41 / 85
5
月姫の正体
しおりを挟む
「サヤちゃんにはやはりブルーが似合うなっ!」
「はぁ…」
セスさんの部屋に俺はいた。
セスさんはお洋服を沢山持っているようだ。ただでさえ広い部屋に壁一面の大きなクローゼット。
その隣には高そうな金縁の姿見が置かれている。俺はその前に立っている。
セスさんは、先程から俺にいろいろな色やデザインの服をあてがっては、感想を一人で述べている。
「うむ、決めた!サヤちゃん、まずは採寸をしようっ!」
「え?」
ぴしぃっとセスさんがメジャーをそばにあった棚から取り出す。
「ふむふむ」
そして俺の体のサイズを測ってはメモを取り出した。
胴回りに始まって二の腕、太ももなんかもだ。
さっきローブを仕立てるって言ってたけれど、もしかしてセスさんが作るのー?
「完成したらサヤちゃんに向かって魔法を打つからよろしく頼むよっ!」
そんな時、セスさんが突然そばにあったソファに座り込む。
疲れちゃったのかな?
そう思っていたらセスさんはまた立ち上がった。
でもさっきと全然雰囲気が違う。
「セスさん?」
「妾は月姫。
預言者だ」
「え?」
月姫と名乗った彼女は部屋を出ていく。俺は慌てて彼女、月姫を追い掛けた。
彼女は螺旋階段を上っている。
カツンカツンとヒールの音が響き渡っているので間違いないはずだ。
俺も上を目指して駆け上った。
しばらく上ると天文台のような場所に出る。天井はガラス張りで真上に月が見える。
月姫は杖を掲げて、何やら唱えている。俺はそれを見て怖くなった。
「月姫様…」
そっと声をかけると、彼女に真正面から見据えられた。先程の無邪気さは全く見られない。
「人魚の姫君よ、地上に災が訪れようとしている。
我らに力を貸してほしい」
「え…でも」
俺はそこで父さんの言葉を思い出していた。
(海底の魔導砲は地上を守るためにある…)
確かに父さんはそう言っていた。
「俺、今すぐ父さんに聞いてみます!魔導砲が使えるかどうか」
父さんと繋がっているこの石で話せるはずだ。
でも、緑の石にいつもの輝きが見られない。父さんの存在を感じることも出来なかった。
「なんで…?」
カツカツと月姫が近付いてきて石を撫でる。
「ふむ。術者の魔力が減衰しているようだ…」
「それは父さんが危ないってこと?」
「サヤ、お前の父は今、体力を回復しているのだろうと思う。おそらく命は問題ない。
だが災厄は確実に迫ってきている。おそらく残り一月もないだろう」
「そんな…」
「海底の魔導砲を撃つにはかなりの魔力が要る。
お前の父の力はその時に確実に必要になる。その魔力を回復させるために今から妾が薬を作ろう。
それを毎日、娘であるお前が飲ませるのだ」
「わ、わかりました」
月姫は笑った、とても静かに。
彼女はそれから俺に薬を作ってくれた。それは粉薬だ。
「サヤ、セスはしばらく眠る。
私がこうして表に出てくるのは彼女にかなり負担をかけるからな。
リヴァにもそう伝えてやってほしい」
「はい」
「サヤ、お前なら大丈夫だよ」
月姫に見送られて、俺は魔界城を後にしたのだった。
「はぁ…」
セスさんの部屋に俺はいた。
セスさんはお洋服を沢山持っているようだ。ただでさえ広い部屋に壁一面の大きなクローゼット。
その隣には高そうな金縁の姿見が置かれている。俺はその前に立っている。
セスさんは、先程から俺にいろいろな色やデザインの服をあてがっては、感想を一人で述べている。
「うむ、決めた!サヤちゃん、まずは採寸をしようっ!」
「え?」
ぴしぃっとセスさんがメジャーをそばにあった棚から取り出す。
「ふむふむ」
そして俺の体のサイズを測ってはメモを取り出した。
胴回りに始まって二の腕、太ももなんかもだ。
さっきローブを仕立てるって言ってたけれど、もしかしてセスさんが作るのー?
「完成したらサヤちゃんに向かって魔法を打つからよろしく頼むよっ!」
そんな時、セスさんが突然そばにあったソファに座り込む。
疲れちゃったのかな?
そう思っていたらセスさんはまた立ち上がった。
でもさっきと全然雰囲気が違う。
「セスさん?」
「妾は月姫。
預言者だ」
「え?」
月姫と名乗った彼女は部屋を出ていく。俺は慌てて彼女、月姫を追い掛けた。
彼女は螺旋階段を上っている。
カツンカツンとヒールの音が響き渡っているので間違いないはずだ。
俺も上を目指して駆け上った。
しばらく上ると天文台のような場所に出る。天井はガラス張りで真上に月が見える。
月姫は杖を掲げて、何やら唱えている。俺はそれを見て怖くなった。
「月姫様…」
そっと声をかけると、彼女に真正面から見据えられた。先程の無邪気さは全く見られない。
「人魚の姫君よ、地上に災が訪れようとしている。
我らに力を貸してほしい」
「え…でも」
俺はそこで父さんの言葉を思い出していた。
(海底の魔導砲は地上を守るためにある…)
確かに父さんはそう言っていた。
「俺、今すぐ父さんに聞いてみます!魔導砲が使えるかどうか」
父さんと繋がっているこの石で話せるはずだ。
でも、緑の石にいつもの輝きが見られない。父さんの存在を感じることも出来なかった。
「なんで…?」
カツカツと月姫が近付いてきて石を撫でる。
「ふむ。術者の魔力が減衰しているようだ…」
「それは父さんが危ないってこと?」
「サヤ、お前の父は今、体力を回復しているのだろうと思う。おそらく命は問題ない。
だが災厄は確実に迫ってきている。おそらく残り一月もないだろう」
「そんな…」
「海底の魔導砲を撃つにはかなりの魔力が要る。
お前の父の力はその時に確実に必要になる。その魔力を回復させるために今から妾が薬を作ろう。
それを毎日、娘であるお前が飲ませるのだ」
「わ、わかりました」
月姫は笑った、とても静かに。
彼女はそれから俺に薬を作ってくれた。それは粉薬だ。
「サヤ、セスはしばらく眠る。
私がこうして表に出てくるのは彼女にかなり負担をかけるからな。
リヴァにもそう伝えてやってほしい」
「はい」
「サヤ、お前なら大丈夫だよ」
月姫に見送られて、俺は魔界城を後にしたのだった。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【完結】異世界で小料理屋さんを自由気ままに営業する〜おっかなびっくり魔物ジビエ料理の数々〜
櫛田こころ
ファンタジー
料理人の人生を絶たれた。
和食料理人である女性の秋吉宏香(あきよしひろか)は、ひき逃げ事故に遭ったのだ。
命には関わらなかったが、生き甲斐となっていた料理人にとって大事な利き腕の神経が切れてしまい、不随までの重傷を負う。
さすがに勤め先を続けるわけにもいかず、辞めて公園で途方に暮れていると……女神に請われ、異世界転移をすることに。
腕の障害をリセットされたため、新たな料理人としての人生をスタートさせようとした時に、尾が二又に別れた猫が……ジビエに似た魔物を狩っていたところに遭遇。
料理人としての再スタートの機会を得た女性と、猟りの腕前はプロ級の猫又ぽい魔物との飯テロスローライフが始まる!!
おっかなびっくり料理の小料理屋さんの料理を召し上がれ?
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
帰らなければ良かった
jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。
傷付いたシシリーと傷付けたブライアン…
何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。
*性被害、レイプなどの言葉が出てきます。
気になる方はお避け下さい。
・8/1 長編に変更しました。
・8/16 本編完結しました。
雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される
Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木)
読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!!
黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。
死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。
闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。
そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。
BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)…
連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。
拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。
Noah
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
異世界TS転生で新たな人生「俺が聖女になるなんて聞いてないよ!」
マロエ
ファンタジー
普通のサラリーマンだった三十歳の男性が、いつも通り残業をこなし帰宅途中に、異世界に転生してしまう。
目を覚ますと、何故か森の中に立っていて、身体も何か違うことに気づく。
近くの水面で姿を確認すると、男性の姿が20代前半~10代後半の美しい女性へと変わっていた。
さらに、異世界の住人たちから「聖女」と呼ばれる存在になってしまい、大混乱。
新たな人生に期待と不安が入り混じりながら、男性は女性として、しかも聖女として異世界を歩み始める。
※表紙、挿絵はAIで作成したイラストを使用しています。
※R15の章には☆マークを入れてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる