14 / 16
5
尽きない飴ちゃん?②(グレイ✕ユウイ)
しおりを挟む
騎士団の訓練が終わると、騎士たちは城下町や砦の見回りに出かける。グレイはその間、執務室で騎士団に関する書類仕事をするのだ。街の見回りの報告書や、起こったトラブルについてなど、色々なものがある。グレイはふう、と息を吐いて傍らに置いてあった茶を飲んだ。すっかり冷めてしまっている。茶を淹れ直そうとグレイは立ち上がった。ふと賑やかな声がする。窓から外を眺めると、子供たちがぞろぞろ歩いている。
(ユウイさん…!)
グレイはそっとユウイを見守った。ユウイは子供たちに何かを手渡している。なんだろうとしばらく観察した結果、飴を渡しているようだと分かる。
(一体どこから取り出してるんだ。ユウイさんは手品も出来るのか…?)
そうこうしている間にもユウイは飴をどこからともなく取り出している。
「隊長、何やってんすか?」
いつの間にか騎士が一人、執務室に入ってきていたらしい。怪訝そうに聞かれて、グレイはいや、と言葉を濁した。騎士がこちらへ歩み寄ってくる。既に子供たちは見えなくなっていたので、グレイはホッとした。
「あ、そうだった。隊長、報告書なんですけど、どうやって書くんでしたっけ?」
「お前、前にも教えただろう」
「もう一度お願いしますよー」
仕方がないな、とグレイはため息を吐いたのだった。
✢✢✢
昼休み、グレイはそっと執務室を抜け出していた。もちろん行き先は保育園である。
他の騎士たちは食事の後、各々自由に過ごしているので、見咎められないように特に気を付けた。
保育園の様子を外から眺めると、子供たちはお昼寝をしているのか静かだ。
「グレイ様!」
ユウイがこちらへ駆け寄ってくる。
「なにかありましたか?」
ユウイが不安気な顔をしていたので、グレイはなんでもないと笑った。
「いえ、たまたま通りがかったものですから」
ユウイがほっと息を吐く。
「よかった。そうだ」
ユウイはまたどこからともなく飴玉を取り出した。
「はい、グレイ様♡」
「ユウイさんのそれは魔法ですか?」
グレイの言葉にユウイはくすりと笑う。
「ふふ、秘密の魔法ですよ」
その可愛らしさにグレイはすっかり骨抜きだ。
礼を言って飴玉を口に放ると甘みが広がる。
「美味いですね」
「俺のことをもっと好きになる魔法がかかってるんですよ」
「それは参ったな…まだ好きになったら大変だ」
二人は笑い合った。
✢✢✢
「やったぁ!ユウイ様のお迎え楽しみー!」
訓練の結果、一番頑張ったと思われる者を連れて、グレイは保育園に向かった。ユウイが帰っていく子供たちを見送っている。
「ユウイ様、また明日ねー!」
わいわい、と子供たちはユウイに手を振っている。
「あー、やっぱりユウイ様は素敵だなー」
騎士もすっかりユウイの虜である。
「あ、グレイ様!と…?」
ユウイが駆け寄ってきて首を傾げた。
「自分はアレンっていいます!よろしくおなしゃす!!」
ユウイはふふ、と笑った。
「どうぞ、アレンさん」
またもユウイはどこからともなく飴を取り出した。グレイはユウイが流れるような仕草でポケットから飴玉を取り出していることを見破った。だがそれを言うのは野暮だろう。
「うわぁ!飴なんて久しぶりに食べるっす!」
「美味しいですよ。あ、俺、荷物取ってきます。すぐ戻りますね!」
ユウイがぱたぱたと走っていく。
「いいなぁ、隊長。あんな優しそうな人と結婚するなんてなぁ」
「お前も見合いでもしたらどうだ?」
「考えてみるっす!」
「お待たせしました」
ユウイが戻って来る。夕日がじわじわと沈んでいく。
✢✢✢
「グレイ様、これ漬けてみたんです」
夕食時、ユウイが取り出してきたのは梅だ。実が大粒で柔らかそうだ。ピンクがかった色をしている。
「食べてみても?」
「はい。是非!」
グレイが口に放ると甘酸っぱさが広がった。もっと酸味を感じるかと思ったが旨味が強い。
「美味いですね。口当たりも柔らかい」
「良かった。規格外の梅がすごく安くてしかも沢山売っていたんです」
ユウイは買い物上手だ。彼と暮らすようになって
グレイはそれをよく実感している。
「ユウイさんは素晴らしい方ですね」
「もー、グレイ様は俺を褒め過ぎです!」
真っ赤になっているユウイの唇をグレイはさっと奪っておいた。
おわり
(ユウイさん…!)
グレイはそっとユウイを見守った。ユウイは子供たちに何かを手渡している。なんだろうとしばらく観察した結果、飴を渡しているようだと分かる。
(一体どこから取り出してるんだ。ユウイさんは手品も出来るのか…?)
そうこうしている間にもユウイは飴をどこからともなく取り出している。
「隊長、何やってんすか?」
いつの間にか騎士が一人、執務室に入ってきていたらしい。怪訝そうに聞かれて、グレイはいや、と言葉を濁した。騎士がこちらへ歩み寄ってくる。既に子供たちは見えなくなっていたので、グレイはホッとした。
「あ、そうだった。隊長、報告書なんですけど、どうやって書くんでしたっけ?」
「お前、前にも教えただろう」
「もう一度お願いしますよー」
仕方がないな、とグレイはため息を吐いたのだった。
✢✢✢
昼休み、グレイはそっと執務室を抜け出していた。もちろん行き先は保育園である。
他の騎士たちは食事の後、各々自由に過ごしているので、見咎められないように特に気を付けた。
保育園の様子を外から眺めると、子供たちはお昼寝をしているのか静かだ。
「グレイ様!」
ユウイがこちらへ駆け寄ってくる。
「なにかありましたか?」
ユウイが不安気な顔をしていたので、グレイはなんでもないと笑った。
「いえ、たまたま通りがかったものですから」
ユウイがほっと息を吐く。
「よかった。そうだ」
ユウイはまたどこからともなく飴玉を取り出した。
「はい、グレイ様♡」
「ユウイさんのそれは魔法ですか?」
グレイの言葉にユウイはくすりと笑う。
「ふふ、秘密の魔法ですよ」
その可愛らしさにグレイはすっかり骨抜きだ。
礼を言って飴玉を口に放ると甘みが広がる。
「美味いですね」
「俺のことをもっと好きになる魔法がかかってるんですよ」
「それは参ったな…まだ好きになったら大変だ」
二人は笑い合った。
✢✢✢
「やったぁ!ユウイ様のお迎え楽しみー!」
訓練の結果、一番頑張ったと思われる者を連れて、グレイは保育園に向かった。ユウイが帰っていく子供たちを見送っている。
「ユウイ様、また明日ねー!」
わいわい、と子供たちはユウイに手を振っている。
「あー、やっぱりユウイ様は素敵だなー」
騎士もすっかりユウイの虜である。
「あ、グレイ様!と…?」
ユウイが駆け寄ってきて首を傾げた。
「自分はアレンっていいます!よろしくおなしゃす!!」
ユウイはふふ、と笑った。
「どうぞ、アレンさん」
またもユウイはどこからともなく飴を取り出した。グレイはユウイが流れるような仕草でポケットから飴玉を取り出していることを見破った。だがそれを言うのは野暮だろう。
「うわぁ!飴なんて久しぶりに食べるっす!」
「美味しいですよ。あ、俺、荷物取ってきます。すぐ戻りますね!」
ユウイがぱたぱたと走っていく。
「いいなぁ、隊長。あんな優しそうな人と結婚するなんてなぁ」
「お前も見合いでもしたらどうだ?」
「考えてみるっす!」
「お待たせしました」
ユウイが戻って来る。夕日がじわじわと沈んでいく。
✢✢✢
「グレイ様、これ漬けてみたんです」
夕食時、ユウイが取り出してきたのは梅だ。実が大粒で柔らかそうだ。ピンクがかった色をしている。
「食べてみても?」
「はい。是非!」
グレイが口に放ると甘酸っぱさが広がった。もっと酸味を感じるかと思ったが旨味が強い。
「美味いですね。口当たりも柔らかい」
「良かった。規格外の梅がすごく安くてしかも沢山売っていたんです」
ユウイは買い物上手だ。彼と暮らすようになって
グレイはそれをよく実感している。
「ユウイさんは素晴らしい方ですね」
「もー、グレイ様は俺を褒め過ぎです!」
真っ赤になっているユウイの唇をグレイはさっと奪っておいた。
おわり
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
嘔吐依存
()
BL
⚠️
・嘔吐表現あり
・リョナあり
・汚い
ー何でもOKな方、ご覧ください。
小説初作成なのでクオリティが低いです。
おかしな点があるかもしれませんが温かい目で見逃してください。ー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる