12 / 21
メイド
しおりを挟む
透花が店内に戻ると、メイド達が厨房に集まってわいわい騒いでいた。
何をしているんだろう?と透花もそっと覗き込む。透花は父に似て身長が高い。
だが、体質のせいか筋肉がとにかく付きにくかった。
人の何倍ものトレーニングをして、ようやく成果が出始めるという自分の体を恨めしく思わなかった日はない。
プロになってからは尚更である。
基礎である、体幹を鍛えるために始めたトレーニングもなかなか厳しかった。
「あ、あの!」
透花は彼女達に思い切って声を掛けてみた。
彼女達が一斉にこちらを振り向く。
「あ!あなた、確か透花さんでしたよねぇ」
ふんわりと優しそうな面立ちのメイドが言う。
名札には「まりあ」とあった。
この間、ここで和真と一緒に遊んだ時にいたメイドである。
「そ、そうです。俺、今日からここで働きます。よろしくお願いします」
「お前、ボクシングはどうしたんだよ?」
ショートボブの小柄なメイドがこちらを睨みつけてくるのに、透花は思わず怯みそうになった。
試合では相手を倒すために威嚇をするのが常だが、日常でこんなに明らかな敵意を持たれたことはあまりない。
「あ、今はちょっと休んでて…」
「あぁ?あたしらの仕事は気分転換ってか?」
「言い過ぎですよぉ、ゆうきちゃん」
まりあがゆうきと呼ばれた彼女を宥めている。
「透花さんって、社長が好きなんですか?
物好きですねぇ!
あたしの方が絶対可愛いのにぃ!」
「おい、とまり、誘惑するな。透花といったな?
あたしはらん、よろしく頼む」
「は…はい、どうも」
「これから皆でおやつを食べるんですよ。透花さんも手を洗ってきてください」
「え、いいんですか?」
ゆうきが舌打ちして言う。
「早くしろよな」
「はい!」
透花の目の前に置かれたのは、生クリームがたっぷり添えられたシフォンケーキだった。
「わ、美味そう」
思わずそう言うと、まりあが笑う。
「社長、ケーキを作るのが本当に上手なんです。いつも私達のために焼いてくれるんですよぉ」
「へえ!すごいな」
透花はフォークでケーキを一口大に切り分けた。フォークをのせるだけでケーキがふんわりとへこむ。その柔らかさに透花は驚いた。
シフォンケーキを脇に盛られた生クリームにたっぷり付けて口に放り込む。
思っていたよりクリームは甘くなく、すうっと口の中でケーキが溶けるようになくなった。
「美味ー」
「おい新入り、社長にちょっと気に入られてるからっていい気になるなよな」
「ゆうき、お前さっきから突っかかり過ぎだぞ」
らん、という眼鏡を掛けた彼女にたしなめられて、ゆうきはますます頬を膨らませた。
「俺、ここでできることはなんでもします!」
透花は立ち上がって頭を下げたのだった。
何をしているんだろう?と透花もそっと覗き込む。透花は父に似て身長が高い。
だが、体質のせいか筋肉がとにかく付きにくかった。
人の何倍ものトレーニングをして、ようやく成果が出始めるという自分の体を恨めしく思わなかった日はない。
プロになってからは尚更である。
基礎である、体幹を鍛えるために始めたトレーニングもなかなか厳しかった。
「あ、あの!」
透花は彼女達に思い切って声を掛けてみた。
彼女達が一斉にこちらを振り向く。
「あ!あなた、確か透花さんでしたよねぇ」
ふんわりと優しそうな面立ちのメイドが言う。
名札には「まりあ」とあった。
この間、ここで和真と一緒に遊んだ時にいたメイドである。
「そ、そうです。俺、今日からここで働きます。よろしくお願いします」
「お前、ボクシングはどうしたんだよ?」
ショートボブの小柄なメイドがこちらを睨みつけてくるのに、透花は思わず怯みそうになった。
試合では相手を倒すために威嚇をするのが常だが、日常でこんなに明らかな敵意を持たれたことはあまりない。
「あ、今はちょっと休んでて…」
「あぁ?あたしらの仕事は気分転換ってか?」
「言い過ぎですよぉ、ゆうきちゃん」
まりあがゆうきと呼ばれた彼女を宥めている。
「透花さんって、社長が好きなんですか?
物好きですねぇ!
あたしの方が絶対可愛いのにぃ!」
「おい、とまり、誘惑するな。透花といったな?
あたしはらん、よろしく頼む」
「は…はい、どうも」
「これから皆でおやつを食べるんですよ。透花さんも手を洗ってきてください」
「え、いいんですか?」
ゆうきが舌打ちして言う。
「早くしろよな」
「はい!」
透花の目の前に置かれたのは、生クリームがたっぷり添えられたシフォンケーキだった。
「わ、美味そう」
思わずそう言うと、まりあが笑う。
「社長、ケーキを作るのが本当に上手なんです。いつも私達のために焼いてくれるんですよぉ」
「へえ!すごいな」
透花はフォークでケーキを一口大に切り分けた。フォークをのせるだけでケーキがふんわりとへこむ。その柔らかさに透花は驚いた。
シフォンケーキを脇に盛られた生クリームにたっぷり付けて口に放り込む。
思っていたよりクリームは甘くなく、すうっと口の中でケーキが溶けるようになくなった。
「美味ー」
「おい新入り、社長にちょっと気に入られてるからっていい気になるなよな」
「ゆうき、お前さっきから突っかかり過ぎだぞ」
らん、という眼鏡を掛けた彼女にたしなめられて、ゆうきはますます頬を膨らませた。
「俺、ここでできることはなんでもします!」
透花は立ち上がって頭を下げたのだった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
黄色い水仙を君に贈る
えんがわ
BL
──────────
「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」
「ああ、そうだな」
「っ……ばいばい……」
俺は……ただっ……
「うわああああああああ!」
君に愛して欲しかっただけなのに……
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる