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二人きりの結婚式(大地✕翼)
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「翼さん、ただいま」
大地の声に翼はハッとなった。今まで集中して絵を描いていたので、すっかり時間のことなど忘れてしまっていた。翼は顔を上げて大地を見つめた。彼を見ると、つい顔が緩む。
「お帰りなさい、大地君」
「今、夕飯作るね」
「あ、俺も手伝う」
「ありがとう」
大地がふわっと笑ったので、翼も嬉しくなった。
流しで手を洗いエプロンをつける。
「あのね、今度ウェディングドレスを見に行くの」
「え、翼さんが着るの?」
「…着て欲しいの?」
「絶対可愛いよねぇ」
大地がほんわか言う。翼はウェディングドレスを着た自分を想像をして恥ずかしくなった。ウェディングドレスは肩や背中が出ているイメージだ。花嫁は大変だなあと翼は他人事のように思っていた。
「あ、あれは女の人が着るからいいんだよ?」
「翼さんだったら真っ白な服似合うし、いいと思うけどね」
「結婚式を挙げるってこと?」
「いいなぁ、それ。そういえば指輪すら買ってなかったよね、俺たち」
「指輪…」
翼はそこまで考えて思考が停止してしまった。自分とはあまりにかけ離れていたからだ。
「指輪ってすごく高いんじゃない?」
翼が言うと大地はどうだろうと首を傾げた。そして笑う。
「ご飯食べたら調べてみようか」
「うん」
今日は大地が肉じゃがを仕込んでくれていたらしい。仕上げをして、副菜にパスタサラダを作った。味噌汁も忘れない。盛り付けた料理を食卓に運ぶ。
「頂きます」
二人は手を合わせて食べ始めた。
「なんでまたウェディングドレスなの?」
大地に尋ねられ、翼は理由を説明していなかったことを思い出した。
「6月にソシャゲのガチャで実装されるキャラがウェディングドレス姿なの」
「あ、ジューンブライドってやつ?」
「そう。みんな結婚式仕様になるんだよ」
「えー、キャラ全部?」
翼が頷くと、大地が面白いねと笑う。
「あ、だからウェディングドレスの取材に行くんだ」
「そうなの。やっぱり写真だけじゃ限界があって。担当さんに相談したら見に行きませんかって」
「翼さんの描くウェディングドレスはさぞかし綺麗なんだろうねー」
「ふふ、楽しみにしててね」
「石貯めておくよ。あとこのことは黙ってないとね」
「お願いします」
片付けを終えて、二人はデスクトップPCの前にいた。大地の太ももの上に翼は座っている。大地は指輪について検索をかけていた。
「うーん」
大地が唸る。画面には思っていたより多様なデザインの指輪が映し出されている。
「これは店に行って実際に見ないとなあ」
「え、本当に買うの?」
「翼さんは嫌?」
「ううん。嬉しいけど、なくしたら困るしどうすればいい?」
「そうだねえ、指にはめていると邪魔になるかあ。俺も手を使う仕事だしなあ」
しばらく画面を二人は眺めていた。
「あ」
二人共同時に声を上げた。
画面に映っていたのはブランドのペアキーリングだ。それぞれが対のデザインになっている。
「可愛い」
ピンクの石と青の石がそれぞれ付いている。
「ね、可愛いね。こういうのの方がいいか。ちょっとお店に聞いてみよう」
大地はページをブックマークをしてスマートフォンを取り出した。電話を掛けている。相手はすぐに出た。
「どうだった?」
電話を切った大地に翼が尋ねると彼は頷いた。
「うん、取り扱ってるって。一度見に行きますって言っちゃった。明日の夜、見に行こうか?」
夕飯も外で食べようと大地に言われ、翼は嬉しくなった。
「楽しみ」
「翼さん、なにかお祝いをしようか?」
「お祝い?」
うん、と大地が頷く。
「俺たち、付き合い始めてもうすぐ四年目になるんだよ」
「もうそんなになる?」
翼は驚いてしまった。この四年が本当にあっという間だったからだ。
「そう。だからお祝い。これからもずっと一緒にいよ?」
「いる。あのね、お祝いになにか作っていい?」
大地が首を傾げる。
「二人の写真を加工してスクラップブックを作るの」
「ええ、それいいね。翼さんが作ってくれるなら安心だし」
