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僕たちの境界②(千尋✕加那太)
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(ど、どうしよう)
加那太は焦りを抑えきれなかった。屋敷の中のことなど当然分からない。とりあえず一番近い部屋に逃げ込んだ。
「にぃ」
「タマ?」
たたっとタマが駆け寄ってくる。そして加那太に撫でてほしいと体を擦り付けてくる。
「タマ、僕どうすればいいの?」
聞いても無駄かと思ったが聞かざるを得なかった。ポム、と何かが軽く弾けた音がして、少女が現れる。流れるような長い白髪の女の子だ。可愛らしい女の子に加那太は思わず見惚れてしまった。彼女が加那太の顔を見つめる。
「主人様は今、プリンセスなの。しかも結婚を言い寄られているわ」
「そんなの困るよ!!」
加那太はハッとなって口を抑えた。ここにいることがバレたらまずい。
「この世界に元々いたプリンセスは眠ってる。主人様が起こしてあげて。そしてその子に真実の愛を教えてあげるの。わかった?」
「真実の…愛?」
「にぃ」
女の子はいつの間にかもとのタマの姿になっている。加那太はその場に蹲った。どうしようか、と考えたが答えなど出るはずがない。出来ることは1つだけ。プリンセスを起こす事だ。
「やるしか・・ないよね」
加那太は重たいドレスを破った。これではろくに動き回れない。まずは眠っている姫を探す必要がある。
(姫はどこにいるんだろう)
「にい」
「タマ、もしかして知ってる?」
希望を込めて聞いたらタマは再び啼いた。彼女を信じていいと加那太は判断する。
タマが走り出した。加那太は慌てて彼女の後を追った。途中で先程の男や千尋に似た少年に遭遇しないかヒヤヒヤしたがタマは危なげなく加那太を誘導してくれた。
いつの間にか、加那太は地下にいる。
ぴちょんと水が垂れる音がする場所は寒かった。加那太は自分の身体を抱きしめながら前へ進んだ。
「なんでプリンセスは眠ってるの?」
タマは再び少女の姿になる。
「プリンセスは愛を裏切られた。それを何度も繰り返している」
「え、つまり同じ時間をループしてるってこと?」
「簡単に言えばそうなる」
タマは口調こそそっけなかったが加那太がちゃんと付いてきているか時々振り返って確認してくれた。
「ねえタマ。なんで僕はこの世界に来たの?」
「因果律がそうさせた。プリンセスには相当な因果がまとわりいついているから、似ている主人様に影響があった」
「僕に似ているって、僕おじさんだけど」
焦って言うとタマがふいと顔を背ける。
「主人様綺麗だし可愛い」
タマの言葉に加那太はなんと反応したものか困った。しばらく暗い中を歩くと何かが置いてある。透明なケースだ。中に入っているものはと加那太は目を凝らして声を失った。自分にそっくりな誰かが眠っている。
「カナタ姫よ」
タマがなんてことないように説明してくれるが、加那太は驚きを隠せない。今までも自分に似た誰かを見てきたが、毎回その衝撃は消えない。
「本当に僕そっくりなんだね」
「でしょう?」
さて、問題は彼女をどうやって起こすかである。加那太はしばらく考えた。愛に裏切られた姫を救うために真実の愛を示す。口では容易いが実際はかなり難しい。
「姫は誰に裏切られるの?」
それくらいは聞いてもいいだろうと加那太はタマに尋ねた。
「金髪の男よ。チヒロを選ぼうとすると必ず邪魔が入る」
なるほどなあと加那太は腕を組んだ。要するに、この姫をこの世界のチヒロと結婚させればいいわけである。でもどうやってという部分がまだぼんやりしている。
「加那」
ふと声がした方を見ると千尋だった。
「千尋!来てくれたの?」
「部屋でお前眠ってたから触ったらここにいた」
「変なとこ触ってないよね?」
「するかよ」
冗談はさておき、加那太は千尋に事情を話した。
「なるほど。姫と男をくっつけりゃいいわけか」
「千尋、言い方」
「だってそういうことだろ」
「まあそうなんだけどね」
二人は考えた。
「まあいっちょやってみっか」
千尋の言葉に加那太は頷いた。
加那太は焦りを抑えきれなかった。屋敷の中のことなど当然分からない。とりあえず一番近い部屋に逃げ込んだ。
「にぃ」
「タマ?」
たたっとタマが駆け寄ってくる。そして加那太に撫でてほしいと体を擦り付けてくる。
「タマ、僕どうすればいいの?」
聞いても無駄かと思ったが聞かざるを得なかった。ポム、と何かが軽く弾けた音がして、少女が現れる。流れるような長い白髪の女の子だ。可愛らしい女の子に加那太は思わず見惚れてしまった。彼女が加那太の顔を見つめる。
「主人様は今、プリンセスなの。しかも結婚を言い寄られているわ」
「そんなの困るよ!!」
加那太はハッとなって口を抑えた。ここにいることがバレたらまずい。
「この世界に元々いたプリンセスは眠ってる。主人様が起こしてあげて。そしてその子に真実の愛を教えてあげるの。わかった?」
「真実の…愛?」
「にぃ」
女の子はいつの間にかもとのタマの姿になっている。加那太はその場に蹲った。どうしようか、と考えたが答えなど出るはずがない。出来ることは1つだけ。プリンセスを起こす事だ。
「やるしか・・ないよね」
加那太は重たいドレスを破った。これではろくに動き回れない。まずは眠っている姫を探す必要がある。
(姫はどこにいるんだろう)
「にい」
「タマ、もしかして知ってる?」
希望を込めて聞いたらタマは再び啼いた。彼女を信じていいと加那太は判断する。
タマが走り出した。加那太は慌てて彼女の後を追った。途中で先程の男や千尋に似た少年に遭遇しないかヒヤヒヤしたがタマは危なげなく加那太を誘導してくれた。
いつの間にか、加那太は地下にいる。
ぴちょんと水が垂れる音がする場所は寒かった。加那太は自分の身体を抱きしめながら前へ進んだ。
「なんでプリンセスは眠ってるの?」
タマは再び少女の姿になる。
「プリンセスは愛を裏切られた。それを何度も繰り返している」
「え、つまり同じ時間をループしてるってこと?」
「簡単に言えばそうなる」
タマは口調こそそっけなかったが加那太がちゃんと付いてきているか時々振り返って確認してくれた。
「ねえタマ。なんで僕はこの世界に来たの?」
「因果律がそうさせた。プリンセスには相当な因果がまとわりいついているから、似ている主人様に影響があった」
「僕に似ているって、僕おじさんだけど」
焦って言うとタマがふいと顔を背ける。
「主人様綺麗だし可愛い」
タマの言葉に加那太はなんと反応したものか困った。しばらく暗い中を歩くと何かが置いてある。透明なケースだ。中に入っているものはと加那太は目を凝らして声を失った。自分にそっくりな誰かが眠っている。
「カナタ姫よ」
タマがなんてことないように説明してくれるが、加那太は驚きを隠せない。今までも自分に似た誰かを見てきたが、毎回その衝撃は消えない。
「本当に僕そっくりなんだね」
「でしょう?」
さて、問題は彼女をどうやって起こすかである。加那太はしばらく考えた。愛に裏切られた姫を救うために真実の愛を示す。口では容易いが実際はかなり難しい。
「姫は誰に裏切られるの?」
それくらいは聞いてもいいだろうと加那太はタマに尋ねた。
「金髪の男よ。チヒロを選ぼうとすると必ず邪魔が入る」
なるほどなあと加那太は腕を組んだ。要するに、この姫をこの世界のチヒロと結婚させればいいわけである。でもどうやってという部分がまだぼんやりしている。
「加那」
ふと声がした方を見ると千尋だった。
「千尋!来てくれたの?」
「部屋でお前眠ってたから触ったらここにいた」
「変なとこ触ってないよね?」
「するかよ」
冗談はさておき、加那太は千尋に事情を話した。
「なるほど。姫と男をくっつけりゃいいわけか」
「千尋、言い方」
「だってそういうことだろ」
「まあそうなんだけどね」
二人は考えた。
「まあいっちょやってみっか」
千尋の言葉に加那太は頷いた。
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