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気になるあのこは宇宙人!?SS
走れカナタ3
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マラソン大会当日は快晴だった。
だんだん季節は、夏から秋に移り変わり、過ごしやすくなっている。
気温もちょうどいい。
まさにマラソン日和だ。
「カナタくん!倉沢くん!こっち!」
ゆづるが向こうから手を振っている。カナタも手を振り返した。
「おはよー!ゆづくん」
「おはよう」
ゆづるは既に参加の受付を済ませておいてくれたらしかった。
ゼッケンを手渡してくれる。
「花柳、ありがとな」
「全然」
ゼッケンを付けて、カナタたちはスタート地点についた。
この大会には有名なプロも走りにくるらしい。
それを目当てに見に来る人もいるのだろう。なかなか賑やかだ。
「カナタ、自分のペースで来いよ」
「完走しようね!」
二人に言われてカナタは頷いた。愛莉からも応援メールが届いていた。
開会式も終わり、スタートの合図が鳴る。
カナタは走り出した。
走り出した序盤、カナタは早速千尋とゆづるを見失った。
それだけ大勢の人が走っているのだ。
カナタはペースを崩されないよう、確かめるように走った。
前より息が切れなくなっている。
(走るの気持ちいいかも)
そんなことを考えるゆとりもあった。
(愛莉ちゃんのお願いと僕たちのお願い、神様に聞いてもらわなくちゃ)
一歩ずつ着実に前へ踏み出す。
カナタには絶対叶えてもらいたい願いがあった。
それは、(ずっと千尋と仲良くいること)である。
どちらかといえば、願いというより誓いだ。
カナタは小さく、よし、と呟いて前を見た。
気が付くと5キロ地点にいた。
時計を見ると、普段とタイムもそこまで変わらないようだ。
マラソンのペース配分はなかなか難しい。
周りを走る人も少なくなってきている。
自分のペースが遅いからかもしれない、とカナタは不安になったが、それをなんとか振り払った。目指すのは完走のみだ。
(よし、残り10)
コースは大きく右に回っている。カナタはなるべく小さく回れるよう走った。
だんだん走るのが体力的にもきつくなってきている。
どうやら道も坂になっているようだ。
(わぁ、結構登るなー)
傾斜はゆるやかだが、走るとなると話は別だ。
カナタは呼吸を整える。
すぐ向こう側に10キロという看板を見つける。
(よし、あと5)
自然とペースが上がりそうになるが、カナタは抑えた。
無理なく完走するためだ。
坂道を苦しみながら走る。
(きっつ)
それでもカナタは足を止めなかった。
大きな赤い鳥居が見えてくる。
ゴールは間近なようだ。
「カナタくん!もうちょっとだよ!」
ふと横を見るとコース沿いにゆづるがみえた。そばには千尋もいる。
カナタは手を振った。
「カナタ!頑張れ!」
(二人共速い!)
カナタはようやくゴールのアーチをくぐり抜けた。
「カナタ!」
千尋とゆづるが駆け寄ってくる。二人にもみくちゃにされる。
「やったね!完走だよ!」
「うん、よかった」
「頑張ったな、カナタ」
「うん!」
(愛莉ちゃんのオーディションが上手く行きますように、僕たちのことも見守ってください!)
カナタはぎゅっと力を込めて祈っていた。
千尋も隣で手を合わせている。
あまり神様に頼る、というイメージのない千尋だ。
カナタは不思議だな、とその時思った。なんだか千尋らしくない。
(千尋、なにをお願いしたんだろう?)
