大好きなお姉ちゃんとモンスター喫茶店、始めました!

はやしかわともえ

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二話・喫茶モンスター開店準備〜プレオープン

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1・ギルドで受注した採集クエストで手に入れた野菜の苗をあたしはたかしと一緒に畑に植えていた。町にあるギルドにも行ってみたけれど、思っていたよりちゃんとしていて信頼もできそうだ。ウインディルムは自然が多くてモンスターも多いからクエストの種類も多様にあるらしい。いい感じじゃないの。苗を植えたらたっぷり水をやる。これで野菜はOK。葉物野菜はともかく、根菜は出来るまで少し時間がかかりそうね。それまではクエストでちょくちょく採集する必要がありそうだ。野菜は女子が好きだからね。大事。それに沢山の野菜が入ったサラダ絶対美味しい、間違いない。サラダバーもいいかも!夢が広がるー。

「出来たぁー!やったわ」

お姉ちゃんが表で騒いでいる。あたしたちはその声につられて表に回った。

「わあぁ」

お姉ちゃんがずっと作っていたのはもちろん、「喫茶・モンスター」の看板だ。もちろん手彫りの力作である。お姉ちゃんすごい。本当にこんなの作っちゃうなんて。材料費だって結構かかってるはずだ。あたしたちのお店の大事な看板。これから守っていかないと。

「どうかしら、サリアちゃん、たかしくん」

「いいと思います」

たかしが笑う。

「すごい、お姉ちゃん!」

ふふ、とお姉ちゃんが嬉しそうに笑う。そしてひょい、と看板を軽々担いだ。相変わらず馬鹿力。看板はお店が開店する日に飾るらしい。そうよね、お店をやるって言っても、まだほぼ何も出来てない。あたしたちのお店の近くに、お惣菜を専門に扱うお店がある。あたしたちはそこでお昼を買って食べた。喫茶店にするのだとお店の人に話したら、頑張ってと言ってもらえた。有り難い。応援してもらえるって嬉しいな。

2・午後は届いていた荷物を開けて、椅子やテーブルを店内に設置した。店内でゆったりくつろいでもらえるように時計はキッチンにだけ置く。
これでだいぶお店らしくなったなぁ。

「さ、今日はこれからコーヒー豆をクエストで手に入れましょうか」

はい?あたしは聞き間違えたのかと思った。コーヒー豆って一番大事じゃない?だって喫茶店だよ?コーヒーがなくちゃ話にならない。

「お姉ちゃん、コーヒー豆ってクエストで採集できるの?」

あたしの質問にお姉ちゃんがふんわり笑う。

「それがね、ちょうど良さそうなのがありそうなの」

向かった先は火山のある西の地域だった。ウインディルム広すぎか。未知の土地すぎる。クエストの最初に回復アイテムを支給してもらえるの助かる。あたしたちは生肉を手に入れるために草食動物を倒しながら先に進んだ。美味しく頂くからね、と約束する。しばらく行くと巨大なモンスターがいた。なにあれ!あたしたちはそっと岩山の影に身を潜めている。体から噴煙を出している。さすが火山にいるモンスターだ。あれに当たったら多分死んじゃうよね?

「あの子の餌が例のコーヒー豆らしいの」

「ええ?!じゃあ倒すの?」

「いや、無理だと思うよ」

たかしが冷静に言い放つ。お姉ちゃんも頷いた。

「あの子は多分、この火山の主だわ。あの子を倒しちゃうと、ここの生態系のバランスが崩れてしまう」

「じゃあどうするの?」

お姉ちゃんが笑った。

「私が引き付けるわ。サリアちゃんたちはその間に」

「それなら俺がやりますよ?」

たかしがなんでもないように言う。たかしが強いのはもう証明されてるけど。

「じゃあたかしくん、お願いね」

「分かりました」

お姉ちゃんもすんなり頼んじゃうし。たかしはモンスターの前に姿を現した。モンスターが威嚇で咆哮をあげる。たかしは上手くモンスターを引き付けてくれた。よし、その間に。

