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教室にて
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小学校には僕と同じ幼稚園だった子もちらほらいた。でも僕はとにかく千尋に興味津々だった。
「ねえ、倉沢くんはゲームとかする?」
恐る恐る尋ねたら千尋は首を横に振った。
「やったことない。加那はゲーム好きなのか?」
「うん、よければ今日一緒にやらない?」
僕は最近発売したばかりの、最新のテレビゲームにハマっていた。
毎日の宿題や、お店のお手伝いも頑張るからとお父さんとお母さんをなんとか説き伏せて買ってもらったものだ。僕の大事な宝物の一つだった。
「じゃあ、宿題出たし、先にやろうな」
千尋は大人っぽかったし、すごく偉かった。頭がいいんだ、って僕はすぐに気が付いた。
千尋みたいな子は初めてだった。
「今日、お母さんがね、ケーキ焼いてくれるって言ってたよ」
「すごいな」
二人でどうでもいいことを話しながら、僕達は家に帰った。
「千尋くん!よく来てくれたわね!
ケーキあるわよお!」
僕のお母さんも千尋が大好きだった。
千尋は誰にでも礼儀正しかったし、優しい人だった。
僕の恋はもうここから始まっていたんだろうな。
それから僕は、千尋とケーキを食べながら宿題をした。
僕は入学早々、早速、勉強に躓いていた。
千尋はそんな僕に分かりやすく勉強を教えてくれた。
「わ、分かった!やっとできたよ」
「良かった。ケーキも美味いな」
その後、千尋のお母さんが迎えに来るまで、僕達はゲームで遊んだ。
千尋と出会っていなかったら、僕の人生はどうなっていたんだろう。
そう思うと正直ゾッとする。
「加那、口にクリーム付いてる」
「わわ!」
千尋が笑っている。僕は千尋が大好きだ。
会った時から彼に恋していた。
✣✣✣
低学年の時は気にならなかったことが中学年になるとちらちらと僕の中で現われ始めた。
いわゆる思春期ってやつだ。
とにかく周りのことが気になる。
僕はチビだったし気が弱かったからなおさら駄目だった。
今になったら「なんだ、そんなことか」っていうようなことでも、僕はいちいちクヨクヨウジウジ悩んだ。
ついに耐えきれなくなって、僕は休み時間になると、旧校舎の教室に隠れるようになった。
僕の通っていた小学校は古くて、新校舎の方を普段は使っていた。
もうすぐ旧校舎は取り壊されることになっていて、中に入れなくなる。
そしたら僕は何処に逃げればいいんだろう、なんて暗い気持ちでいた。
僕が隠れていると、千尋が毎回探しに来てくれた。
「加那、ここにいたのか。
もうみんな騒いでないぞ」
「ありがとう、倉沢くん」
僕はよく机の下に潜り込んで震えていた。
とにかく周りの全てが怖かったんだよね。
千尋はそんな僕を嫌がりもせずに探してくれた。こんな人はきっと千尋くらいだ。
好きになって当然だったとも言える。
ほのかだったこの思いがはっきり形になるまでそんなに時間がかからなかった。
でも、僕は男だ。
千尋を好きでいていいのか迷いもあった。
僕達は一緒にゲームをして遊んだり、ご飯を食べた。
とにかくこの時から千尋と一緒にいられて幸せだったんだ。
「ねえ、倉沢くんはゲームとかする?」
恐る恐る尋ねたら千尋は首を横に振った。
「やったことない。加那はゲーム好きなのか?」
「うん、よければ今日一緒にやらない?」
僕は最近発売したばかりの、最新のテレビゲームにハマっていた。
毎日の宿題や、お店のお手伝いも頑張るからとお父さんとお母さんをなんとか説き伏せて買ってもらったものだ。僕の大事な宝物の一つだった。
「じゃあ、宿題出たし、先にやろうな」
千尋は大人っぽかったし、すごく偉かった。頭がいいんだ、って僕はすぐに気が付いた。
千尋みたいな子は初めてだった。
「今日、お母さんがね、ケーキ焼いてくれるって言ってたよ」
「すごいな」
二人でどうでもいいことを話しながら、僕達は家に帰った。
「千尋くん!よく来てくれたわね!
ケーキあるわよお!」
僕のお母さんも千尋が大好きだった。
千尋は誰にでも礼儀正しかったし、優しい人だった。
僕の恋はもうここから始まっていたんだろうな。
それから僕は、千尋とケーキを食べながら宿題をした。
僕は入学早々、早速、勉強に躓いていた。
千尋はそんな僕に分かりやすく勉強を教えてくれた。
「わ、分かった!やっとできたよ」
「良かった。ケーキも美味いな」
その後、千尋のお母さんが迎えに来るまで、僕達はゲームで遊んだ。
千尋と出会っていなかったら、僕の人生はどうなっていたんだろう。
そう思うと正直ゾッとする。
「加那、口にクリーム付いてる」
「わわ!」
千尋が笑っている。僕は千尋が大好きだ。
会った時から彼に恋していた。
✣✣✣
低学年の時は気にならなかったことが中学年になるとちらちらと僕の中で現われ始めた。
いわゆる思春期ってやつだ。
とにかく周りのことが気になる。
僕はチビだったし気が弱かったからなおさら駄目だった。
今になったら「なんだ、そんなことか」っていうようなことでも、僕はいちいちクヨクヨウジウジ悩んだ。
ついに耐えきれなくなって、僕は休み時間になると、旧校舎の教室に隠れるようになった。
僕の通っていた小学校は古くて、新校舎の方を普段は使っていた。
もうすぐ旧校舎は取り壊されることになっていて、中に入れなくなる。
そしたら僕は何処に逃げればいいんだろう、なんて暗い気持ちでいた。
僕が隠れていると、千尋が毎回探しに来てくれた。
「加那、ここにいたのか。
もうみんな騒いでないぞ」
「ありがとう、倉沢くん」
僕はよく机の下に潜り込んで震えていた。
とにかく周りの全てが怖かったんだよね。
千尋はそんな僕を嫌がりもせずに探してくれた。こんな人はきっと千尋くらいだ。
好きになって当然だったとも言える。
ほのかだったこの思いがはっきり形になるまでそんなに時間がかからなかった。
でも、僕は男だ。
千尋を好きでいていいのか迷いもあった。
僕達は一緒にゲームをして遊んだり、ご飯を食べた。
とにかくこの時から千尋と一緒にいられて幸せだったんだ。
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