「カナタくん!」
振り返るとゆづるがいた。
「ゆづくん?どうしたの?」
「こっち」
ゆづるに腕を引っ張られる。
ついていくと、展望台のような場所にでた。
もう日が沈みかかっている。
真っ赤な夕日が差し込んでいる。
(わあ、綺麗)
「カナタ」
声をかけられて振り返ると、千尋がいた。
いきなり抱き締められる。
「ち、千尋?」
「お前、神様にお願いするって言ったよな?」
「うん」
「オレもお前にお願いがあるんだよ」
千尋はカナタの前に跪いてみせた。そして手の甲にキスをしてみせる。カナタは自分の鼓動が跳ね上がるのを実感した。
「オレと結婚してください」
そう言って千尋は指輪をカナタの左手の薬指にはめた。
「加那、返事は?」
カナタはびくり、と震えた。
答えならもう決まっている。
「はい」
拍手が起こる。それはゆづる一人のものだったが、カナタは嬉しかった。
改めて指輪を見つめる。
どうやら夢ではないらしい。
「千尋、ありがとう」
「ん」
カナタもだんだん照れくさくなってきた。
ちょい、と肘で千尋を突いてみる。
千尋もやり返してきた。
思わず笑ってしまう。
「千尋、よろしく。改めて」
「おう!」
おわり
だんだん季節は、夏から秋に移り変わり、過ごしやすくなっている。
気温もちょうどいい。
まさにマラソン日和だ。
「カナタくん!倉沢くん!こっち!」
ゆづるが向こうから手を振っている。カナタも手を振り返した。
「おはよー!ゆづくん」
「おはよう」
ゆづるは既に参加の受付を済ませておいてくれたらしかった。
ゼッケンを手渡してくれる。
「花柳、ありがとな」
「全然」
ゼッケンを付けて、カナタたちはスタート地点についた。
この大会には有名なプロも走りにくるらしい。
それを目当てに見に来る人もいるのだろう。なかなか賑やかだ。
「カナタ、自分のペースで来いよ」
「完走しようね!」
二人に言われてカナタは頷いた。愛莉からも応援メールが届いていた。
開会式も終わり、スタートの合図が鳴る。
カナタは走り出した。
走り出した序盤、カナタは早速千尋とゆづるを見失った。
それだけ大勢の人が走っているのだ。
カナタはペースを崩されないよう、確かめるように走った。
前より息が切れなくなっている。
(走るの気持ちいいかも)
そんなことを考えるゆとりもあった。
(愛莉ちゃんのお願いと僕たちのお願い、神様に聞いてもらわなくちゃ)
一歩ずつ着実に前へ踏み出す。
カナタには絶対叶えてもらいたい願いがあった。
それは、(ずっと千尋と仲良くいること)である。
どちらかといえば、願いというより誓いだ。
カナタは小さく、よし、と呟いて前を見た。
気が付くと5キロ地点にいた。
時計を見ると、普段とタイムもそこまで変わらないようだ。
マラソンのペース配分はなかなか難しい。
周りを走る人も少なくなってきている。
自分のペースが遅いからかもしれない、とカナタは不安になったが、それをなんとか振り払った。目指すのは完走のみだ。
(よし、残り10)
コースは大きく右に回っている。カナタはなるべく小さく回れるよう走った。
だんだん走るのが体力的にもきつくなってきている。
どうやら道も坂になっているようだ。
(わぁ、結構登るなー)
傾斜はゆるやかだが、走るとなると話は別だ。
カナタは呼吸を整える。
すぐ向こう側に10キロという看板を見つける。
(よし、あと5)
自然とペースが上がりそうになるが、カナタは抑えた。
無理なく完走するためだ。
坂道を苦しみながら走る。
(きっつ)
それでもカナタは足を止めなかった。
大きな赤い鳥居が見えてくる。
ゴールは間近なようだ。
「カナタくん!もうちょっとだよ!」
ふと横を見るとコース沿いにゆづるがみえた。そばには千尋もいる。
カナタは手を振った。
「カナタ!頑張れ!」
(二人共速い!)
カナタはようやくゴールのアーチをくぐり抜けた。
「カナタ!」
千尋とゆづるが駆け寄ってくる。二人にもみくちゃにされる。
「やったね!完走だよ!」
「うん、よかった」
「頑張ったな、カナタ」
「うん!」
(愛莉ちゃんのオーディションが上手く行きますように、僕たちのことも見守ってください!)
カナタはぎゅっと力を込めて祈っていた。
千尋も隣で手を合わせている。
あまり神様に頼る、というイメージのない千尋だ。
カナタは不思議だな、とその時思った。なんだか千尋らしくない。
(千尋、なにをお願いしたんだろう?)
「カナタくん!」
振り返るとゆづるがいた。
「ゆづくん?どうしたの?」
「こっち」
ゆづるに腕を引っ張られる。
ついていくと、展望台のような場所にでた。
もう日が沈みかかっている。
真っ赤な夕日が差し込んでいる。
(わあ、綺麗)
「カナタ」
声をかけられて振り返ると、千尋がいた。
いきなり抱き締められる。
「ち、千尋?」
「お前、神様にお願いするって言ったよな?」
「うん」
「オレもお前にお願いがあるんだよ」
千尋はカナタの前に跪いてみせた。そして手の甲にキスをしてみせる。カナタは自分の鼓動が跳ね上がるのを実感した。
「オレと結婚してください」
そう言って千尋は指輪をカナタの左手の薬指にはめた。
「加那、返事は?」
カナタはびくり、と震えた。
答えならもう決まっている。
「はい」
拍手が起こる。それはゆづる一人のものだったが、カナタは嬉しかった。
改めて指輪を見つめる。
どうやら夢ではないらしい。
「千尋、ありがとう」
「ん」
カナタもだんだん照れくさくなってきた。
ちょい、と肘で千尋を突いてみる。
千尋もやり返してきた。
思わず笑ってしまう。
「千尋、よろしく。改めて」
「おう!」
おわり
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