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9・二人きりの夜

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新居に戻ってきたユウイは夕食の支度をしている。近くの市場で、パンに野菜と肉、その他香辛料を購入していた。城で働いた分の給金は今までユウイが見たこともない金額だった。きっと城下町の市場の物価は高いのだろうと覚悟して行ったらそれ程でもない。ユウイはホッとして食材を買い込んだのだ。ユウイは肉に香辛料をまぶして焼いている。ピリッとして臭みが抜け、香りも良くなるので、この辺りではよく食べられる家庭料理だ。あとは野菜でサラダとスープを作った。市場で買ったパンはまあるくふっくらとしている。すこし甘みのあるものだ。グレイはもうそろそろ帰ってくる頃だろう。ユウイは最後にスープの味を見た。美味しく出来ているだろうかと不安になったが、そこに玄関から音がする。グレイだ。ユウイは玄関に向かった。

「ユウイ殿、ただいま戻りました」

「お帰りなさい、グレイ様。ご飯作ったんですけど、食べますか?」

「ユウイ殿が作ってくれたんですか?」

ユウイがこくんと頷くと、グレイが嬉しそうに笑う。食事をテーブルに並べて二人は向かいに座った。

「頂きます」

神に祈りを捧げてユウイはサラダを一口食べてみた。この辺りでとれる実から絞り出す油と海から取れた塩で和えたものだ。

(うん、まあまあ…かな?)

「ユウイ殿、美味いです」

「よかった」

グレイはユウイの味付けが気に入ったらしい。美味い美味いと食べてくれた。
きっと訓練がハードなせいもあるだろう。ユウイが食後のお茶を淹れると、グレイはまた嬉しそうにした。

「あ、グレイ様。これ」

ユウイは先程部屋にあったプレゼントたちを片付けたのだ。その中にグレイからのプレゼントもあった。それは大きな緑の石が付いたペンダントだった。ユウイは早速身に着けている。

「こんな高そうなものありがとうございます。嬉しくて」

「それはユウイ殿を守るものです。気に入っていただけたなら何より」

風呂の支度をして、グレイに先に入ってもらう。ユウイは明日の食事の仕込みをしていた。今日買っておいた干した魚を捌く。これで明日は焼くだけでいい。

(できた…)

ホッとしながらユウイが手を洗っていると後ろに気配を感じた。ぎゅ、と優しく抱きしめられている。

「グレイ様?」

「ユウイ殿、明日は魚ですか?」

「そうですよ。美味しいといいんですが」

ふふ、とユウイが笑うとグレイに耳元で囁かれる。

「今はあなたの方が美味しそうですが…」

「っ!―」

ユウイは体を突き抜けるような心地よい低音にドキッとした。グレイが首筋に口付けてきて、ユウイはびく、と震えることしか出来ない。

「ん…ぐれ…い様…っ」

ちゅ、ちゅ、と繰り返しキスをされる。グレイの手が服の中に入ってきて、ユウイは慌ててその手を止めようとして後ろによろめいていた。あ、転ぶ。―とユウイは反射的に目を閉じたがその衝撃はない。トスっとグレイに抱き留められていたからだ。

「ユウイ殿、びっくりさせてしまいましたね。すみません」

すみません、と言いながらグレイは悪びれる様子もなくユウイを抱えあげてしまう。連れてこられたのはグレイの部屋のベッドだった。

トスっと優しく寝かされて組み敷かれている。

「まだ婚姻前ですから少しだけ」

グレイが味わうようにユウイの唇を奪う。

「ンんっ…ふ、ぅ♡」

「ユウイ殿、愛してます」

次の日、ユウイの唇はぽってりと腫れていた。
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