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僕たちの境界④(千尋✕加那太)
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(やばいやばいやばい!!)
加那太は心の中で、悲鳴を上げていた。サータに壁際に追い詰められているのだ。このままでは自分が男であることがバレるどころか、カナタ姫の身も危ない。
「さ、サータ様。一緒にお飲み物を飲みませんか?」
可能な限り逃げようと、加那太はくるりと身を翻した。ドレスなどもちろん着慣れていないが、今まで何度か着てきた経験がここでうっかり活きてしまった。身軽にサータを躱し、飲み物をボーイから受け取る。そして受け取ったドリンクをサータににこやかに差し出していた。この一連の動作にサータは驚いたようだ。
「カナタ姫はスポーツがお得意で?」
「いえ、僕…私は根っからの文系なので」
「?カナタ姫…さっきからおかしいですが、私になにか隠し事を?」
(やばい!)
サータの眉間に皺が寄り険しくなる。加那太はどうしたものかと焦った瞬間だった。
ぐらっと床が揺れたのだ。
(な、なに?)
サータが呻き声を上げながらどろどろに融けていく。
「加那!!」
千尋が上にいる。チヒロとタマも一緒だ。彼らは自分より、地下にいたはずだが、今はそんなことを考えている場合ではない。加那太は千尋の手を掴んだ。千尋がもう一方の手で加那太の体を引き上げてくれる。火事場の馬鹿力というやつだろう。
「千尋!タマ!」
加那太は二人に抱き着いた。
「主人様、時間がないの。早く姫を助けなければ!」
「うん!」
一行は地下へ向かって走り出した。チヒロが加那太をチラチラと見つめてくる。加那太にはその様子が可愛らしく思えた。自分も随分年を取ってしまった。
「王子、僕はただの加那太で姫じゃないんだよ」
「でも…」
「加那は俺のだ」
千尋の強い言葉は、もちろん嬉しい。加那太は笑った。
「大丈夫。姫ももちろん王子を待ってるから」
「ありがとう」
チヒロの素直な礼が加那太には嬉しい。しばらく走ると姫の眠る地下のフロアに辿り着いていた。
「カナタ!!」
チヒロが透明な棺に駆け寄る。そして、蓋をずらそうとした。だがそれはあまりにも重たい。
「くそ…」
「王子、落ち着いて。この棺はカナタ姫の魔力で作られたもの。つまり」
「魔力を流し込めば…」
チヒロが改めて手を棺に置き、魔力を流し込む。
「カナタ、頼む。目を覚ましてくれ」
「ち…ひろ?」
棺はパアンと音を立てて砕け散った。
「カナタ!!」
二人は抱きしめ合う。カナタの瞳からは涙が溢れているが口元は笑っている。
「ミッションコンプリート」
タマがしゅるしゅると猫の姿に戻っていく。
「二人共、長くお幸せにね」
「姫を泣かせるなよ」
カナタとチヒロがそれぞれ頷いた。
✢✢✢
「あれ?」
「加那、大丈夫か?」
加那太は自分がどこにいるか気付き、慌てて起き上がった。その場所は千尋の体の上だ。
「千尋を押し倒しちゃった」
「押し倒されるってこういう気持ちなんだな」
千尋がニヤニヤしながら言う。
「もー、えっちなこと言っちゃやだ!」
「シようぜ」
「ま?」
「マジに決まってるだろ」
くるん、とあっさり体勢を逆転されてしまう。
「わ、千尋が本気だ」
千尋は加那太の唇を塞ぐ。ちゅ、と唇を吸われ加那太はん、と震えた。
「加那、頼むから余計なこと言うな。止まらなくなる」
「いいよ、止まらなくて。千尋に全部あげる」
「はぁー、これだからなぁ。加那は」
二人は笑って口づけあった。千尋の手は加那太の胸をまさぐる。
「ふ、ふぁ…」
すり、と優しく撫でられるだけで体は反応し、加那太は身を捩る。
「加那は本当感度いいよな」
「千尋がそうしたんでしょ」
きゅ、と乳首を握られ、加那太は喘いだ。緩く乳首を握り込まれる度にぞわわと背筋が震える。
「さっきのドレスだったら脱がし甲斐があったよな」
「やだ!!」
「冗談だよ。加那、愛してる」
「ん。僕もだよ。ね、服脱いで」
「お前もな」
二人はお互いの服を脱がせあった。どちらからともなく唇にキスをする。加那太は千尋に抱き着いた。
「千尋、首に掴まってるからシていいよ?」
加那太はそう言って立膝になった。
「おま…そんな煽りあるか?」
「煽ってないもん」
加那太はぎゅっと千尋の首に抱き着いている。
千尋も覚悟を決めたのか、加那太の尻を指でもみながらまさぐる。
「挿れるからな」
毎回この場面が一番怖い。加那太はぎゅっと体に力を入れてしまった。
「加那、怖いのは分かるけどもう痛くないから」
優しいパートナーで良かったと思う瞬間だ。
「千尋好き!優しいもん、好き!」
「加那、バタバタするな。危ないから」
ぬるっと千尋の指をすぼまりはあっさり受け入れて加那太は急な快感に悲鳴を上げた。
「だからバタバタするなって…」
「うぅ。気持ちよかった」
「加那のは俺の指を覚えていてくれてるのか」
「えっちな言い方禁止!」
千尋は優しく中を解してくれた。毎回のことながら、これだけでトロトロになってしまう。
「加那、頑張れ」
「ふぐっ」
千尋を受け入れるのは毎回力業だと加那太は思っている。呻き声を上げながらなんとか全て受け入れるのだ。
ぱちゅ、ぱちゅんと叩きつけるように動かれて、加那太は再び悲鳴を上げた。
「ふにゃあっ!!」
「悪い、もう優しくは、無理だ」
千尋がここまで切羽詰まるのは珍しい。
「いいよ、来て、千尋」
二人は獣のように愛し合った。
✢✢✢
「わ、足の感覚ない…」
「悪い、やりすぎた」
二人は並んでベッドに横になっている。
「不思議なこと、また起きたね」
「あぁ、不思議だよなー。加那だけじゃなくてタマも不思議な力を持ってるんだもんな」
「うん、普通の猫じゃないとは思ってたけど」
「加那」
千尋に前髪を掬い上げられる。どうするのかと思っていたら、千尋に額にキスをされていた。
「好きだよ」
千尋のナチュラルな「好き」という言葉に加那太は骨抜きになってしまった。
おわり
加那太は心の中で、悲鳴を上げていた。サータに壁際に追い詰められているのだ。このままでは自分が男であることがバレるどころか、カナタ姫の身も危ない。
「さ、サータ様。一緒にお飲み物を飲みませんか?」
可能な限り逃げようと、加那太はくるりと身を翻した。ドレスなどもちろん着慣れていないが、今まで何度か着てきた経験がここでうっかり活きてしまった。身軽にサータを躱し、飲み物をボーイから受け取る。そして受け取ったドリンクをサータににこやかに差し出していた。この一連の動作にサータは驚いたようだ。
「カナタ姫はスポーツがお得意で?」
「いえ、僕…私は根っからの文系なので」
「?カナタ姫…さっきからおかしいですが、私になにか隠し事を?」
(やばい!)
サータの眉間に皺が寄り険しくなる。加那太はどうしたものかと焦った瞬間だった。
ぐらっと床が揺れたのだ。
(な、なに?)