「あの子の餌の分は残してあげましょうね」

「うん!」

とりあえずコーヒー豆ゲットだ。あれ、このコーヒー豆。

「これ、もう炒られてるの?」

「そうなの。火山だからかしらね」

ふふ、とお姉ちゃんが笑う。たかしがモンスターを上手く撒いて、あたしたちはウインディルムの町に戻った。
町に戻るには、不思議な玉を使う。どうやらその玉が場所を記憶しているらしい。

「さーて、コーヒーを飲んでみましょうか」

お姉ちゃんがルンルンしながらコーヒーミルを取り出した。この間喫茶店でもらったものだ。
それで豆を挽くのだ。もう炒られてるからちょっと楽ちん。お姉ちゃんはずっとコーヒー豆の挽き方を研究していたらしい。いつの間に。あたしはブラックが飲めないので甘いカフェオレにしてもらった。熱々の甘いカフェオレは人を幸せにしてくれる。間違いない。

「わぁ、美味しい」

「うん、飲みやすいね」

たかしとお姉ちゃんはブラックで飲んでいる。

「これはまだまだウインディルムを探索しがいがありそうね!」

お姉ちゃんのやる気に火がついてしまったようだ。
これでコーヒーもオッケー。コーヒー豆の安定した供給のために、ギルドで採集を専門にしているヒトたちにお願いすることにした。一度自分たちで、採集場所を把握する必要があったらしい。これなら安心してコーヒーもお店で提供出来そうね。

その日の夕方、畑の様子を見に行った。え、なんだか野菜たちがものすごく大きくなってる。

「サリアちゃん、水を汲んできたよ」

たかしが水やり用の水をバケツに汲んできてくれたようだ。

「あれ?もう収穫できそうだね?」

「うん、すごい。成長がめちゃくちゃ速い」

「とりあえず収穫しよう」

あたしはたかしと手分けして収穫した。これは念願のサラダも作れるのでは!と夢が広がる。収穫したらザルいっぱいに採れた。すごい。根菜がもう出来てるのが有り難い。ドレッシングはどんなのがいいだろう。

あれ?なんかいい匂いがする。あたしたちが裏口から店に入ると、お姉ちゃんが何かを煮込んでいた。これは。

「お姉ちゃん、それ」

「ふふ、お肉がたっぷりのシチューよ。もう少し煮込むから待っててね」

美味しそう。すごく美味しそう。どうやら喫茶店の定番メニューの一つにするつもりらしい。お姉ちゃんはお料理も上手だ。さすがスペック女神。この間のマフィンも、ものすごく美味しかったな。お姉ちゃんがあたしたちが持っていたザルに気が付いた。

「お野菜、もう獲れたの?それならサラダも作りましょうか」

「あたしがやる!」

「ありがとう、サリアちゃん」

それくらいあたしにだって出来るのだ。野菜を洗って食べやすい大きさにちぎる。

「じゃがいもも獲れたのね、次からシチューに入れましょうか」

「開店が近付いてるって感じがするね」

たかしがニコっと笑う。そうだ、ここまで来ればもうすぐだ。

✢✢✢

「いただきまーす」

お姉ちゃんが作ってくれたシチューは最高だった。
お肉がゴロゴロ入っている。お肉が苦手な人には、抜くことも出来るらしい。配慮あるなあ。
サラダも新鮮で美味しい。バリバリ野菜を食べているとお姉ちゃんが真面目な顔をした。
どうしたのかな?

「あのね、二人共。喫茶店なんだけど明後日プレオープンしてみようと思うの」

「え、大丈夫なの?」

急な話であたしは驚いた。

「実はギルドにチラシを置いてもらっていたの」

いつの間に。

「今ならシチューを作る材料も揃ってるし、制服もあるわ。二人に協力してもらいたいの」

「そんなの当たり前じゃない、ね?たかし」

「うん。楽しみだね。お客さん沢山来るといいな」

本当にその通りだ。

2·もうプレオープンの日になっている。早朝からお姉ちゃんとたかしが協力して看板を飾っている。お姉ちゃんが彫った看板はニスが塗られているのかピカピカしていた。

「わぁ、本当にお店になったね!」

店内も準備万端だ!あたしたちは揃いのエプロンを着けている。店内は狭い。一度に入れられるのはカウンター席を含めて10人まで。素早く丁寧な作業が大事だ。

「さ、最終チェックしましょ」

お姉ちゃんに言われて、あたしたちは店内に戻った。
今日のメニューはランチセットのみだ。
コーヒーかカフェオレ、それにサラダと特製シチュー、白パンがセットになっている。それで760ダラー。安い。
シチューが無くなり次第終了だ。
お姉ちゃんは手書きのメニューも作っていたらしい。素早すぎるでしょ。最近、昼間眠たそうしていたのは、それを作っていたせいかもしれない。
今日の目標売上は35000ダラー以上らしい。目標金額までいけたらいいな。

「サリアちゃん、たかしくん、困ったら言ってね。お店には色々な方が来ると思うから」

その通りだ。あたしたちは頷いたのだった。

✢✢✢

11時になった。さあ、開店だ。店の外に出てみるとそこそこ行列が出来ている。あたしはお客様に声を掛けた。

「お客様、恐れ入りますが順番にお呼びいたしますのでお待ちくださいませ」

一番目に並んでいたお客様から順番に店内に入ってもらう。

「ランチセットいいわねえ、一つお願い。甘いカフェオレがいいわ」

なんだかお金持ちそうなおばさまだ。

「かしこまりました」

たかしがその間にお水とおしぼりを配っている。
うん、正にお店だ。

「サリアちゃん、カフェオレね」

注文を受けて作られるまでの時間はいかに短縮できるかが勝負だ。お姉ちゃんが淹れてくれたカフェオレをお客様のもとに運ぶ。

「まあいい香り」

「美味しい」

水を配って回っていたらお客様からそう声をかけてもらえた。嬉しいな。

「サリアちゃん、次で最後よ」

どうやらシチューが終わってしまうらしい。行列も全部さばいたな。最後のお客様はおじいちゃんだった。すごくおしゃれなスーツを着ている。おひげが特徴的な人だ。

「お客様、こちらの席へどうぞ」

カウンター席に案内する。

「ランチセット、ブラックで」

「かしこまりました」

あたしはお姉ちゃんにオーダーを通した。コーヒーはあたしでも淹れられるから(練習したのだ!)最初に提供できる。

「こちら、コーヒーになります」

「この豆が火山にあるのかい?」

おじいちゃんに聞かれてあたしは頷いた。

「はい。火山の主が管理しているものです」

「ほう、いやなかなか美味いよ」

「ありがとうございます」

このおじいちゃん、何者なんだろう。なんとなくだけど、ただものじゃない気がする。

「お待たせいたしました。ランチセットです」

たかしがランチセットの載ったトレイを運んでくる。おじいちゃんは相当お腹が空いていたらしい。がつがつ食べ始めた。

「むうう、このシチュー美味い。これはわが社に欲しいなあ」

おじいちゃんの食べるペースは最後まで落ちなかった。若い。会計後、おじいちゃんが口を開く。

「ご馳走様でした。わしはウインディルムにある会社を経営している者で…」

やっぱり偉い人だった。あたしは彼から名刺を受け取った。
ウインディルムの湖という社名らしい。確かにウインディルムには土地の真ん中に湖がある。うわあ、社長さんじゃない!

「オープンの際はご一報ください」

彼はそう言い残して去って行った。

「ありがとうございました!」

さてお店のお掃除しますか。

「サリアちゃん、お腹空いたー」

お姉ちゃんのライフが!
大変、あたしもお腹がめちゃくちゃ空いている!

「たかし!お弁当を買いに行くわよ」

「うん」

たかしはにこっと笑って頷いた。たかしはいつも余裕そうだ。強い人ってそもそも体の造りが違うのかな。
最近利用しているお総菜屋さんでお弁当とおかずを買う。
ああ、本当お腹空いた。
店に戻るとお姉ちゃんが洗い物をしていた。

「お姉ちゃん、ご飯買って来た」

「ありがとう、二人共」

みんな無言でお弁当をかきこんだのは言うまでもない。
***

「さーて今回の売り上げは」

片付けた後、レジを開けてお金を数える。

「今回の売り上げは38000ダラーでしたー」

「すごい、目標金額達成じゃない」

「ギルドにチラシを置いておくのはこれからも継続した方が良さそうね」

たかしを見るとニコニコしている。

「たかしくん、記憶は何か取り戻せた?」

「いや、それが何も。もうしばらくお世話になってもいいかな?」

「もちろんよお、助かるわ」

たかしは接客も器用にこなしていた。信頼できるって思っていいのかな?強くて優しくて…ってあたしは何を考えてるのよ!あの石だってそうだ。不思議なヒト。

「名前くらい思い出せないの?」

「んー、たかしでいいよ」

たかしは緩いなあ。とりあえずプレオープンは無事に成功したし、オープンまで頑張ろう。


***

その日の夜のことだ。あたしはオープンを報せるチラシを描いていた。お姉ちゃんには勝てないけどイラストならあたしも描ける。

「サリアちゃん、イラスト上手だね」

お風呂上がりのたかしに声を掛けられてあたしは彼を見上げた。

「あたしにだって出来ることあるのよ」

「知ってるよ」

たかしが微笑みながら言う。なによそれ、ちょっと嬉しいって思っちゃった。

「とりあえずチラシが出来たらギルドに置いてもらうの。喫茶店のオープンは来週なんだし」

「そうだね、それまでに材料のストックが要るな」

ふうむとたかしが考えている。

「そうなの。だから明日またクエストに行こうかなって」

「わかった、付き合うよ」

「二人共、そろそろ寝ないと明日に響くわよ」

「はあーい」

あたしたちはおやすみを言い合って部屋に戻った。我ながらチラシが上手く描けた気がする。
明日ギルドで刷って、置いてもらおう。

あたしはいつの間にか眠っていたらしい。気が付いたらもう朝だった。

「ううーん」

ぐぐぐと伸びをしてベッドから立ち上がる。
よし、今日も元気だ。
居間に行くとたかしが朝食を食べていた。今日のご飯は昨日買っておいたお惣菜だ。冷えても美味しく感じるように工夫されて作られている。こういうのすごく勉強になる。

「おはよう、たかし」

「サリアちゃん、おはよう。アリアちゃんはギルドに行ったよ。チラシを置いてもらうって張り切ってた」

「そう。お姉ちゃん行動が早いなあ」

あたしもたかしの向かいに座ってお惣菜をつついた。うん、美味い。

「アリアちゃんが今日は火山じゃなくて他の場所に採集に行こうって」

「ええ、今度は何を探すつもりなの?」

「さあ?」

たかし何も聞かされてないんだ。

「確かスイーツ系の看板メニューが欲しいって」

「なるほど」

それはまさになるほどだ。お食事系メニューだけじゃなんとなく物足りなかったもんね。

「お姉ちゃんはどんなスイーツを作るつもりなんだろう。甘いの大好き」

「サリアちゃんは甘党なんだね」

「甘さは世界を救うって誰かが言ってた」

たかしが噴き出す。たかしとこんなに仲良くなれるとは思わなかったな。

「とりあえず食べたらクエストに行く準備をしましょう」

あたしが鼻息荒く言ったらたかしが頷いてくれた。

***

「二人共ー、おはよう」

あ、お姉ちゃんが帰って来た。もういつでもクエストに行けますっていう格好だな。
あたしも装備を確認した。あたしの装備は軽いけど丈夫だ。ついこの間、たかしに弓の強化をお願いしたら更に軽く強くなった。お代を払わなきゃと思って言ったら、お世話になってるからとやんわり断られた。

「もう準備は出来てるみたいね!」

お姉ちゃんにあたしたちは頷いた。よし、採集クエスト頑張るぞー!


2·あたしたちがやってきているのは麦畑だった。金色の麦たちがキラキラしながら風に揺れている。
綺麗。

「ギルドで聞いたんだけど、この麦畑を管理しているヒトがいるみたいなの。まずはそこに行きましょうか」

麦畑の連なる一直線をあたしたちはひたすら歩いた。
ずーっと畑だ。これを管理するだけでも大変そうなのに、どの麦もキラキラ黄金色に輝いている。

ふと向こうを見ると家が見えてきた。お姉ちゃんがその家の中で、一番大きな家の呼び鈴を鳴らす。中の人はすぐに出てくれた。

「どちらさまでしょうか?」

出てきたのはあたしたちと同じエルフさんだった。
お姉ちゃんがニッコリと笑って彼に話しかける。

「実は私たち、ウインディルムで喫茶店をやるんです。出来たら小麦粉を分けていただきたいのですが」

「喫茶店…」

エルフさん、困ってるな。

「小麦粉はいくらでもあるので、分けるのは構わないですが、パンでも焼くんですか?」

確かにあたしもそう思った。

「いつでもいいのでお店に来てほしいんです。ご馳走しますから」

お姉ちゃんがずずい、と前に出る。

「え、いいんですか?」

エルフさんがちょっとひいた。でも少しは興味を持ってもらえたのかな。お姉ちゃんが店のチラシを見せると、じっと読んでいた。

「小麦粉なら好きなだけ持って行ってください。
うちは酪農もやってるので卵と牛乳も…」

「いいんですか!!」

お姉ちゃんが目をキラキラさせている。新鮮な牛乳と卵が手に入るのは嬉しいな。牛乳があればクリームシチューもできちゃうもんね。それにしても、お姉ちゃんはなにを作るつもりなんだろう?
すごく気になる。

あたしたちはこの後、一度ギルドに戻った。お姉ちゃんは交易をギルドの担当者さんにお願いしていたのだという。いつの間に。相変わらず行動が素早いな。

「アリア嬢、お疲れ様です」

交易の担当者さんは綺麗でかっこいいすらっとしたお姉さんだった。腰には対になる剣を差している。近接武器熱い。

「リンカさん、お疲れ様です。交易の方は?」

このお姉さん、リンカさんっていうんだー。可愛いお名前!お姉ちゃんとはまた違った部類の女神!

「はい、ご依頼通りに」

リンカさんが差し出したのは、白い粉だった。え、危ない薬じゃないよね?

「お姉ちゃん、それ…」

「お砂糖よ、サリアちゃん」

お姉ちゃんが大きな袋をひょい、と担ぐ。あたしも持とうとしたらリンカさんに止められた。どうやら相当重たいらしい。

たかしが代わりに担いでくれる。

「さ、帰って試作しましょ」

お姉ちゃん、ルンルンしてる。
一体何を作るんだろう?

3·お店に帰ってきて早々に、お姉ちゃんはなにかを作り始めた。もらってきた小麦粉に卵、牛乳、そしてお砂糖を入れてかき混ぜる。それをフライパンで焼き上げる。さすがのあたしにもそれがなんなのか分かった。

「もしかして、パンケーキ?」

「正解!トッピングも欲しいけどとりあえず試作品だからまずは食べてみましょうか」

ほかほかふっくらのパンケーキに甘いシロップをかけて、フォークとナイフで切り分ける。ふわふわだから簡単に切り分けられた。口に運ぶと、甘みが広がる。

「美味しい!!」

「うん、フワフワだね」

「よかった。もう少し甘さを控えてもいいかもしれないわ。ホイップクリームやチョコレートソースも欲しいわね」

「アイスも!」

あたしが手を上げて言ったらお姉ちゃんが笑った。

「色々試してみましょう」

開店までもうすぐだ。まだ足取りが覚束ないけど、きっと大丈夫。ゆっくりだけど確実に前進してる。あたし自身もそれに負けないようにしなきゃ。
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