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第一話
世界統一と聖女
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「トキー!」
走って家の中に飛び込むと、トキと二人のおじさんがいた。
もしかして警察の人?
「クー、すまない。俺が帰ったらこんな手紙が置いてあって」
トキが渡してくれたもの。それはピンク色のメモ用紙だった。
僕はそれを読む。
二人共、心配しないで。
逸花
たった一行の逸花からのメッセージだった。
筆跡はしっかりしているから、脅されて書かされたわけじゃなさそうだけど。
でも心配だ。
「クー、この方達は刑事さんだよ」
やっぱりそうなんだ。
僕は二人に挨拶をした。
刑事さんはいるだけで威圧感がある。
「この誘拐は普通とは違うかもしれませんな」
刑事さんの一人が言う。
普通ならお金や何かの条件を提示する電話がかかってくるだろう。
でも逸花は自ら進んでいなくなっている可能性があった。
「とにかく、応援を呼びます。これから電話が来る可能性もあります。
お二人はここにいてください」
「わかりました」
トキが応じる。
僕はといえば、情けないことに疲れ切っていた。
お腹だってすごく空いている。
刑事さんたちは一旦帰っていった。
「クー、よく見たらお前、ボロボロじゃないか」
「うん、知ってるよ」
ダンジョンに挑むのはやっぱり大変だ。
それにチャレンジは始まったばかり....
僕はここであることに気が付いた。
「いっけなーい!ゴールでダンジョンのクリア申請するの忘れてた!」
それがダンジョンチャレンジの要ともいえるのに。
「クー、落ち着け。迷宮社に問い合わせてやるから」
「本当?」
トキが端末で電話をかけてくれている。
僕はソファにどさりと腰を下ろした。
逸花は今、どこにいるんだろう。無事かどうかだけでもわからないかな。
僕は端末を操作した。
ここなら逸花のステイタスを確認できる。
彼女はオフラインのままだった。
(まぁそうだよね)
しょんぼりして端末を置こうとして、端末が震え始める。
友達のサファイアから着信が来ていた。
「もしもし?」
「クーちゃん、テレビは点いていませんの?でしたら点けてくださいな」
サファイアが慌てているなんて珍しい。
僕は言われたとおり、テレビの電源を点けた。
速報の大きな文字が現れる。ニュースのようだ。
「大手企業、迷宮社が先進国のトップらとチームを組み、世界中を一つの国として統一することを発表しました。
世界が統一されることによって、貧困や難民、格差差別などの人類が抱えるあらゆる問題を解決できると迷宮社代表のアクア氏が語っています」
アクア?
なんで彼女の名前が?
「クー、どうした?」
トキに向かってテレビ画面を示した。彼もまた状況を把握したらしい。
「どうゆうことだ?聞いてないぞ」
トキの端末が震えだす。
それからずっとトキは電話応対していた。
とりあえず僕は台所にあったインスタントの泰そばを食べることにした。
一回食べて落ち着こう。
いろいろなことがありすぎて全くついていけない。
お湯を沸かして容器に注いだ。
逸花のご飯が食べたいな。
でもそれは今は叶わない。
トキの分も作っておいた。
テーブルにそれを運ぶ。
もう夕飯時だ。昨日までとても平和だったのに嘘みたいだ。悲しくなりながら泰そばをすする。
またテレビが速報を打ち出してきた。
今度はなんだろう?
画面を見ると、ヴェールを被った真っ白な女性が現れた。
僕はそれを見て驚いて箸を落とした。
「逸花??!」
間違いない、逸花だ。
彼女は石碑の前でひたすらに何かを祈っているようだ。アナウンサーが興奮しているのか早口でまくしたてる。
「あの方が聖女様です!我々を守って下さる唯一無二の存在ともいえるでしょう!」
逸花はどうしちゃったんだろう。
あの場所に行けば会えるのかな。
でもここどこなんだろう。
僕の端末が震えだす。またサファイアからだ。
「逸花お姉様のいる場所を特定しましたわ。
情報は運ばせました」
「ありがとう、サファイア」
「クーちゃん、大丈夫ですか?」
正直全然大丈夫じゃなかった。
でも僕はひとりじゃない。
みんながいる。
「サファイア、僕頑張るよ」
「無理はしないでくださいね」
「うん!」
トキは今、動ける状況にない。僕がやれることは全部やろう。トキが疲れ切った表情でやってくる。
「クー」
「トキ、おそばあるよ。伸びてるけど」
「あぁ、ありがとう」
トキが僕の向かいに座った。
「逸花の場所がわかったよ。サファイアが探してくれた。僕、明日そこに行ってくるよ」
「ありがとう、クー」
それから二人でおそばを食べた。
走って家の中に飛び込むと、トキと二人のおじさんがいた。
もしかして警察の人?
「クー、すまない。俺が帰ったらこんな手紙が置いてあって」
トキが渡してくれたもの。それはピンク色のメモ用紙だった。
僕はそれを読む。
二人共、心配しないで。
逸花
たった一行の逸花からのメッセージだった。
筆跡はしっかりしているから、脅されて書かされたわけじゃなさそうだけど。
でも心配だ。
「クー、この方達は刑事さんだよ」
やっぱりそうなんだ。
僕は二人に挨拶をした。
刑事さんはいるだけで威圧感がある。
「この誘拐は普通とは違うかもしれませんな」
刑事さんの一人が言う。
普通ならお金や何かの条件を提示する電話がかかってくるだろう。
でも逸花は自ら進んでいなくなっている可能性があった。
「とにかく、応援を呼びます。これから電話が来る可能性もあります。
お二人はここにいてください」
「わかりました」
トキが応じる。
僕はといえば、情けないことに疲れ切っていた。
お腹だってすごく空いている。
刑事さんたちは一旦帰っていった。
「クー、よく見たらお前、ボロボロじゃないか」
「うん、知ってるよ」
ダンジョンに挑むのはやっぱり大変だ。
それにチャレンジは始まったばかり....
僕はここであることに気が付いた。
「いっけなーい!ゴールでダンジョンのクリア申請するの忘れてた!」
それがダンジョンチャレンジの要ともいえるのに。
「クー、落ち着け。迷宮社に問い合わせてやるから」
「本当?」
トキが端末で電話をかけてくれている。
僕はソファにどさりと腰を下ろした。
逸花は今、どこにいるんだろう。無事かどうかだけでもわからないかな。
僕は端末を操作した。
ここなら逸花のステイタスを確認できる。
彼女はオフラインのままだった。
(まぁそうだよね)
しょんぼりして端末を置こうとして、端末が震え始める。
友達のサファイアから着信が来ていた。
「もしもし?」
「クーちゃん、テレビは点いていませんの?でしたら点けてくださいな」
サファイアが慌てているなんて珍しい。
僕は言われたとおり、テレビの電源を点けた。
速報の大きな文字が現れる。ニュースのようだ。
「大手企業、迷宮社が先進国のトップらとチームを組み、世界中を一つの国として統一することを発表しました。
世界が統一されることによって、貧困や難民、格差差別などの人類が抱えるあらゆる問題を解決できると迷宮社代表のアクア氏が語っています」
アクア?
なんで彼女の名前が?
「クー、どうした?」
トキに向かってテレビ画面を示した。彼もまた状況を把握したらしい。
「どうゆうことだ?聞いてないぞ」
トキの端末が震えだす。
それからずっとトキは電話応対していた。
とりあえず僕は台所にあったインスタントの泰そばを食べることにした。
一回食べて落ち着こう。
いろいろなことがありすぎて全くついていけない。
お湯を沸かして容器に注いだ。
逸花のご飯が食べたいな。
でもそれは今は叶わない。
トキの分も作っておいた。
テーブルにそれを運ぶ。
もう夕飯時だ。昨日までとても平和だったのに嘘みたいだ。悲しくなりながら泰そばをすする。
またテレビが速報を打ち出してきた。
今度はなんだろう?
画面を見ると、ヴェールを被った真っ白な女性が現れた。
僕はそれを見て驚いて箸を落とした。
「逸花??!」
間違いない、逸花だ。
彼女は石碑の前でひたすらに何かを祈っているようだ。アナウンサーが興奮しているのか早口でまくしたてる。
「あの方が聖女様です!我々を守って下さる唯一無二の存在ともいえるでしょう!」
逸花はどうしちゃったんだろう。
あの場所に行けば会えるのかな。
でもここどこなんだろう。
僕の端末が震えだす。またサファイアからだ。
「逸花お姉様のいる場所を特定しましたわ。
情報は運ばせました」
「ありがとう、サファイア」
「クーちゃん、大丈夫ですか?」
正直全然大丈夫じゃなかった。
でも僕はひとりじゃない。
みんながいる。
「サファイア、僕頑張るよ」
「無理はしないでくださいね」
「うん!」
トキは今、動ける状況にない。僕がやれることは全部やろう。トキが疲れ切った表情でやってくる。
「クー」
「トキ、おそばあるよ。伸びてるけど」
「あぁ、ありがとう」
トキが僕の向かいに座った。
「逸花の場所がわかったよ。サファイアが探してくれた。僕、明日そこに行ってくるよ」
「ありがとう、クー」
それから二人でおそばを食べた。
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