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第一話
お仕事の契約
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(眩しい)
目を開けると陽の光が窓から差し込んできている。さっそく暑い。どちらかといえば涼しい泰ではこんなこと考えられない。
(そういえば僕、ラキタにいるんだった)
昨日困っているところを、あさみさんに助けてもらったんだ。
ベッドからおりて部屋を出ると、あさみさんが冷蔵庫に食料を入れているところだった。
「あら、クーちゃん。起きたの?」
「うん、おはようございます」
あさみさんがにこりと笑う。
「おはよう。今、ご飯作るわね。シャワー浴びてきたら?この部屋の奥にあるわ。着替えもあるから」
「ありがとう」
あさみさんは本当にお母さんみたいだ。
いつも優しいいつかに会いたくなってきて、泣きそうになった。鼻の奥がつんとしてくる。
でも泣いている場合じゃない。
僕は、いつかを助けに来たんだから。
浴室はすぐに分かった。
すごく広くて、大きな浴槽もある。
洗い場も3箇所ある。子供たちを沢山保護できそうだ。
あさみさんのお仕事の邪魔になってないといいんだけど。
僕はそんなことを思いながらシャワーを浴びた。
タオルで体の水気を拭き取って、服を着たら落ち着いた。
さっぱりした。
「あの、ありがとうございました」
そうっと戻るとテーブルに朝ご飯が並んでいる。
「クーちゃん、ご飯食べなさい」
「はーい」
昨日と違って、全部手作りだった。
美味しそうなにおい。あぁ、お腹空いた。
「いただきます」
バターがたっぷりのったトーストを一口かじるとカリカリのもちもちだった。
「うまぁ!」
「いっぱい食べてね」
「うん!」
ハムエッグも美味しそー!
黄身が半熟だし、ハムがぱりぱりしている。
ソーセージも美味しかった。幸せだ。
サラダも忘れずに食べる。
「クーちゃんは美味しそうに食べてくれるから作り甲斐あるわ」
「あさみさん、お料理上手なんだね」
「私もお母さんになってみたかったの」
あさみさんがふと遠くを見て言った。何かがあったんだろうな。
「クーちゃん、お母さんも探してもらえるのをきっと待ってると思う。
なにもなくてもいい。ここを拠点にしたらどうかしら?」
それはありがたいけれど。
あさみさんはやる気満々のようだ。
「でも僕、あんまりお金を持っていないの」
トキからもらったお金があるけど、沢山はない。
「大丈夫。ここで私の仕事を手伝ってくれれば」
仕事、という響きに僕は惹かれた。
僕にも仕事ができるのかな?できるならやってみたい。
「クーちゃん、私と一緒に働いてみない?お給料もちゃんと出すわ。
まずお父様に許可を頂かなきゃだけど」
「本当に僕でいいの?」
あさみさんは頷いてくれた。
僕は早速端末で電話をかけた。
「もしもし」
トキの眠そうな声が聞こえる。
そっか、時差があるんだ。向こうはまだ明け方だろう。
僕はトキに事情を説明した。
トキもずっと心配してくれていたらしい。
「クー、お前の端末に金を送る。
お前の生活に必要なものを買うといいよ。
逸花のことは無理するな」
「トキ、ありがとう」
「気を付けて帰ってこいよ」
「うんー!」
それから僕はあさみさんと簡単に契約を結んでもらった。
お皿洗いやトイレなどの水回りのお掃除の仕事をさせてもらえるらしい。
もし体調の悪いときはあさみさんにすぐ言うようにと約束もした。
(頑張るぞ!)
「クーちゃん、神殿の行き方を教えるわ」
そうだ、氷漬けになった神殿に行くんだった。なにかわかればいいんだけれど。
あさみさんが地図を僕の端末に送ってくれた。
「クーちゃん、もしかしたら危ないかもしれないわ。くれぐれも気を付けてね!」
「ありがとう、あさみさん!」
僕は氷の神殿へ歩いて向かった。
目を開けると陽の光が窓から差し込んできている。さっそく暑い。どちらかといえば涼しい泰ではこんなこと考えられない。
(そういえば僕、ラキタにいるんだった)
昨日困っているところを、あさみさんに助けてもらったんだ。
ベッドからおりて部屋を出ると、あさみさんが冷蔵庫に食料を入れているところだった。
「あら、クーちゃん。起きたの?」
「うん、おはようございます」
あさみさんがにこりと笑う。
「おはよう。今、ご飯作るわね。シャワー浴びてきたら?この部屋の奥にあるわ。着替えもあるから」
「ありがとう」
あさみさんは本当にお母さんみたいだ。
いつも優しいいつかに会いたくなってきて、泣きそうになった。鼻の奥がつんとしてくる。
でも泣いている場合じゃない。
僕は、いつかを助けに来たんだから。
浴室はすぐに分かった。
すごく広くて、大きな浴槽もある。
洗い場も3箇所ある。子供たちを沢山保護できそうだ。
あさみさんのお仕事の邪魔になってないといいんだけど。
僕はそんなことを思いながらシャワーを浴びた。
タオルで体の水気を拭き取って、服を着たら落ち着いた。
さっぱりした。
「あの、ありがとうございました」
そうっと戻るとテーブルに朝ご飯が並んでいる。
「クーちゃん、ご飯食べなさい」
「はーい」
昨日と違って、全部手作りだった。
美味しそうなにおい。あぁ、お腹空いた。
「いただきます」
バターがたっぷりのったトーストを一口かじるとカリカリのもちもちだった。
「うまぁ!」
「いっぱい食べてね」
「うん!」
ハムエッグも美味しそー!
黄身が半熟だし、ハムがぱりぱりしている。
ソーセージも美味しかった。幸せだ。
サラダも忘れずに食べる。
「クーちゃんは美味しそうに食べてくれるから作り甲斐あるわ」
「あさみさん、お料理上手なんだね」
「私もお母さんになってみたかったの」
あさみさんがふと遠くを見て言った。何かがあったんだろうな。
「クーちゃん、お母さんも探してもらえるのをきっと待ってると思う。
なにもなくてもいい。ここを拠点にしたらどうかしら?」
それはありがたいけれど。
あさみさんはやる気満々のようだ。
「でも僕、あんまりお金を持っていないの」
トキからもらったお金があるけど、沢山はない。
「大丈夫。ここで私の仕事を手伝ってくれれば」
仕事、という響きに僕は惹かれた。
僕にも仕事ができるのかな?できるならやってみたい。
「クーちゃん、私と一緒に働いてみない?お給料もちゃんと出すわ。
まずお父様に許可を頂かなきゃだけど」
「本当に僕でいいの?」
あさみさんは頷いてくれた。
僕は早速端末で電話をかけた。
「もしもし」
トキの眠そうな声が聞こえる。
そっか、時差があるんだ。向こうはまだ明け方だろう。
僕はトキに事情を説明した。
トキもずっと心配してくれていたらしい。
「クー、お前の端末に金を送る。
お前の生活に必要なものを買うといいよ。
逸花のことは無理するな」
「トキ、ありがとう」
「気を付けて帰ってこいよ」
「うんー!」
それから僕はあさみさんと簡単に契約を結んでもらった。
お皿洗いやトイレなどの水回りのお掃除の仕事をさせてもらえるらしい。
もし体調の悪いときはあさみさんにすぐ言うようにと約束もした。
(頑張るぞ!)
「クーちゃん、神殿の行き方を教えるわ」
そうだ、氷漬けになった神殿に行くんだった。なにかわかればいいんだけれど。
あさみさんが地図を僕の端末に送ってくれた。
「クーちゃん、もしかしたら危ないかもしれないわ。くれぐれも気を付けてね!」
「ありがとう、あさみさん!」
僕は氷の神殿へ歩いて向かった。
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