いちゃらぶSS

はやしかわともえ

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花嫁さんは美少年?

イヴとお誕生日③

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次の日、レイラは明け方に起きて朝食を作っていた。今日は昼間にみんなでやりたいことがある。
それに子供たちのおやつに自分の得意なクッキーを沢山焼いてあげたかった。

「おはようございます。レイラさん」

ラウがもう着替えている。
出かける前にイヴを診てくれるつもりなのだろう。

「おはようこざいます。もう少ししたらイヴも起きてきますから。先にホットミルクはいかがですか?」

「頂きます」

ラウは甘党だ。ホットミルクには砂糖を入れるのを忘れない。
レイラが彼の前にホットミルクを置くとラウは嬉しそうに笑った。

「レイラさん、毎日ありがとう」

ぎゅ、と手を優しく握られてレイラはどきりとする。青い目に射抜かれてレイラは思わず視線を外した。

「ら、ラウ様の為ですから」

なんとかそう返す。

「れいらぁーらうー、おはよー」

イヴが目を擦りながらトテトテ歩いてくる。
まだ眠たいのか彼女は少しふらついている。
レイラは慌てて彼女を抱き上げて椅子に座らせてやった。とにかく今はラウから離れたい。

「おはよう、イヴ。ホットミルク飲むか?」

「のむー」

レイラは台所に戻り、ホットミルクの用意をした。戻るとイヴがラウと何やら話をしている。
診察をしているのだろうか。

「うん、そうー」

レイラにはイヴが言った、ここしか聞き取れなかった。
聞き返そうと思い、ラウを見つめると彼がニッコリ笑う。

「レイラさん、今日はイヴさんと出掛けても?」

「え、構わないですけど、大丈夫ですか?」

仕事の邪魔になっては困る。
レイラはそう思ったのだが、ラウは笑顔のままこう言った。

「私はこう見えて子供の扱いには慣れているのですよ」

確かにラウはずっと、幼かったトウマを育ててきている。
それに医師として子供を診てきた経験もある。
イヴを預けるにはベストな相手だ。

「わかりました。イヴ、ラウ様の言う事をちゃんと聞くんだぞ?」

「はあーい」

イヴはすっかり目が覚めたらしい。
甘いホットミルクをふうふうと息を吹きかけながら飲んでいた。
もうそろそろトウマも起きてくる頃だろうか。

「おはようございます」

「おはよう、トウマ」

トウマもやってきて四人は朝食を食べ始めた。
朝はほとんどトーストか、リゾットだ。
サラダやスープを作るのも恒例である。
ソーセージや卵を炒める日もある。

「今日も美味しいですね」

ラウはいつもこうして、レイラの手料理を喜んで食べてくれる。

「おいしーね!」

「レイラ様のご飯、俺も好き」

子供たちにも割と好評なようだ。
レイラはホッとした。

「トウマ。私は今日イヴさんと出掛ける。
すまないが家のことは頼んだぞ」

「わかった、大丈夫だよ」

トウマがレイラをちらり、と見上げた。
レイラも笑い返す。
はじめは無表情な子だと思っていたが、トウマは真っ直ぐな優しい少年だった。

「行ってきます」

ラウがイヴを馬に乗せて走り出したのを見送る。

「レイラ様、今日は何をしますか?」

もう既に洗濯も掃除も済ませている。
それでも時間が余ったので、薪割りもしたくらいだ。

「うん、トウマに作ってもらいたいものがあるんだ」

「作ってもらいたいもの?」


トウマが首を傾げる。
レイラは綺麗な色画用紙を数枚取り出した。
この間、街へ繰り出した時に買っておいたのだ。

「もうすぐトウマは誕生日だろう?
11歳になるんだよな」

トウマが驚いたような顔をしている。

「だから、そのパーティ用の飾りを作ろうか」

本当なら、イヴにも手伝ってもらいたかったが、最近トウマと二人で話せていない。
レイラはトウマから直接話を聞きたかった。
彼が必要以上に我慢していないか知りたかった。

「俺、毎年兄さんが誕生日を祝ってくれて。
でもパーティなんて」

トウマが急にオロオロし始めてレイラは彼を抱きしめた。

「今年はみんなでお祝いしよう」

「はい」

それから二人は飾りを作り始めた。
レイラはそんなに器用な方ではない。
一方トウマは綺麗に飾りを作り上げていく。

「トウマはすごいな」

そう褒めるとトウマは顔を赤らめた。

「今日イヴはなんで兄さんと?」

それからお昼を食べていると、ふとトウマにこう尋ねられた。

「いや、俺にもわからないんだ。
イヴのことだから大丈夫だとは思うんだけど」

トウマが真面目な顔になる。

「俺、この前買ったチョコ、一つイヴに分けてやろうと思ったんです。二つ買ったから」

レイラは黙って先を促した。

「でもイヴ。受け取ってくれなくて」

「そんなことがあったのか」

子供同士のやりとりまでは把握していなかった。普段のイヴであれば喜んで受け取るはずだ。レイラにはなんとなく答えが分かったような気がした。
きっと今日出掛けたことも関係している。

「レイラ様、イヴは俺が嫌いになったとか?」

「それは絶対ないから安心するんだ」

トウマが驚いている。
きっとイヴは。

レイラは立ち上がった。
イヴがそのつもりならこちらも全力を注がなければならない。

「トウマ、飾りを作ろう。
最高の誕生日パーティをするために」

トウマが頷いた。
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