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反省会・宵について
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「ここのキレ、さすがだわ」
雪先輩が呟いて皆が頷く。あの日の決勝戦は本当に接戦でお互いにガードと攻撃の応酬だった。
この格闘ゲームには必殺技ゲージというものがある。体力を削られれば削られるほど貯まるもので、勝負を一発逆転できる可能性を秘めている。
あの試合の終盤、俺の使っていたキャラクターは残りの体力がぎりぎりで防戦を強いられていた。
でも相手の選手が、このゲームが得意であることは知っていたから、こういう試合展開になるだろうなと思っていた。
その為に雪先輩達と何度も練習した。
俺の使っているキャラが中距離攻撃を得意としていたのも良かった。
相手の攻撃が止んだ一瞬、俺は必殺技のコマンドを入れた。
本当に上手くいったなって思う。
だから今回の大会で勝てたのは運の要素が大きい。
さっきから雪先輩達はそのシーンを何度も見ている。
「あるはやっぱすげーわ」
と雪先輩が呟く。
「おれももっと練習するぞー!」
玲央が鼻息荒く言う。杏もそれに頷いている。
皆がこうして俺を受け入れてくれて、とても嬉しいんだ。もっと頑張ろうって思える。
「ある、また賞金は寄付したのか?」
「うん。いっぱいお米が買えるって喜んでた」
「そっか…」
どうしたんだろう?雪先輩、何か言いたげだな。
「でもさー、あるー!なんで昨日ここに来れなかったんだよー!」
玲央がそう言うのは最もだ。いつも大会当日の夜は皆で反省会をするのが通例だし。
俺は皆に隼人さんと宵さんについて話した。
「え…宵って大手アミューズメント企業の若手社長じゃん?!」
杏が驚いたように言う。そんなに有名な人だったんだ。
俺、知らないことばっかりだな。
「そんな人にファンになってもらえるなんて、あるすごいなー!」
「俺もびっくりだよ」
「あ…あのさ」
雪先輩、やっぱりさっきから様子がおかしくないか?
「なんだよー!せつー!
言いたいことがあるならはっきり言えよな!」
「そうだよ、雪先輩。俺達に隠し事なんて…」
玲央と杏が雪先輩に詰め寄る。
「あ、あのさ、俺達にゲーム企画の話が来てて。
その…宵さんからなんだけど」
えー、それってすごいことじゃないか!
「いつ来てたんだよー!」
玲央がぷんすこしているな。
気持ちは分かる。
「昨日の真夜中だよ!
いきなりメールが来たんだ!!」
「ん?メール?」
杏が首を傾げている。あれ?もしかして。
「雪先輩、もしかして宵さんと繋がりあるんすか?」
杏の言葉に雪先輩は下を向いたまま動かなくなってしまった。
「せつー!どうしたんだよー!」
玲央が雪先輩の肩をぽかぽか叩いている。
痛くはなさそうだ。
「…いるんだ…」
「もっと大きな声で!せーのっ!」
玲央、容赦ないな。
「あぁもぉ!!俺は宵さんと付き合ってんだよ!!」
「えー!!!」
俺達はみんなびっくりした。そりゃそうだよな。でも二人が並んでいる所を想像すると、なんだかしっくりくる。
「宵さんがある推しなのも知っていたよ。
ほらさ、あるは賞金を児童施設に寄付してるだろう?
それを知って急に思い付いたーって…」
それは雪先輩も大変だったんじゃないか?
「じゃあ、また詳しく決めていく感じかー?」
「あぁ。今日の夕方に打ち合わせを予定してる。あるも一緒に来てくれないか?
