3 / 15
海
しおりを挟む
四歳。僕は三歳から幼稚園に通うようになっていた。
慣れない環境に僕はすぐ具合が悪くなった。
お母さんから離れて一人でいるのにとても勇気が要った。お友達らしいお友達もいなかったし、毎日不安で仕方がなかった。
先生は優しかったけど、僕はなかなか心を許せなかった。
でも幼稚園に行けないと、小学校に通えないのだと思い込んでいて、頑張って毎日通っていた。
でもそんなある日、ついに限界が来てしまった。
毎朝、体がだるくて熱が出てしまうのだ。
幼稚園に行かなきゃいけないのに、と僕は泣いた。
そんな僕にストップをかけてくれたのはもちろんお母さんだった。
ずっと僕が無理をしていたのをお母さんは知ってくれていた。
「加那、お父さんのとこ、行く?」
急にそんなことを言われて、僕は驚いた。
お父さんはここから離れた新潟に住んでいる。
それに仕事だってあるはずだった。
「お父さんね、お休み一ヶ月取るんだって。
加那と海で遊びたいって言ってるの」
海で遊ぶ、それはなかなか魅力的なワードだった。僕は海で遊んだことがなかった。
海は広くて大きいのだと歌もあるくらいだし、きっとすごい所なのだと思っていた。
「行ってもいいの?幼稚園は?」
「大丈夫。加那はこれから夏休みだよ」
そういえばそうなのだった。
僕はしばらく休んでいて季節が夏になっていたのに気が付いていなかった。
「じゃあ行っていいの?」
お母さんは頷いてくれた。
海で遊びたい、それにお父さんも一緒だ。
次の日、僕は迎えに来たお父さんと一緒に新潟に向かったのだった。
新潟はとても遠かった。
お父さんが運転するワゴン車はお母さんが好きなオレンジ色だ。
車はグイグイ前に進む。高速道路に乗ってからは更にスピードを上げたから少し怖かったのを覚えている。
「加那、トイレは早くな」
「はーい」
道中、僕とお父さんはしりとりをして遊んだ。
でもやっぱり大人のお父さんにはどうやっても敵わなくて、僕は何度も「もう一回!」って言った。
いよいよ高速道路を降りる段になって、僕はドキドキしてきていた。
「お父さん、もうニイガタに着いたの?」
恐る恐る聞いたらお父さんは笑った。
「うん、着いたよ。海を見に行こうか」
「うん…!」
海ってどんな感じなんだろうって僕はずっと考えていた。テレビに映る海はなんだか小さくて、どこが大きいのかさっぱりわからなかった。ちょっと大きな水たまりにくらいしか思っていなかった。
「加那、海だよ」
「わぁ…!!」
眼の前いっぱいに海が広がっている。
僕は驚いていた。
こんなに大きいだなんて思わなかった。
「おっきいね!」
「加那、明日は釣りに行くか!」
「釣り行く!!」
それから毎日僕は、お父さんと色々なことをして遊んだ。
海で浮輪で遊んだり、砂浜で沢山砂遊びもした。
これは忘れられない大切な思い出だ。
僕の宝物の一つだ。
そして、僕は小学生になった。
慣れない環境に僕はすぐ具合が悪くなった。
お母さんから離れて一人でいるのにとても勇気が要った。お友達らしいお友達もいなかったし、毎日不安で仕方がなかった。
先生は優しかったけど、僕はなかなか心を許せなかった。
でも幼稚園に行けないと、小学校に通えないのだと思い込んでいて、頑張って毎日通っていた。
でもそんなある日、ついに限界が来てしまった。
毎朝、体がだるくて熱が出てしまうのだ。
幼稚園に行かなきゃいけないのに、と僕は泣いた。
そんな僕にストップをかけてくれたのはもちろんお母さんだった。
ずっと僕が無理をしていたのをお母さんは知ってくれていた。
「加那、お父さんのとこ、行く?」
急にそんなことを言われて、僕は驚いた。
お父さんはここから離れた新潟に住んでいる。
それに仕事だってあるはずだった。
「お父さんね、お休み一ヶ月取るんだって。
加那と海で遊びたいって言ってるの」
海で遊ぶ、それはなかなか魅力的なワードだった。僕は海で遊んだことがなかった。
海は広くて大きいのだと歌もあるくらいだし、きっとすごい所なのだと思っていた。
「行ってもいいの?幼稚園は?」
「大丈夫。加那はこれから夏休みだよ」
そういえばそうなのだった。
僕はしばらく休んでいて季節が夏になっていたのに気が付いていなかった。
「じゃあ行っていいの?」
お母さんは頷いてくれた。
海で遊びたい、それにお父さんも一緒だ。
次の日、僕は迎えに来たお父さんと一緒に新潟に向かったのだった。
新潟はとても遠かった。
お父さんが運転するワゴン車はお母さんが好きなオレンジ色だ。
車はグイグイ前に進む。高速道路に乗ってからは更にスピードを上げたから少し怖かったのを覚えている。
「加那、トイレは早くな」
「はーい」
道中、僕とお父さんはしりとりをして遊んだ。
でもやっぱり大人のお父さんにはどうやっても敵わなくて、僕は何度も「もう一回!」って言った。
いよいよ高速道路を降りる段になって、僕はドキドキしてきていた。
「お父さん、もうニイガタに着いたの?」
恐る恐る聞いたらお父さんは笑った。
「うん、着いたよ。海を見に行こうか」
「うん…!」
海ってどんな感じなんだろうって僕はずっと考えていた。テレビに映る海はなんだか小さくて、どこが大きいのかさっぱりわからなかった。ちょっと大きな水たまりにくらいしか思っていなかった。
「加那、海だよ」
「わぁ…!!」
眼の前いっぱいに海が広がっている。
僕は驚いていた。
こんなに大きいだなんて思わなかった。
「おっきいね!」
「加那、明日は釣りに行くか!」
「釣り行く!!」
それから毎日僕は、お父さんと色々なことをして遊んだ。
海で浮輪で遊んだり、砂浜で沢山砂遊びもした。
これは忘れられない大切な思い出だ。
僕の宝物の一つだ。
そして、僕は小学生になった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました
ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。
愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。
*****************
「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。
※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。
※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。
評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。
※小説家になろう様でも公開中です。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
【完結】運命さんこんにちは、さようなら
ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。
とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。
==========
完結しました。ありがとうございました。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
王道にはしたくないので
八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉
幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。
これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる