47 / 55
花嫁さんは美少年?
イヴとお誕生日③
しおりを挟む
次の日、レイラは明け方に起きて朝食を作っていた。今日は昼間にみんなでやりたいことがある。
それに子供たちのおやつに自分の得意なクッキーを沢山焼いてあげたかった。
「おはようございます。レイラさん」
ラウがもう着替えている。
出かける前にイヴを診てくれるつもりなのだろう。
「おはようこざいます。もう少ししたらイヴも起きてきますから。先にホットミルクはいかがですか?」
「頂きます」
ラウは甘党だ。ホットミルクには砂糖を入れるのを忘れない。
レイラが彼の前にホットミルクを置くとラウは嬉しそうに笑った。
「レイラさん、毎日ありがとう」
ぎゅ、と手を優しく握られてレイラはどきりとする。青い目に射抜かれてレイラは思わず視線を外した。
「ら、ラウ様の為ですから」
なんとかそう返す。
「れいらぁーらうー、おはよー」
イヴが目を擦りながらトテトテ歩いてくる。
まだ眠たいのか彼女は少しふらついている。
レイラは慌てて彼女を抱き上げて椅子に座らせてやった。とにかく今はラウから離れたい。
「おはよう、イヴ。ホットミルク飲むか?」
「のむー」
レイラは台所に戻り、ホットミルクの用意をした。戻るとイヴがラウと何やら話をしている。
診察をしているのだろうか。
「うん、そうー」
レイラにはイヴが言った、ここしか聞き取れなかった。
聞き返そうと思い、ラウを見つめると彼がニッコリ笑う。
「レイラさん、今日はイヴさんと出掛けても?」
「え、構わないですけど、大丈夫ですか?」
仕事の邪魔になっては困る。
レイラはそう思ったのだが、ラウは笑顔のままこう言った。
「私はこう見えて子供の扱いには慣れているのですよ」
確かにラウはずっと、幼かったトウマを育ててきている。
それに医師として子供を診てきた経験もある。
イヴを預けるにはベストな相手だ。
「わかりました。イヴ、ラウ様の言う事をちゃんと聞くんだぞ?」
「はあーい」
イヴはすっかり目が覚めたらしい。
甘いホットミルクをふうふうと息を吹きかけながら飲んでいた。
もうそろそろトウマも起きてくる頃だろうか。
「おはようございます」
「おはよう、トウマ」
トウマもやってきて四人は朝食を食べ始めた。
朝はほとんどトーストか、リゾットだ。
サラダやスープを作るのも恒例である。
ソーセージや卵を炒める日もある。
「今日も美味しいですね」
ラウはいつもこうして、レイラの手料理を喜んで食べてくれる。
「おいしーね!」
「レイラ様のご飯、俺も好き」
子供たちにも割と好評なようだ。
レイラはホッとした。
「トウマ。私は今日イヴさんと出掛ける。
すまないが家のことは頼んだぞ」
「わかった、大丈夫だよ」
トウマがレイラをちらり、と見上げた。
レイラも笑い返す。
はじめは無表情な子だと思っていたが、トウマは真っ直ぐな優しい少年だった。
「行ってきます」
ラウがイヴを馬に乗せて走り出したのを見送る。
「レイラ様、今日は何をしますか?」
もう既に洗濯も掃除も済ませている。
それでも時間が余ったので、薪割りもしたくらいだ。
「うん、トウマに作ってもらいたいものがあるんだ」
「作ってもらいたいもの?」
トウマが首を傾げる。
レイラは綺麗な色画用紙を数枚取り出した。
この間、街へ繰り出した時に買っておいたのだ。
「もうすぐトウマは誕生日だろう?
11歳になるんだよな」
トウマが驚いたような顔をしている。
「だから、そのパーティ用の飾りを作ろうか」
本当なら、イヴにも手伝ってもらいたかったが、最近トウマと二人で話せていない。
レイラはトウマから直接話を聞きたかった。
彼が必要以上に我慢していないか知りたかった。
「俺、毎年兄さんが誕生日を祝ってくれて。
でもパーティなんて」
トウマが急にオロオロし始めてレイラは彼を抱きしめた。
「今年はみんなでお祝いしよう」
「はい」
それから二人は飾りを作り始めた。
レイラはそんなに器用な方ではない。
一方トウマは綺麗に飾りを作り上げていく。
「トウマはすごいな」
そう褒めるとトウマは顔を赤らめた。
「今日イヴはなんで兄さんと?」
それからお昼を食べていると、ふとトウマにこう尋ねられた。
「いや、俺にもわからないんだ。
イヴのことだから大丈夫だとは思うんだけど」
トウマが真面目な顔になる。
「俺、この前買ったチョコ、一つイヴに分けてやろうと思ったんです。二つ買ったから」
レイラは黙って先を促した。
「でもイヴ。受け取ってくれなくて」
「そんなことがあったのか」
子供同士のやりとりまでは把握していなかった。普段のイヴであれば喜んで受け取るはずだ。レイラにはなんとなく答えが分かったような気がした。
きっと今日出掛けたことも関係している。
「レイラ様、イヴは俺が嫌いになったとか?」
「それは絶対ないから安心するんだ」
トウマが驚いている。
きっとイヴは。
レイラは立ち上がった。
イヴがそのつもりならこちらも全力を注がなければならない。
「トウマ、飾りを作ろう。
最高の誕生日パーティをするために」
トウマが頷いた。
それに子供たちのおやつに自分の得意なクッキーを沢山焼いてあげたかった。
「おはようございます。レイラさん」
ラウがもう着替えている。
出かける前にイヴを診てくれるつもりなのだろう。
「おはようこざいます。もう少ししたらイヴも起きてきますから。先にホットミルクはいかがですか?」
「頂きます」
ラウは甘党だ。ホットミルクには砂糖を入れるのを忘れない。
レイラが彼の前にホットミルクを置くとラウは嬉しそうに笑った。
「レイラさん、毎日ありがとう」
ぎゅ、と手を優しく握られてレイラはどきりとする。青い目に射抜かれてレイラは思わず視線を外した。
「ら、ラウ様の為ですから」
なんとかそう返す。
「れいらぁーらうー、おはよー」
イヴが目を擦りながらトテトテ歩いてくる。
まだ眠たいのか彼女は少しふらついている。
レイラは慌てて彼女を抱き上げて椅子に座らせてやった。とにかく今はラウから離れたい。
「おはよう、イヴ。ホットミルク飲むか?」
「のむー」
レイラは台所に戻り、ホットミルクの用意をした。戻るとイヴがラウと何やら話をしている。
診察をしているのだろうか。
「うん、そうー」
レイラにはイヴが言った、ここしか聞き取れなかった。
聞き返そうと思い、ラウを見つめると彼がニッコリ笑う。
「レイラさん、今日はイヴさんと出掛けても?」
「え、構わないですけど、大丈夫ですか?」
仕事の邪魔になっては困る。
レイラはそう思ったのだが、ラウは笑顔のままこう言った。
「私はこう見えて子供の扱いには慣れているのですよ」
確かにラウはずっと、幼かったトウマを育ててきている。
それに医師として子供を診てきた経験もある。
イヴを預けるにはベストな相手だ。
「わかりました。イヴ、ラウ様の言う事をちゃんと聞くんだぞ?」
「はあーい」
イヴはすっかり目が覚めたらしい。
甘いホットミルクをふうふうと息を吹きかけながら飲んでいた。
もうそろそろトウマも起きてくる頃だろうか。
「おはようございます」
「おはよう、トウマ」
トウマもやってきて四人は朝食を食べ始めた。
朝はほとんどトーストか、リゾットだ。
サラダやスープを作るのも恒例である。
ソーセージや卵を炒める日もある。
「今日も美味しいですね」
ラウはいつもこうして、レイラの手料理を喜んで食べてくれる。
「おいしーね!」
「レイラ様のご飯、俺も好き」
子供たちにも割と好評なようだ。
レイラはホッとした。
「トウマ。私は今日イヴさんと出掛ける。
すまないが家のことは頼んだぞ」
「わかった、大丈夫だよ」
トウマがレイラをちらり、と見上げた。
レイラも笑い返す。
はじめは無表情な子だと思っていたが、トウマは真っ直ぐな優しい少年だった。
「行ってきます」
ラウがイヴを馬に乗せて走り出したのを見送る。
「レイラ様、今日は何をしますか?」
もう既に洗濯も掃除も済ませている。
それでも時間が余ったので、薪割りもしたくらいだ。
「うん、トウマに作ってもらいたいものがあるんだ」
「作ってもらいたいもの?」
トウマが首を傾げる。
レイラは綺麗な色画用紙を数枚取り出した。
この間、街へ繰り出した時に買っておいたのだ。
「もうすぐトウマは誕生日だろう?
11歳になるんだよな」
トウマが驚いたような顔をしている。
「だから、そのパーティ用の飾りを作ろうか」
本当なら、イヴにも手伝ってもらいたかったが、最近トウマと二人で話せていない。
レイラはトウマから直接話を聞きたかった。
彼が必要以上に我慢していないか知りたかった。
「俺、毎年兄さんが誕生日を祝ってくれて。
でもパーティなんて」
トウマが急にオロオロし始めてレイラは彼を抱きしめた。
「今年はみんなでお祝いしよう」
「はい」
それから二人は飾りを作り始めた。
レイラはそんなに器用な方ではない。
一方トウマは綺麗に飾りを作り上げていく。
「トウマはすごいな」
そう褒めるとトウマは顔を赤らめた。
「今日イヴはなんで兄さんと?」
それからお昼を食べていると、ふとトウマにこう尋ねられた。
「いや、俺にもわからないんだ。
イヴのことだから大丈夫だとは思うんだけど」
トウマが真面目な顔になる。
「俺、この前買ったチョコ、一つイヴに分けてやろうと思ったんです。二つ買ったから」
レイラは黙って先を促した。
「でもイヴ。受け取ってくれなくて」
「そんなことがあったのか」
子供同士のやりとりまでは把握していなかった。普段のイヴであれば喜んで受け取るはずだ。レイラにはなんとなく答えが分かったような気がした。
きっと今日出掛けたことも関係している。
「レイラ様、イヴは俺が嫌いになったとか?」
「それは絶対ないから安心するんだ」
トウマが驚いている。
きっとイヴは。
レイラは立ち上がった。
イヴがそのつもりならこちらも全力を注がなければならない。
「トウマ、飾りを作ろう。
最高の誕生日パーティをするために」
トウマが頷いた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
【完結・BL】DT騎士団員は、騎士団長様に告白したい!【騎士団員×騎士団長】
彩華
BL
とある平和な国。「ある日」を境に、この国を守る騎士団へ入団することを夢見ていたトーマは、無事にその夢を叶えた。それもこれも、あの日の初恋。騎士団長・アランに一目惚れしたため。年若いトーマの恋心は、日々募っていくばかり。自身の気持ちを、アランに伝えるべきか? そんな悶々とする騎士団員の話。
「好きだって言えるなら、言いたい。いや、でもやっぱ、言わなくても良いな……。ああ゛―!でも、アラン様が好きだって言いてぇよー!!」
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
解放
papiko
BL
過去にCommandされ、名前を忘れた白銀の髪を持つ青年。年齢も分からず、前のDomさえ分からない。瞳は暗く影が落ち、黒ずんで何も映さない。
偶々、甘やかしたいタイプのアルベルに拾われ名前を貰った白銀の青年、ロイハルト。
アルベルが何十という数のDomに頼み込んで、ロイハルトをDropから救い出そうとした。
――――そして、アルベル苦渋の決断の末、選ばれたアルベルの唯一無二の親友ヴァイス。
これは、白銀の青年が解放される話。
〘本編完結済み〙
※ダイナミクスの設定を理解してる上で進めています。一応、説明じみたものはあります。
※ダイナミクスのオリジナル要素あります。
※3Pのつもりですが全くやってません。
※番外編、書けたら書こうと思います。
【リクエストがあれば執筆します。】
十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います
塔原 槇
BL
会社員、兎山俊太郎(とやま しゅんたろう)はある日、「やっぱり女の子が好きだわ」と言われ別れを切り出される。彼氏の売れないバンドマン、熊井雄介(くまい ゆうすけ)は人気上昇中の清純派アイドル、桃澤久留美(ももざわ くるみ)と付き合うのだと言う。ショックの中で俊太郎が出社すると、幼馴染の有栖川麗音(ありすがわ れおん)が中途採用で入社してきて……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる