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メール

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「透花!もっと気合い入れろ!!」

「はい!!」

次の大会に向けて、透花は毎日クタクタになるまで猛練習している。
コーチは厳しいが信頼できる人だ。
透花は更に蹴りを鋭く打ち込んだ。

「いいぞ!その感じを忘れるなよ!」

「はい!」

透花は小学生の時、父からの勧めでキックボクシングを始めた。めきめきと上達して、結果、プロになれた。
だがプロの世界はとてつもなく厳しい。
プロとはいっても、透花は下の方にいるが、それでも常に勝ち負けのことがついて回る。

正直に言って、自分と同年代の大学生が羨ましかった。
毎日勉強するのも楽ではないだろうが、なんだか楽しそうだなと透花はつい思ってしまう。

サークルや飲み会の話を和真から聞くと、ますますそう思う。

(俺からキックボクシング取ったら何も残らないんだろうな)

結局この結論に辿り着くのだが、やっぱりモヤモヤしてしまう。

「透花!集中しろ!」

「はい!すんません!」

練習が終わる頃にはもう真っ暗だった。
毎日こんなふうに時間は過ぎていく。

「あー、疲れたー」

帰宅してすること、それはベッドにダイブだ。
そこから少しダラダラして、夕飯を食べることにしている。

「あ、ぴゅあーずな」

透花はバッグの中に入っていた財布から、先程姫華に貰った名刺を取り出した。
よく見ると、彼女の携帯のメールアドレスまで書いてある。

(月曜に行くって言っておいた方がいいかな?)

出来るなら姫華にまた会いたい。
透花はメールアドレスを打ち込んで、月曜に店に行く旨を伝えた。
すぐにメールが返ってきて驚く。

『ご来店お待ちしています♡』

この一言が嬉しくて、透花はにやけてしまった。メイド=いかがわしいと思っていた自分はいつの間にかいなくなっていた。
それどころか、メイド喫茶に行くのを楽しみにしてさえいる。

(姫華さんの影響すごいな)

透花はシャワーを浴びるため起き上がった。
くたくただったが、サッパリしたかった。

手早くシャワーを浴びてベッドに戻ると、メールが来ている。
それは姫華からだった。アドレスを確認したが間違いない。

「透花くん、僕とお友達になってくれませんか?」

姫華の気持ちは嬉しいが、自分でいいのかと思ってしまう。

「俺でいいなら」

そう返信すると、姫華からありがとうの文字と♡の絵文字が沢山返ってきた。

(姫華さん、可愛いな。
きっとモテるんだろうな)

姫華と仲良くなりたい、という気持ちが先走りしそうだったので、透花は頭を振った。
まだ出会ったばかりなのだ。焦ることはない。

月曜日が来るのをただ待てばいいだけだ。
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