16 / 16
6
ユウイとエポナ(グレイ×ユウイ)
しおりを挟む
「グレイ様、遅いなあ」
ユウイはずっとグレイを待っている。予め、今日は遅くなると言われていたのだ。先に眠っていいとも言われていたのだが、ユウイはグレイの顔を見て安心してから眠りたい。
「よし、持久戦なら俺にだって考えがあるぞ」
ユウイは張りきって台所に立った。夜食を持ってグレイの元に押しかける作戦である。これならグレイも受け入れてくれるだろうと、ユウイはさくさくサンドイッチを作った。熱々の野菜のスープを水筒に詰めて、ユウイは外にある厩舎に向かった。そこから騎士の詰所に繋がっているからだ。
「こんばんは、お疲れ様です!」
ユウイが詰所に入り挨拶をすると騎士たちが固まってこちらを見つめている。もちろんグレイもだ。
「ユウイさん?もう寝たんじゃ…」
「もー、そんなの寂しいじゃないですか!」
ユウイがグレイの言葉に膨れると惚気だとか、リア充爆発しろとヒソヒソと声がする。ユウイはそれを全て流してどん、と机の上にバスケットを置いた。
「お腹が空いてるとカリカリしちゃいますよ?ご飯、食べましょうよ」
ぱかり、とバスケットをユウイは開けた。騎士たちが中を見ておお、とどよめいている。
「ユウイ様の手料理が食べられるなんて最高過ぎる」
「料理長なんか、やたらユウイ様に飯作らせるんだってよ」
ぴくり、とグレイの眉が動く。
「それは本当ですか?ユウイさん」
「え、ああ本当に時々ですよ?」
「ユウイさんは小間使いではないというのに」
グレイがブツブツいいながらも席に着く。ユウイは人数分のカップに熱々の野菜スープを注いだ。体が温まるように生姜のすりおろしたものが入っている。皆がそれに口を付け、ほうと息を吐いた。
「美味いですね、ユウイ様!」
「隊長、いつもこんな美味い飯食ってるんすか?」
「まぁな」
グレイが自慢気に笑う。
「いいなあ、そりゃ宿舎の飯も美味いけど」
「じゃあいいじゃないか」
「ユウイ様が家にいるってだけで全然違うじゃないすか」
ぶううと騎士がしかめ面をする。ユウイはどうしたものかとあわあわしたが、グレイは悠然と笑った。
「ならもっと頼り甲斐のある男になれ。そしたらお前を見る目も変わるんじゃないのか?」
「…確かに隊長の言う通りだ」
「よーし、俺ももっと訓練頑張るぞ!」
おー!と騎士たちが声を上げている。
(みんないい子たちでよかった)
ユウイはホッとして笑った。
「グレイ様?今日はどうして遅くなったんですか?」
「あぁ、エポナが産気づいてるんです。そろそろ産まれるかと」
「え?!」
エポナはグレイの愛馬の一頭である。ずっとお腹が大きかった。
「ついに産まれるんですか?」
「はい。ユウイさんも見ていくといいですよ」
軽く食事を摂り、グレイについて厩舎に入った。エポナは気が立っているようだ。
「ブルル…」
「エポナ、安心して産め。大丈夫だからな」
グレイがとんとん、とエポナの背中を叩く。エポナがいきみ始めた。ユウイはただオロオロすることしか出来なかった。
「足が出た!引きずり出すぞ!」
騎士たちが迅速に子馬の足を引っ張る。ずるり、と子馬が出てきた。エポナが子馬を舐めて粘膜を拭ってやっている。
「呼吸…してるな。よく頑張ったぞ、エポナ」
よしよし、とグレイがエポナを撫でた。ユウイはやっと息を吐くことが出来た。間もなく子馬は立ち上がり、エポナの乳を吸っていた。
「すごいなぁ。やっぱり子供が産めるっていいな」
ユウイはもやもやを口にしていた。
「ユウイさん、俺は今のあなたが大好きです」
「ぐ、グレイ様…」
かあと顔が熱くなったがグレイは辞めるつもりはないらしい。真剣な顔で続ける。
「確かに子供は作れないかもしれない。でも俺たちは確かに愛し合っているでしょう?」
「は、はい!」
「あなたがあなただから俺はあなたを愛しているんですよ。ユウイさんは違いますか?」
「そんなこと…あるわけないです」
グレイに腰を抱き寄せられる。
「愛してます。ユウイさん」
「は、はい!俺も!!」
二人は笑顔でお互いを見つめ合った。
おわり
ユウイはずっとグレイを待っている。予め、今日は遅くなると言われていたのだ。先に眠っていいとも言われていたのだが、ユウイはグレイの顔を見て安心してから眠りたい。
「よし、持久戦なら俺にだって考えがあるぞ」
ユウイは張りきって台所に立った。夜食を持ってグレイの元に押しかける作戦である。これならグレイも受け入れてくれるだろうと、ユウイはさくさくサンドイッチを作った。熱々の野菜のスープを水筒に詰めて、ユウイは外にある厩舎に向かった。そこから騎士の詰所に繋がっているからだ。
「こんばんは、お疲れ様です!」
ユウイが詰所に入り挨拶をすると騎士たちが固まってこちらを見つめている。もちろんグレイもだ。
「ユウイさん?もう寝たんじゃ…」
「もー、そんなの寂しいじゃないですか!」
ユウイがグレイの言葉に膨れると惚気だとか、リア充爆発しろとヒソヒソと声がする。ユウイはそれを全て流してどん、と机の上にバスケットを置いた。
「お腹が空いてるとカリカリしちゃいますよ?ご飯、食べましょうよ」
ぱかり、とバスケットをユウイは開けた。騎士たちが中を見ておお、とどよめいている。
「ユウイ様の手料理が食べられるなんて最高過ぎる」
「料理長なんか、やたらユウイ様に飯作らせるんだってよ」
ぴくり、とグレイの眉が動く。
「それは本当ですか?ユウイさん」
「え、ああ本当に時々ですよ?」
「ユウイさんは小間使いではないというのに」
グレイがブツブツいいながらも席に着く。ユウイは人数分のカップに熱々の野菜スープを注いだ。体が温まるように生姜のすりおろしたものが入っている。皆がそれに口を付け、ほうと息を吐いた。
「美味いですね、ユウイ様!」
「隊長、いつもこんな美味い飯食ってるんすか?」
「まぁな」
グレイが自慢気に笑う。
「いいなあ、そりゃ宿舎の飯も美味いけど」
「じゃあいいじゃないか」
「ユウイ様が家にいるってだけで全然違うじゃないすか」
ぶううと騎士がしかめ面をする。ユウイはどうしたものかとあわあわしたが、グレイは悠然と笑った。
「ならもっと頼り甲斐のある男になれ。そしたらお前を見る目も変わるんじゃないのか?」
「…確かに隊長の言う通りだ」
「よーし、俺ももっと訓練頑張るぞ!」
おー!と騎士たちが声を上げている。
(みんないい子たちでよかった)
ユウイはホッとして笑った。
「グレイ様?今日はどうして遅くなったんですか?」
「あぁ、エポナが産気づいてるんです。そろそろ産まれるかと」
「え?!」
エポナはグレイの愛馬の一頭である。ずっとお腹が大きかった。
「ついに産まれるんですか?」
「はい。ユウイさんも見ていくといいですよ」
軽く食事を摂り、グレイについて厩舎に入った。エポナは気が立っているようだ。
「ブルル…」
「エポナ、安心して産め。大丈夫だからな」
グレイがとんとん、とエポナの背中を叩く。エポナがいきみ始めた。ユウイはただオロオロすることしか出来なかった。
「足が出た!引きずり出すぞ!」
騎士たちが迅速に子馬の足を引っ張る。ずるり、と子馬が出てきた。エポナが子馬を舐めて粘膜を拭ってやっている。
「呼吸…してるな。よく頑張ったぞ、エポナ」
よしよし、とグレイがエポナを撫でた。ユウイはやっと息を吐くことが出来た。間もなく子馬は立ち上がり、エポナの乳を吸っていた。
「すごいなぁ。やっぱり子供が産めるっていいな」
ユウイはもやもやを口にしていた。
「ユウイさん、俺は今のあなたが大好きです」
「ぐ、グレイ様…」
かあと顔が熱くなったがグレイは辞めるつもりはないらしい。真剣な顔で続ける。
「確かに子供は作れないかもしれない。でも俺たちは確かに愛し合っているでしょう?」
「は、はい!」
「あなたがあなただから俺はあなたを愛しているんですよ。ユウイさんは違いますか?」
「そんなこと…あるわけないです」
グレイに腰を抱き寄せられる。
「愛してます。ユウイさん」
「は、はい!俺も!!」
二人は笑顔でお互いを見つめ合った。
おわり
0
お気に入りに追加
4
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
風邪ひいた社会人がおねしょする話
こじらせた処女
BL
恋人の咲耶(さくや)が出張に行っている間、日翔(にちか)は風邪をひいてしまう。
一年前に風邪をひいたときには、咲耶にお粥を食べさせてもらったり、寝かしつけてもらったりと甘やかされたことを思い出して、寂しくなってしまう。一緒の気分を味わいたくて咲耶の部屋のベッドで寝るけれど…?
エレベーターで一緒になった男の子がやけにモジモジしているので
こじらせた処女
BL
大学生になり、一人暮らしを始めた荒井は、今日も今日とて買い物を済ませて、下宿先のエレベーターを待っていた。そこに偶然居合わせた中学生になりたての男の子。やけにソワソワしていて、我慢しているというのは明白だった。
とてつもなく短いエレベーターの移動時間に繰り広げられる、激しいおしっこダンス。果たして彼は間に合うのだろうか…
小さい頃、近所のお兄さんに赤ちゃんみたいに甘えた事がきっかけで性癖が歪んでしまって困ってる
海野
BL
小さい頃、妹の誕生で赤ちゃん返りをした事のある雄介少年。少年も大人になり青年になった。しかし一般男性の性の興味とは外れ、幼児プレイにしかときめかなくなってしまった。あの時お世話になった「近所のお兄さん」は結婚してしまったし、彼ももう赤ちゃんになれる程可愛い背格好では無い。そんなある日、職場で「お兄さん」に似た雰囲気の人を見つける。いつしか目で追う様になった彼は次第にその人を妄想の材料に使うようになる。ある日の残業中、眠ってしまった雄介は、起こしに来た人物に寝ぼけてママと言って抱きついてしまい…?
クラスの仲良かったオタクに調教と豊胸をされて好みの嫁にされたオタクに優しいギャル男
湊戸アサギリ
BL
※メス化、男の娘化、シーメール化要素があります。オタクくんと付き合ったギャル男がメスにされています。手術で豊胸した描写があります。これをBLって呼んでいいのかわからないです
いわゆるオタクに優しいギャル男の話になります。色々ご想像にお任せします。本番はありませんが下ネタ言ってますのでR15です
閲覧ありがとうございます。他の作品もよろしくお願いします
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる