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尽きない飴ちゃん?②(グレイ✕ユウイ)

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騎士団の訓練が終わると、騎士たちは城下町や砦の見回りに出かける。グレイはその間、執務室で騎士団に関する書類仕事をするのだ。街の見回りの報告書や、起こったトラブルについてなど、色々なものがある。グレイはふう、と息を吐いて傍らに置いてあった茶を飲んだ。すっかり冷めてしまっている。茶を淹れ直そうとグレイは立ち上がった。ふと賑やかな声がする。窓から外を眺めると、子供たちがぞろぞろ歩いている。

(ユウイさん…!)

グレイはそっとユウイを見守った。ユウイは子供たちに何かを手渡している。なんだろうとしばらく観察した結果、飴を渡しているようだと分かる。

(一体どこから取り出してるんだ。ユウイさんは手品も出来るのか…?)

そうこうしている間にもユウイは飴をどこからともなく取り出している。

「隊長、何やってんすか?」

いつの間にか騎士が一人、執務室に入ってきていたらしい。怪訝そうに聞かれて、グレイはいや、と言葉を濁した。騎士がこちらへ歩み寄ってくる。既に子供たちは見えなくなっていたので、グレイはホッとした。

「あ、そうだった。隊長、報告書なんですけど、どうやって書くんでしたっけ?」

「お前、前にも教えただろう」

「もう一度お願いしますよー」

仕方がないな、とグレイはため息を吐いたのだった。

✢✢✢

昼休み、グレイはそっと執務室を抜け出していた。もちろん行き先は保育園である。
他の騎士たちは食事の後、各々自由に過ごしているので、見咎められないように特に気を付けた。

保育園の様子を外から眺めると、子供たちはお昼寝をしているのか静かだ。

「グレイ様!」

ユウイがこちらへ駆け寄ってくる。

「なにかありましたか?」

ユウイが不安気な顔をしていたので、グレイはなんでもないと笑った。

「いえ、たまたま通りがかったものですから」

ユウイがほっと息を吐く。

「よかった。そうだ」

ユウイはまたどこからともなく飴玉を取り出した。

「はい、グレイ様♡」

「ユウイさんのそれは魔法ですか?」

グレイの言葉にユウイはくすりと笑う。

「ふふ、秘密の魔法ですよ」

その可愛らしさにグレイはすっかり骨抜きだ。
礼を言って飴玉を口に放ると甘みが広がる。

「美味いですね」

「俺のことをもっと好きになる魔法がかかってるんですよ」

「それは参ったな…まだ好きになったら大変だ」

二人は笑い合った。

✢✢✢

「やったぁ!ユウイ様のお迎え楽しみー!」

訓練の結果、一番頑張ったと思われる者を連れて、グレイは保育園に向かった。ユウイが帰っていく子供たちを見送っている。

「ユウイ様、また明日ねー!」

わいわい、と子供たちはユウイに手を振っている。

「あー、やっぱりユウイ様は素敵だなー」

騎士もすっかりユウイの虜である。

「あ、グレイ様!と…?」

ユウイが駆け寄ってきて首を傾げた。

「自分はアレンっていいます!よろしくおなしゃす!!」

ユウイはふふ、と笑った。

「どうぞ、アレンさん」

またもユウイはどこからともなく飴を取り出した。グレイはユウイが流れるような仕草でポケットから飴玉を取り出していることを見破った。だがそれを言うのは野暮だろう。

「うわぁ!飴なんて久しぶりに食べるっす!」

「美味しいですよ。あ、俺、荷物取ってきます。すぐ戻りますね!」

ユウイがぱたぱたと走っていく。

「いいなぁ、隊長。あんな優しそうな人と結婚するなんてなぁ」

「お前も見合いでもしたらどうだ?」

「考えてみるっす!」

「お待たせしました」

ユウイが戻って来る。夕日がじわじわと沈んでいく。

✢✢✢

「グレイ様、これ漬けてみたんです」

夕食時、ユウイが取り出してきたのは梅だ。実が大粒で柔らかそうだ。ピンクがかった色をしている。

「食べてみても?」

「はい。是非!」

グレイが口に放ると甘酸っぱさが広がった。もっと酸味を感じるかと思ったが旨味が強い。

「美味いですね。口当たりも柔らかい」

「良かった。規格外の梅がすごく安くてしかも沢山売っていたんです」

ユウイは買い物上手だ。彼と暮らすようになって
グレイはそれをよく実感している。

「ユウイさんは素晴らしい方ですね」

「もー、グレイ様は俺を褒め過ぎです!」

真っ赤になっているユウイの唇をグレイはさっと奪っておいた。

おわり
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