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くまさんと看病①(大地✕翼)
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田町大地は毎朝、五時頃には目を覚ます。何故なら、仕事前に趣味のジョギングをするためだ。もう走らないというのは考えられないほど、ジョギングにハマってしまっている。隣に眠っているはずのパートナーは仕事に励んでいるのか不在だった。大地は所謂ゲイで、パートナーももちろん同性である男性である。大地が寝室を出ると、そのパートナーである沢村翼のアトリエがある。彼はイラストレーター兼漫画家だ。二つ年上の彼は小柄で愛らしい見た目をしている。大地の癒やしだ。
部屋の電気が点いていたので、起きているだろうと大地はアトリエに近付き、中を覗いた。
「翼さん?!」
翼が机に突っ伏して荒く呼吸をしている。大地は慌てて彼を抱き上げ寝室のベッドに寝かせた。
「すごい熱…」
そっと額を触るとびっくりするほど熱い。とりあえず冷蔵庫内にあった冷やすシートを翼の額にぺたりと貼り付けた。枕は氷枕にする。
「翼さん、具合悪かったんだ…」
夕飯を食べている時から気にはなっていたが、翼は大丈夫と言って、聞いてくれなかった。締め切りが近かったせいもあるだろう。それでももっと強引にでも止めておけば良かった…と大地は後悔した。翼は頑張り屋だから尚更だ。
「ん…」
「翼さん!起きたの?」
「あつい…」
翼はボーッとしているらしい。自分で額に触れて冷たいと首を傾げた。
「翼さん、熱があるから冷えるシート貼ったよ。何か食べる?」
「大地君…俺、仕事終わった」
ふふ、と翼が満足そうに笑う。どうやら気が抜けて具合が悪くなってしまったらしい。
「翼さん、とりあえず何か飲もうか。お茶…いや、ジュースか」
「ジュース飲む」
よっこいしょと翼が起き上がるのを大地は手伝った。
「分かった。持ってくるからジッとしてるんだよ」
「トイレ行く」
翼がフラフラしながら立ち上がろうとしたので、大地は慌てて彼を支えた。
「翼さん、今は一人で立てないからね。トイレ一緒に行こうね」
大地は翼をトイレまで抱えていった。こんなパワープレイが出来るのは大地だからである。
ベッドに戻ってきた翼はホッとしたのかりんごジュースをごくごく飲んでいる。冷たいのが心地いいのだろう。
「今ご飯作ってくるね。うどん作るから」
「ありがとう、大地君」
大地は冷凍うどんを湯がき、器に盛り付けた。温玉も忘れない。つゆをさっとかける。
「翼さん、はい。俺、洗濯と掃除してくるから食べたら横になるんだよ?」
「…分かった」
本当なら一口ずつ「あーん」してやりたいところだが、今日は仕事だ。院長という立場上、急には休めない。翼が体調を崩すのは今回が初めてだ。疲れが溜まっていたのだろう。
「くそ、もうちょっと気を付けてやれれば」
大地は一人呟いて洗濯機を回し、床にワイパーをかけ始めた。二人共どちらかといえば綺麗好きなのであまり汚れていない。
床の掃除を終えて、昼食のために米を炊くことにした。水道で米を研ぎ、炊飯器にセットする。お昼はもちろんお粥だ。
「翼さん、美味しい?」
寝室に戻ると翼は麺を啜っていた。
「おいひい」
それにホッとして、大地はベッドの傍らに座る。
「もう苦しいのない?」
「うん、随分楽になったよ」
大地が翼の額に手を当てると、まだ熱いが先程よりは下がっている。
「今日寝てられそう?」
「うん。今日は仕事ないから」
ふふ、と翼が自慢気にする。よほど力を込めたのだろう。
「翼さん、無理は駄目だよ?」
「うん、そうだよね。ごめんなさい」
こうして素直に謝れるパートナーが愛おしい。
そうこうしているうちに、洗濯機が鳴り出す。干したら仕事へ行く時間だ。
「翼さん、今日は寝てるんだよ。絵もちょっとだけにしときなね?」
「はーい。大地君、今日はキスしちゃやだよ?」
「…分かった」
翼の愛らしい唇を見ながら、大地は頷いた。
二人分の洗濯物は大して量はない。さっと干して、大地は階段を駆け下りた。
大地の職場は雑居ビルの二階にある。
三階が大地と翼の居住スペースだ。
「おはよう。田町」
「おはよう、越野」
いつものメンツが揃っているのを確認して朝礼は始まった。
部屋の電気が点いていたので、起きているだろうと大地はアトリエに近付き、中を覗いた。
「翼さん?!」
翼が机に突っ伏して荒く呼吸をしている。大地は慌てて彼を抱き上げ寝室のベッドに寝かせた。
「すごい熱…」
そっと額を触るとびっくりするほど熱い。とりあえず冷蔵庫内にあった冷やすシートを翼の額にぺたりと貼り付けた。枕は氷枕にする。
「翼さん、具合悪かったんだ…」
夕飯を食べている時から気にはなっていたが、翼は大丈夫と言って、聞いてくれなかった。締め切りが近かったせいもあるだろう。それでももっと強引にでも止めておけば良かった…と大地は後悔した。翼は頑張り屋だから尚更だ。
「ん…」
「翼さん!起きたの?」
「あつい…」
翼はボーッとしているらしい。自分で額に触れて冷たいと首を傾げた。
「翼さん、熱があるから冷えるシート貼ったよ。何か食べる?」
「大地君…俺、仕事終わった」
ふふ、と翼が満足そうに笑う。どうやら気が抜けて具合が悪くなってしまったらしい。
「翼さん、とりあえず何か飲もうか。お茶…いや、ジュースか」
「ジュース飲む」
よっこいしょと翼が起き上がるのを大地は手伝った。
「分かった。持ってくるからジッとしてるんだよ」
「トイレ行く」
翼がフラフラしながら立ち上がろうとしたので、大地は慌てて彼を支えた。
「翼さん、今は一人で立てないからね。トイレ一緒に行こうね」
大地は翼をトイレまで抱えていった。こんなパワープレイが出来るのは大地だからである。
ベッドに戻ってきた翼はホッとしたのかりんごジュースをごくごく飲んでいる。冷たいのが心地いいのだろう。
「今ご飯作ってくるね。うどん作るから」
「ありがとう、大地君」
大地は冷凍うどんを湯がき、器に盛り付けた。温玉も忘れない。つゆをさっとかける。
「翼さん、はい。俺、洗濯と掃除してくるから食べたら横になるんだよ?」
「…分かった」
本当なら一口ずつ「あーん」してやりたいところだが、今日は仕事だ。院長という立場上、急には休めない。翼が体調を崩すのは今回が初めてだ。疲れが溜まっていたのだろう。
「くそ、もうちょっと気を付けてやれれば」
大地は一人呟いて洗濯機を回し、床にワイパーをかけ始めた。二人共どちらかといえば綺麗好きなのであまり汚れていない。
床の掃除を終えて、昼食のために米を炊くことにした。水道で米を研ぎ、炊飯器にセットする。お昼はもちろんお粥だ。
「翼さん、美味しい?」
寝室に戻ると翼は麺を啜っていた。
「おいひい」
それにホッとして、大地はベッドの傍らに座る。
「もう苦しいのない?」
「うん、随分楽になったよ」
大地が翼の額に手を当てると、まだ熱いが先程よりは下がっている。
「今日寝てられそう?」
「うん。今日は仕事ないから」
ふふ、と翼が自慢気にする。よほど力を込めたのだろう。
「翼さん、無理は駄目だよ?」
「うん、そうだよね。ごめんなさい」
こうして素直に謝れるパートナーが愛おしい。
そうこうしているうちに、洗濯機が鳴り出す。干したら仕事へ行く時間だ。
「翼さん、今日は寝てるんだよ。絵もちょっとだけにしときなね?」
「はーい。大地君、今日はキスしちゃやだよ?」
「…分かった」
翼の愛らしい唇を見ながら、大地は頷いた。
二人分の洗濯物は大して量はない。さっと干して、大地は階段を駆け下りた。
大地の職場は雑居ビルの二階にある。
三階が大地と翼の居住スペースだ。
「おはよう。田町」
「おはよう、越野」
いつものメンツが揃っているのを確認して朝礼は始まった。
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