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第二話
赤ちゃん
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「あつー」
世界統一事件からもう、数週間が経っていた。
また穏やかな日が戻ってきて、本当によかったなぁ。
「クー、休憩にするぞ」
「はーい!」
トキに呼ばれて、僕は立ち上がった。
今、トキと一緒に畑の草むしりをしている。
泰ねぎの苗を植えるためにだ。泰ねぎは煮るとトロっと甘くてとても美味しいねぎだ。他にもおすすめの調理法が沢山ある。
暑くて汗がふきだしてくる。腕で汗を拭う。
いつも僕達は、畑の隅に生えている大きな木の下にブルーシートを敷いて、休憩している。
「クー、はいお茶」
いつかがコップを渡してくれた。
冷たい泰茶がなみなみ入っている。
僕は一口それを飲んだ。小さい頃から飲んでいる味だ。
「おいしーい!」
「クー、午後は苗を植えるからな。よく休憩しとけよ」
「はーい」
「トキもお茶どうぞ」
いつかがお茶をトキにも渡す。トキの表情が緩む。
「ありがとう」
いつか大好きすぎかよ。
「あのね」
いつかが笑って言った。
「僕のお腹に赤ちゃんがいるの」
「赤ちゃん??」
びっくりして聞き返したらいつかが頷く。
「逸花、本当なのか?」
トキも知らなかったらしい。
いつかがお腹を撫でながら言う。
「安定期に入るまで油断できないけどね」
「いつか、その赤ちゃんて?」
「そう、クーのきょうだいができるんだよ」
僕はいつかに産んでもらったわけじゃない。
血のつながりもない。
でもいつかは僕を娘だって思ってくれている。
すごく嬉しくて、涙がこぼれてきた。
「クー、もうお姉さんなんだよ。生まれてきたらいっぱい遊んであげてね」
「うんー!」
僕、いつかがお母さんで本当によかった。
「よし、クー。草取りするか。
逸花、無理しないようにな」
「はい、トキ」
いつかが頷く。赤ちゃんを産むのって大変そうだ。僕もなにかできることあるかな。
いつかがお昼を作るからと家に戻ったのを見送る。草取りもラストスパートだ。
「泰ねぎが出来るの楽しみだね!」
僕は野菜を市場に売りに行くのが好きだった。
お客さんが直接美味しいって言ってくれるからだ。
モチベも自然と上がる。
「なぁ、クー。お前に頼みたいことがある」
トキが真面目な顔をして言う。
なんだろう?
「もうすぐコーナがここに来るんだ」
「へ?コーナって?あの?」
「そうだ」
コーナは泰の有力者の息子さんだ。
真面目でかっこいいと女性から人気がある。
剣技も得意だ。
「クー、コーナの面倒を見てやってくれないか?」
「いいけどさー」
コーナは時々天然だから心配だ。
「あ、あとな」
トキがポケットから手紙を出す。
誰からだろう?
「あさみさんから今朝、手紙が来たんだが、アレクもここに来るからな」
「え?そうなの?」
「ダンジョンチャレンジに挑むために修行がしたいんだそうだ。クー、頼むな」
「ええ?僕なの?」
「お前はもう修了してるんだし、いいだろ?」
相変わらずトキは、僕に無理難題をふっかけてくるなー。
「わかった。二人は僕に任せて」
そう言うと、トキがニヤリと笑う。
「クー、お前なら出来るよ」
それから僕達は泰ねぎを畑に植えた。
あとは土寄せをしたり堆肥をまく。
(コーナとアレクかー。喧嘩になりそう)
僕は一人、身震いをするのだった。
世界統一事件からもう、数週間が経っていた。
また穏やかな日が戻ってきて、本当によかったなぁ。
「クー、休憩にするぞ」
「はーい!」
トキに呼ばれて、僕は立ち上がった。
今、トキと一緒に畑の草むしりをしている。
泰ねぎの苗を植えるためにだ。泰ねぎは煮るとトロっと甘くてとても美味しいねぎだ。他にもおすすめの調理法が沢山ある。
暑くて汗がふきだしてくる。腕で汗を拭う。
いつも僕達は、畑の隅に生えている大きな木の下にブルーシートを敷いて、休憩している。
「クー、はいお茶」
いつかがコップを渡してくれた。
冷たい泰茶がなみなみ入っている。
僕は一口それを飲んだ。小さい頃から飲んでいる味だ。
「おいしーい!」
「クー、午後は苗を植えるからな。よく休憩しとけよ」
「はーい」
「トキもお茶どうぞ」
いつかがお茶をトキにも渡す。トキの表情が緩む。
「ありがとう」
いつか大好きすぎかよ。
「あのね」
いつかが笑って言った。
「僕のお腹に赤ちゃんがいるの」
「赤ちゃん??」
びっくりして聞き返したらいつかが頷く。
「逸花、本当なのか?」
トキも知らなかったらしい。
いつかがお腹を撫でながら言う。
「安定期に入るまで油断できないけどね」
「いつか、その赤ちゃんて?」
「そう、クーのきょうだいができるんだよ」
僕はいつかに産んでもらったわけじゃない。
血のつながりもない。
でもいつかは僕を娘だって思ってくれている。
すごく嬉しくて、涙がこぼれてきた。
「クー、もうお姉さんなんだよ。生まれてきたらいっぱい遊んであげてね」
「うんー!」
僕、いつかがお母さんで本当によかった。
「よし、クー。草取りするか。
逸花、無理しないようにな」
「はい、トキ」
いつかが頷く。赤ちゃんを産むのって大変そうだ。僕もなにかできることあるかな。
いつかがお昼を作るからと家に戻ったのを見送る。草取りもラストスパートだ。
「泰ねぎが出来るの楽しみだね!」
僕は野菜を市場に売りに行くのが好きだった。
お客さんが直接美味しいって言ってくれるからだ。
モチベも自然と上がる。
「なぁ、クー。お前に頼みたいことがある」
トキが真面目な顔をして言う。
なんだろう?
「もうすぐコーナがここに来るんだ」
「へ?コーナって?あの?」
「そうだ」
コーナは泰の有力者の息子さんだ。
真面目でかっこいいと女性から人気がある。
剣技も得意だ。
「クー、コーナの面倒を見てやってくれないか?」
「いいけどさー」
コーナは時々天然だから心配だ。
「あ、あとな」
トキがポケットから手紙を出す。
誰からだろう?
「あさみさんから今朝、手紙が来たんだが、アレクもここに来るからな」
「え?そうなの?」
「ダンジョンチャレンジに挑むために修行がしたいんだそうだ。クー、頼むな」
「ええ?僕なの?」
「お前はもう修了してるんだし、いいだろ?」
相変わらずトキは、僕に無理難題をふっかけてくるなー。
「わかった。二人は僕に任せて」
そう言うと、トキがニヤリと笑う。
「クー、お前なら出来るよ」
それから僕達は泰ねぎを畑に植えた。
あとは土寄せをしたり堆肥をまく。
(コーナとアレクかー。喧嘩になりそう)
僕は一人、身震いをするのだった。
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