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第三話

クーはだれのもの?

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次の日の朝、僕が起きるといつかとトキはお茶を飲みながら話していた。
時計を見るともう七時過ぎだ。慌てて支度をする。

「クー、おはよう。あのね」

いつかがやってきて言う。

「昨日アレクからメッセージが来ていたから、明日返信するねって言っておいたよ」

「ええ?そうだったんだ」

いつかが返信してくれたのなら、アレクも安心しただろうななんて思いながら、僕は端末を操作した。
あれ?このファイル?写真が圧縮されている。

僕はそのファイルを展開して中身を確認した。

(わあ、サムスくんとの写真が)

「いつかあ!サムスくんのは送っちゃダメじゃん!っていうかいつ撮ったの?」

いつかがにやにやしている。あ、これ確信犯だ。怖。

「クー、アレクと付き合ってるなんて、僕聞いてない」

いつかがにっこりしながら言う。怖いなあ。

「言わなかったのはごめんって。一応その告白はしたんだけど」

いつかがじっと僕を見ている。

「その恋人らしいことはなにもしてなくて」

気まずくなりながら言ったらいつかは大きく息をついた。

「クーはもう大人なんだもんね」

「いつか」

「僕も子離れしないとかあ」

さみしそうにいつかが笑う。

「クーさあん!」

バタバタと音がして部屋に誰かがやってきた。
この部屋を知っている人はだいぶ限られる。

「サムスくん?」

「クーさん、帰る前にお会いできて嬉しいです」

ぎゅうと手を握られる。これは既視感が。
そこに僕の端末が鳴り出した。
なんだ?

いつかがすかさず端末の通話ボタンを押す。アレクが映像で浮かび上がった。
えええ。

「クー、そいつから離れろ」

「アレク?」

アレクはため息をついて言う。

「トキさんから聞いた。そいつがクーを狙ってるって」

サムスくんが僕を?目の前のサムスくんを見るとにっこり笑われた。

「はっきり言うけど、クーは俺のだから」

「僕だって譲りませんよ」

なにこの状況。

「えっと、二人とも?」

困っているといつかがこう言った。

「クーは誰が好きなの?」

それはもうはっきりしている。

「僕はアレクがいいもん!」

もう恥ずかしくて僕はその場を逃げ出していた。

「うう、恋人って大変だよお」

草の茂みに隠れて泣いていたら、誰かがハンカチを差し出してくれた。
顔を上げると真っ赤な顔をしたアレクだった。


「アレクー?なんで?」

ここはドラムだ。
僕は立ち上がった。

「昨日、どうしてもクーに会いたくなったんだ。それでトキさんに頼んで」

「そうだったんだ」

「本当に俺でいいのか?」

僕はアレクにしがみついた。

「アレクだからいいんだよ」

「クー」

恥ずかしくて顔もまともに見られない。
アレクもそれは同じようだった。

「な、なあクー。また俺、泰に来るよ。
ラキタの仕事をやめるわけにはいかないけどさ」

「うん。あさみさんを手伝ってあげてよ」

「クーもたまにラキタに来いよ」

「うん」

アレクに手を握られる。
僕もアレクの手を握り返した。

「「好きだよ」」

シンクロした言葉がすごく嬉しかった。

「みんなのとこに戻ろうか」

「うん」

僕はきっと、ずっとこの時を忘れない。


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