サータが呻き声を上げながらどろどろに融けていく。
「加那!!」
千尋が上にいる。チヒロとタマも一緒だ。彼らは自分より、地下にいたはずだが、今はそんなことを考えている場合ではない。加那太は千尋の手を掴んだ。千尋がもう一方の手で加那太の体を引き上げてくれる。火事場の馬鹿力というやつだろう。
「千尋!タマ!」
加那太は二人に抱き着いた。
「主人様、時間がないの。早く姫を助けなければ!」
「うん!」
一行は地下へ向かって走り出した。チヒロが加那太をチラチラと見つめてくる。加那太にはその様子が可愛らしく思えた。自分も随分年を取ってしまった。
「王子、僕はただの加那太で姫じゃないんだよ」
「でも…」
「加那は俺のだ」
千尋の強い言葉は、もちろん嬉しい。加那太は笑った。
「大丈夫。姫ももちろん王子を待ってるから」
「ありがとう」
チヒロの素直な礼が加那太には嬉しい。しばらく走ると姫の眠る地下のフロアに辿り着いていた。
「カナタ!!」
チヒロが透明な棺に駆け寄る。そして、蓋をずらそうとした。だがそれはあまりにも重たい。
「くそ…」
「王子、落ち着いて。この棺はカナタ姫の魔力で作られたもの。つまり」
「魔力を流し込めば…」
チヒロが改めて手を棺に置き、魔力を流し込む。
「カナタ、頼む。目を覚ましてくれ」
「ち…ひろ?」
棺はパアンと音を立てて砕け散った。
「カナタ!!」
二人は抱きしめ合う。カナタの瞳からは涙が溢れているが口元は笑っている。
「ミッションコンプリート」
タマがしゅるしゅると猫の姿に戻っていく。
「二人共、長くお幸せにね」
「姫を泣かせるなよ」
カナタとチヒロがそれぞれ頷いた。
✢✢✢
「あれ?」
「加那、大丈夫か?」
加那太は自分がどこにいるか気付き、慌てて起き上がった。その場所は千尋の体の上だ。
「千尋を押し倒しちゃった」
「押し倒されるってこういう気持ちなんだな」
千尋がニヤニヤしながら言う。
「もー、えっちなこと言っちゃやだ!」
「シようぜ」
「ま?」
「マジに決まってるだろ」
くるん、とあっさり体勢を逆転されてしまう。
「わ、千尋が本気だ」
千尋は加那太の唇を塞ぐ。ちゅ、と唇を吸われ加那太はん、と震えた。
「加那、頼むから余計なこと言うな。止まらなくなる」
「いいよ、止まらなくて。千尋に全部あげる」
「はぁー、これだからなぁ。加那は」
二人は笑って口づけあった。千尋の手は加那太の胸をまさぐる。
「ふ、ふぁ…」
すり、と優しく撫でられるだけで体は反応し、加那太は身を捩る。
「加那は本当感度いいよな」
「千尋がそうしたんでしょ」
きゅ、と乳首を握られ、加那太は喘いだ。緩く乳首を握り込まれる度にぞわわと背筋が震える。
「さっきのドレスだったら脱がし甲斐があったよな」
「やだ!!」
「冗談だよ。加那、愛してる」
「ん。僕もだよ。ね、服脱いで」
「お前もな」
二人はお互いの服を脱がせあった。どちらからともなく唇にキスをする。加那太は千尋に抱き着いた。
「千尋、首に掴まってるからシていいよ?」
加那太はそう言って立膝になった。
「おま…そんな煽りあるか?」
「煽ってないもん」
加那太はぎゅっと千尋の首に抱き着いている。
千尋も覚悟を決めたのか、加那太の尻を指でもみながらまさぐる。
「挿れるからな」
毎回この場面が一番怖い。加那太はぎゅっと体に力を入れてしまった。
「加那、怖いのは分かるけどもう痛くないから」
優しいパートナーで良かったと思う瞬間だ。
「千尋好き!優しいもん、好き!」
「加那、バタバタするな。危ないから」
ぬるっと千尋の指をすぼまりはあっさり受け入れて加那太は急な快感に悲鳴を上げた。
「だからバタバタするなって…」
「うぅ。気持ちよかった」
「加那のは俺の指を覚えていてくれてるのか」
「えっちな言い方禁止!」
千尋は優しく中を解してくれた。毎回のことながら、これだけでトロトロになってしまう。
「加那、頑張れ」
「ふぐっ」
千尋を受け入れるのは毎回力業だと加那太は思っている。呻き声を上げながらなんとか全て受け入れるのだ。
ぱちゅ、ぱちゅんと叩きつけるように動かれて、加那太は再び悲鳴を上げた。
「ふにゃあっ!!」
「悪い、もう優しくは、無理だ」
千尋がここまで切羽詰まるのは珍しい。
「いいよ、来て、千尋」
二人は獣のように愛し合った。
✢✢✢
「わ、足の感覚ない…」
「悪い、やりすぎた」
二人は並んでベッドに横になっている。
「不思議なこと、また起きたね」
「あぁ、不思議だよなー。加那だけじゃなくてタマも不思議な力を持ってるんだもんな」
「うん、普通の猫じゃないとは思ってたけど」
「加那」
千尋に前髪を掬い上げられる。どうするのかと思っていたら、千尋に額にキスをされていた。
「好きだよ」
千尋のナチュラルな「好き」という言葉に加那太は骨抜きになってしまった。
おわり
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