたもんな。兄ちゃんからはこれだ」
「え」
兄さんが取り出したのは腕時計だった。シルバーのごつめのものだ。
「翔也は腕が細いからでかい方が可愛いかなって」
「わああ、ありがとう」
兄さん、なんで彼女いないの?
不思議に思うけど兄さんは基本的に忙しいし仕方がないのかもしれない。
食べ終えて片付けをして明日の準備をする。明日は学校に行く日だ。
「兄さん、俺ね、近くでいいんだけど旅行に行きたい」
そう言ったら兄さんはしばらくぽかんとしていた。
「ああ、じゃあ夏休みに行けるようにスケジュールを立てるな」
「え、いいの?」
ダメもとで言ったことだったから今度は俺が驚いてしまった。
「翔也と行きたいところいっぱいあるからな」
「うん、ありがとう。おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
俺が部屋に戻ると既にレオ君とマオ君が枕元に寝そべっている。
「二人共お腹空いてない?」
「お菓子食べ過ぎた」
マオ君が呻いている。食べさせすぎちゃったか。
「寝れば大丈夫。ね」
マオ君が心配しないでと言ってきた。俺はマオ君のお腹をさすった。少しでも楽になってくれればいいんだけど。
「もうすぐ夏休みだな。旅行に行けると良いな」
レオ君は聞いていたらしい。
「まだ分からないけど楽しみ」
あれ、俺、苦しいのが消えてきている?なんで?
「しょうや、おやすみ」
「おやすみ」
俺は目を閉じた。
「お誕生日おめでとうー!」
「姫様、ご立派になられて」
今日は俺の18歳の誕生日だった。レオ君、マオ君、メノウさんがお祝いしてくれて嬉しい。
お菓子を3人で食べる。
「お兄さん、きっとケーキを買ってくるよね」
「お菓子食べ過ぎないようにしないとな」
兄さんは今日のために出掛けるぎりぎりまで料理の仕込みをしていた。ご馳走だからって言ってた。楽しみだなぁ。
「あのね、僕たち、プレゼントを用意したの!」
「え」
俺が驚いている間もなくマオ君が包みを取り出した。なんだろう。
「はい、しょうや」
「あ、ありがとう」
俺が包みを受け取ると、二人が開けてみてとにこにこしている。
ドキドキしながら開けたら色鉛筆と塗り絵だった。
「わ、嬉しい」
「前にしょうやが暇な時間ゲーム以外で何かしたいって言ってたから」
確かに言っていた。ポロッと言っただけなのによく覚えていてくれたなぁ。
「ありがとう、二人共」
泣きそうになって、慌てて目を擦る。
「あのね、しょうや」
「俺たちのいるホテルに一度来てくれないか?」
「へ?ホテルに?」
「お父様が君に会いたいって」
お父様?俺はぽかんとしてしまった。なんでそんな人が俺に会いたいなんて。
「翔也のことを案じていてな」
「心配かけちゃってるんだね」
それなら会って謝ったほうがいい。
「しょうやは何も気にしなくていいんだよ」
「あぁ、父さんは過去にショーヤの父君だった人だから」
命を失ったショーヤ姫は本当に愛されていたんだなってそれだけで分かる。その生まれ変わりが俺で…ん?なんだかよく分からなくなってきた。
「また詳しい日程は報せるから」
「うん、お願いします」
お菓子を食べ終わってから3人でゲームをした。メノウさんもその様子を見ていてくれていたようだ。
「しょうや!そこ!追い抜いちゃえ!!」
「負けねえ!!」
なんだかまったりし過ぎて大丈夫かなってなってきた。でも俺の人生はゆっくりすることが大事みたいだし、慌てない方がいいよなあ。
「しょうや、惜しかったね」
レースゲームでは負けてしまったけど楽しかった。二人が猫の姿に戻る。兄さんが帰って来るのを待とうということになった。
19時過ぎ、玄関から音がする。兄さんだ。
「翔也、ただいま。ケーキがなかなかなくてな」
俺がケーキの箱を受け取るとすごく大きくてびっくりだった。
「翔也はチョコレートケーキが好きだろう?ネットで探してみたけど、なかなか予約も出来なくて」
「それ有名店とかでしょう?」
「ああ。というかそれ以外で見つけられなかったんだ」
兄さん、ネット下手すぎか。
「今から飯作るな」
「俺も手伝うよ」
「じゃあ、野菜を切ってもらおうかな」
「分かった」
兄さんはビーフシチューを作ろうとしていたらしい。いつもお肉がごろごろ入っている、嬉しい一品だ。
それに俺が乱切りに切ったニンジンと玉ねぎを炒めて入れて煮込む。
「よし、ビーフシチューはこれでいいな。サラダを作ろう。翔也はバケットを切ってトースターで焼いてくれないか?」
「了解」
俺はパン切り包丁を取り出してバケットを切った。どれくらい食べるのかな?