宵さん、お前のサインがどうしても欲しいらしい。
真夜中に電話で直接頼むなんて言うから止めるの大変だったんだ」
「雪先輩、ありがとう。打ち合わせ了解です」
雪先輩がホッとしたように笑う。
「じゃ、反省会続けような」
「せつは、むりやりちゅーとかされてそうだなー。大丈夫かー?」
「ぶふっw確かに。可愛いw」
玲央と杏がからかうように言う。
「お前ら!真剣にやれ!」
雪先輩、顔真っ赤だな。
同性愛の偏見はまだある。
それが少しでもなくなればいいよな。
俺は、隼人さんの顔を思い出していた。
また彼に会えたらいいな。
雪先輩が呟いて皆が頷く。あの日の決勝戦は本当に接戦でお互いにガードと攻撃の応酬だった。
この格闘ゲームには必殺技ゲージというものがある。体力を削られれば削られるほど貯まるもので、勝負を一発逆転できる可能性を秘めている。
あの試合の終盤、俺の使っていたキャラクターは残りの体力がぎりぎりで防戦を強いられていた。
でも相手の選手が、このゲームが得意であることは知っていたから、こういう試合展開になるだろうなと思っていた。
その為に雪先輩達と何度も練習した。
俺の使っているキャラが中距離攻撃を得意としていたのも良かった。
相手の攻撃が止んだ一瞬、俺は必殺技のコマンドを入れた。
本当に上手くいったなって思う。
だから今回の大会で勝てたのは運の要素が大きい。
さっきから雪先輩達はそのシーンを何度も見ている。
「あるはやっぱすげーわ」
と雪先輩が呟く。
「おれももっと練習するぞー!」
玲央が鼻息荒く言う。杏もそれに頷いている。
皆がこうして俺を受け入れてくれて、とても嬉しいんだ。もっと頑張ろうって思える。
「ある、また賞金は寄付したのか?」
「うん。いっぱいお米が買えるって喜んでた」
「そっか…」
どうしたんだろう?雪先輩、何か言いたげだな。
「でもさー、あるー!なんで昨日ここに来れなかったんだよー!」
玲央がそう言うのは最もだ。いつも大会当日の夜は皆で反省会をするのが通例だし。
俺は皆に隼人さんと宵さんについて話した。
「え…宵って大手アミューズメント企業の若手社長じゃん?!」
杏が驚いたように言う。そんなに有名な人だったんだ。
俺、知らないことばっかりだな。
「そんな人にファンになってもらえるなんて、あるすごいなー!」
「俺もびっくりだよ」
「あ…あのさ」
雪先輩、やっぱりさっきから様子がおかしくないか?
「なんだよー!せつー!
言いたいことがあるならはっきり言えよな!」
「そうだよ、雪先輩。俺達に隠し事なんて…」
玲央と杏が雪先輩に詰め寄る。
「あ、あのさ、俺達にゲーム企画の話が来てて。
その…宵さんからなんだけど」
えー、それってすごいことじゃないか!
「いつ来てたんだよー!」
玲央がぷんすこしているな。
気持ちは分かる。
「昨日の真夜中だよ!
いきなりメールが来たんだ!!」
「ん?メール?」
杏が首を傾げている。あれ?もしかして。
「雪先輩、もしかして宵さんと繋がりあるんすか?」
杏の言葉に雪先輩は下を向いたまま動かなくなってしまった。
「せつー!どうしたんだよー!」
玲央が雪先輩の肩をぽかぽか叩いている。
痛くはなさそうだ。
「…いるんだ…」
「もっと大きな声で!せーのっ!」
玲央、容赦ないな。
「あぁもぉ!!俺は宵さんと付き合ってんだよ!!」
「えー!!!」
俺達はみんなびっくりした。そりゃそうだよな。でも二人が並んでいる所を想像すると、なんだかしっくりくる。
「宵さんがある推しなのも知っていたよ。
ほらさ、あるは賞金を児童施設に寄付してるだろう?
それを知って急に思い付いたーって…」
それは雪先輩も大変だったんじゃないか?
「じゃあ、また詳しく決めていく感じかー?」
「あぁ。今日の夕方に打ち合わせを予定してる。あるも一緒に来てくれないか?
宵さん、お前のサインがどうしても欲しいらしい。
真夜中に電話で直接頼むなんて言うから止めるの大変だったんだ」
「雪先輩、ありがとう。打ち合わせ了解です」
雪先輩がホッとしたように笑う。
「じゃ、反省会続けような」
「せつは、むりやりちゅーとかされてそうだなー。大丈夫かー?」
「ぶふっw確かに。可愛いw」
玲央と杏がからかうように言う。
「お前ら!真剣にやれ!」
雪先輩、顔真っ赤だな。
同性愛の偏見はまだある。
それが少しでもなくなればいいよな。
俺は、隼人さんの顔を思い出していた。
また彼に会えたらいいな。
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