「うん。いっぱい二人の写真撮ったよね」
「これからもいっぱい撮ろうね」
二人は笑いあった。
大地の声に翼はハッとなった。今まで集中して絵を描いていたので、すっかり時間のことなど忘れてしまっていた。翼は顔を上げて大地を見つめた。彼を見ると、つい顔が緩む。
「お帰りなさい、大地君」
「今、夕飯作るね」
「あ、俺も手伝う」
「ありがとう」
大地がふわっと笑ったので、翼も嬉しくなった。
流しで手を洗いエプロンをつける。
「あのね、今度ウェディングドレスを見に行くの」
「え、翼さんが着るの?」
「…着て欲しいの?」
「絶対可愛いよねぇ」
大地がほんわか言う。翼はウェディングドレスを着た自分を想像をして恥ずかしくなった。ウェディングドレスは肩や背中が出ているイメージだ。花嫁は大変だなあと翼は他人事のように思っていた。
「あ、あれは女の人が着るからいいんだよ?」
「翼さんだったら真っ白な服似合うし、いいと思うけどね」
「結婚式を挙げるってこと?」
「いいなぁ、それ。そういえば指輪すら買ってなかったよね、俺たち」
「指輪…」
翼はそこまで考えて思考が停止してしまった。自分とはあまりにかけ離れていたからだ。
「指輪ってすごく高いんじゃない?」
翼が言うと大地はどうだろうと首を傾げた。そして笑う。
「ご飯食べたら調べてみようか」
「うん」
今日は大地が肉じゃがを仕込んでくれていたらしい。仕上げをして、副菜にパスタサラダを作った。味噌汁も忘れない。盛り付けた料理を食卓に運ぶ。
「頂きます」
二人は手を合わせて食べ始めた。
「なんでまたウェディングドレスなの?」
大地に尋ねられ、翼は理由を説明していなかったことを思い出した。
「6月にソシャゲのガチャで実装されるキャラがウェディングドレス姿なの」
「あ、ジューンブライドってやつ?」
「そう。みんな結婚式仕様になるんだよ」
「えー、キャラ全部?」
翼が頷くと、大地が面白いねと笑う。
「あ、だからウェディングドレスの取材に行くんだ」
「そうなの。やっぱり写真だけじゃ限界があって。担当さんに相談したら見に行きませんかって」
「翼さんの描くウェディングドレスはさぞかし綺麗なんだろうねー」
「ふふ、楽しみにしててね」
「石貯めておくよ。あとこのことは黙ってないとね」
「お願いします」
片付けを終えて、二人はデスクトップPCの前にいた。大地の太ももの上に翼は座っている。大地は指輪について検索をかけていた。
「うーん」
大地が唸る。画面には思っていたより多様なデザインの指輪が映し出されている。
「これは店に行って実際に見ないとなあ」
「え、本当に買うの?」
「翼さんは嫌?」
「ううん。嬉しいけど、なくしたら困るしどうすればいい?」
「そうだねえ、指にはめていると邪魔になるかあ。俺も手を使う仕事だしなあ」
しばらく画面を二人は眺めていた。
「あ」
二人共同時に声を上げた。
画面に映っていたのはブランドのペアキーリングだ。それぞれが対のデザインになっている。
「可愛い」
ピンクの石と青の石がそれぞれ付いている。
「ね、可愛いね。こういうのの方がいいか。ちょっとお店に聞いてみよう」
大地はページをブックマークをしてスマートフォンを取り出した。電話を掛けている。相手はすぐに出た。
「どうだった?」
電話を切った大地に翼が尋ねると彼は頷いた。
「うん、取り扱ってるって。一度見に行きますって言っちゃった。明日の夜、見に行こうか?」
夕飯も外で食べようと大地に言われ、翼は嬉しくなった。
「楽しみ」
「翼さん、なにかお祝いをしようか?」
「お祝い?」
うん、と大地が頷く。
「俺たち、付き合い始めてもうすぐ四年目になるんだよ」
「もうそんなになる?」
翼は驚いてしまった。この四年が本当にあっという間だったからだ。
「そう。だからお祝い。これからもずっと一緒にいよ?」
「いる。あのね、お祝いになにか作っていい?」
大地が首を傾げる。
「二人の写真を加工してスクラップブックを作るの」
「ええ、それいいね。翼さんが作ってくれるなら安心だし」
「うん。いっぱい二人の写真撮ったよね」
「これからもいっぱい撮ろうね」
二人は笑いあった。
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