「沢山切るの?」
「ああ。そうだなあ。二人だし半分くらいでいいんじゃないか?」
「了解」
バケットを切ってトースターで焼き上げる。お、ビーフシチューがいい匂いしてきた。
「よし、翔也休憩だ。後は兄ちゃんやるからな」
「いいの?」
「今日は翔也の誕生日だぞ」
あ、と俺は思い出した。マオ君とレオ君のお父さんに会うことを話さなくちゃと思ったのだ。
俺が今日の話をすると、驚かれた。そりゃあそうだよね。
友達とはいえそのお父さんと会うなんてレアケース過ぎる。
「まああの紫の石のこともあるし、ちゃんと話した方がいいのかもな」
兄さんは最終的に折れた。兄さんは柔軟な考えの持ち主だ。兄さんが兄さんで良かったと思う。
しばらくテレビを観ていたら兄さんが出来たぞと呼んでくれた。台所から出来たばかりの料理を運ぶ。
「わああ、美味しそう」
「翔也、さ、食べよう」
「いただきます」
「誕生日おめでとう」
「ありがとう」
今年の誕生日はなんだか温かい。俺がこの世界に生きていていいんだって初めて思った。
「翔也、その包み」
「あ、マオ君とレオ君たちがプレゼントをくれたの」
「それは嬉しかったな。返さなくちゃな」
「二人の誕生日聞いておく」
兄さんが笑って頷いた。
「何をもらったんだ?」
「塗り絵と色鉛筆」
「翔也前から何かやりたいって言ってたもんな。兄ちゃんからはこれだ」
「え」
兄さんが取り出したのは腕時計だった。シルバーのごつめのものだ。
「翔也は腕が細いからでかい方が可愛いかなって」
「わああ、ありがとう」
兄さん、なんで彼女いないの?
不思議に思うけど兄さんは基本的に忙しいし仕方がないのかもしれない。
食べ終えて片付けをして明日の準備をする。明日は学校に行く日だ。
「兄さん、俺ね、近くでいいんだけど旅行に行きたい」
そう言ったら兄さんはしばらくぽかんとしていた。
「ああ、じゃあ夏休みに行けるようにスケジュールを立てるな」
「え、いいの?」
ダメもとで言ったことだったから今度は俺が驚いてしまった。
「翔也と行きたいところいっぱいあるからな」
「うん、ありがとう。おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
俺が部屋に戻ると既にレオ君とマオ君が枕元に寝そべっている。
「二人共お腹空いてない?」
「お菓子食べ過ぎた」
マオ君が呻いている。食べさせすぎちゃったか。
「寝れば大丈夫。ね」
マオ君が心配しないでと言ってきた。俺はマオ君のお腹をさすった。少しでも楽になってくれればいいんだけど。
「もうすぐ夏休みだな。旅行に行けると良いな」
レオ君は聞いていたらしい。
「まだ分からないけど楽しみ」
あれ、俺、苦しいのが消えてきている?なんで?
「しょうや、おやすみ」
「おやすみ」
俺は目を閉じた。
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