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四歳。僕は三歳から幼稚園に通うようになっていた。
慣れない環境に僕はすぐ具合が悪くなった。
お母さんから離れて一人でいるのにとても勇気が要った。お友達らしいお友達もいなかったし、毎日不安で仕方がなかった。
先生は優しかったけど、僕はなかなか心を許せなかった。

でも幼稚園に行けないと、小学校に通えないのだと思い込んでいて、頑張って毎日通っていた。
でもそんなある日、ついに限界が来てしまった。

毎朝、体がだるくて熱が出てしまうのだ。
幼稚園に行かなきゃいけないのに、と僕は泣いた。
そんな僕にストップをかけてくれたのはもちろんお母さんだった。
ずっと僕が無理をしていたのをお母さんは知ってくれていた。

「加那、お父さんのとこ、行く?」

急にそんなことを言われて、僕は驚いた。
お父さんはここから離れた新潟に住んでいる。
それに仕事だってあるはずだった。

「お父さんね、お休み一ヶ月取るんだって。
加那と海で遊びたいって言ってるの」

海で遊ぶ、それはなかなか魅力的なワードだった。僕は海で遊んだことがなかった。
海は広くて大きいのだと歌もあるくらいだし、きっとすごい所なのだと思っていた。

「行ってもいいの?幼稚園は?」

「大丈夫。加那はこれから夏休みだよ」

そういえばそうなのだった。
僕はしばらく休んでいて季節が夏になっていたのに気が付いていなかった。

「じゃあ行っていいの?」

お母さんは頷いてくれた。

海で遊びたい、それにお父さんも一緒だ。
次の日、僕は迎えに来たお父さんと一緒に新潟に向かったのだった。

新潟はとても遠かった。
お父さんが運転するワゴン車はお母さんが好きなオレンジ色だ。
車はグイグイ前に進む。高速道路に乗ってからは更にスピードを上げたから少し怖かったのを覚えている。

「加那、トイレは早くな」

「はーい」

道中、僕とお父さんはしりとりをして遊んだ。
でもやっぱり大人のお父さんにはどうやっても敵わなくて、僕は何度も「もう一回!」って言った。

いよいよ高速道路を降りる段になって、僕はドキドキしてきていた。

「お父さん、もうニイガタに着いたの?」

恐る恐る聞いたらお父さんは笑った。

「うん、着いたよ。海を見に行こうか」

「うん…!」

海ってどんな感じなんだろうって僕はずっと考えていた。テレビに映る海はなんだか小さくて、どこが大きいのかさっぱりわからなかった。ちょっと大きな水たまりにくらいしか思っていなかった。

「加那、海だよ」

「わぁ…!!」

眼の前いっぱいに海が広がっている。
僕は驚いていた。
こんなに大きいだなんて思わなかった。

「おっきいね!」

「加那、明日は釣りに行くか!」

「釣り行く!!」

それから毎日僕は、お父さんと色々なことをして遊んだ。
海で浮輪で遊んだり、砂浜で沢山砂遊びもした。

これは忘れられない大切な思い出だ。
僕の宝物の一つだ。
そして、僕は小学生になった。
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