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7・確執
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姫のドレスを作り終え、ユウイは最後の調整にかかっている。
「お腹苦しくないですか?」
「大丈夫だ。昔はコルセットとかいう物で無理やりウエストを締め上げたのだろう?そんな物聞いただけでゾッとするわ」
今でもコルセットを使っている婦人もいるがユウイは笑って流した。
「これで雪まつりに無事に出られるな。ユウイ、お前も来るのだろう?」
「はい、王妃殿下にお誘いを頂いています」
ユウイは王妃のドレスも仕上げていた。これから最後の調整が待っている。姫の要望通り、時間が被るようにした。
「父上も母上にもこの祭はきっと楽しんでもらえる」
姫は前よりも穏やかになった…気がする、とユウイは密かに思っていた。隣国での暮らしを楽しんでいるようでユウイはホッとしている。結婚相手である王子や周りの者も姫に優しくしてくれているらしい。だからこそここに遊びに来られるのだろう。国王も王妃も特に咎める様子もない。ユウイはとうとう調整を終えた。
「わー!可愛い!さすがユウイだな!」
姿見を見ながら姫がはしゃいでいる。
「姫様、外に出る時は何か羽織ってくださいね」
「分かっておる!妾の可愛さは無限大だからな」
自信満々な所は全く変わっていない。ユウイは心の中で苦笑した。
そこに部屋をノックする音が聞こえる。もちろん王妃だ。
「妃殿下!お待ちしていました」
「は、母上」
姫が気まずそうにもじもじしているのを見て、王妃は笑った。
「可愛らしいドレスね、ノア。似合っているわ」
ぱぁっと姫が嬉しそうに笑う。
「では妃殿下、調整をしますね」
侍女たちの力を借りて、王妃も着替える。ユウイは最後の仕上げをした。
「これで完了です。お二人共、いかがでしょうか?」
「ユウイ様、素敵なドレスを本当にありがとう」
「ユウイ、礼を言うぞ」
ちょっとお茶でもとなり、ユウイは姫と共に茶会の席にいる。カリカリのスコーンに上等なケーキ、ユウイは一口食べてその美味しさに驚いてしまった。
(さすが料理長)
城の食事もさることながら、スイーツまでこのレベルなのかと改めて感激する。茶葉も相当上等なもののようだ。
「んむ、美味いな」
姫ももりもり食べている。
「ノア、ゆっくり食べなさい」
王妃が姫の口の周りをナプキンで拭ってやっている。18歳?とユウイは心の中で笑ってしまった。
「は、母上。ノアは悪い子でした。いつも母上になにかと逆らい…」
姫がしょんぼりとしながら言う。
「いいのよ、ノア。私も母として至りませんでした」
姫と王妃がお互いを見て笑い合う。ずっとあった確執が消えた瞬間をユウイは見た気がした。
「よし、ユウイ!雪まつりでは妾が案内をしてやろうぞ!」
いつもの調子に戻った姫にユウイは頷いた。
「して、式に妾は呼んでもらえるのだろうな?」
式?とユウイは首を傾げ、結婚式であることに気が付き顔が熱くなった。
「い、今準備中です」
「花嫁衣装を作っているのじゃろ?ユウイのデザインだ。きっと可愛らしいのだろうな」
姫に脇腹をツンツンされて、ユウイは照れ笑いをした。グレイとの式の日取りもだんだん具体的なものになってきている。本当に花嫁になれるのかと思うと緊張が上回ってしまうが、グレイと生涯を支え合っていこうとユウイは思っている。
「ユウイ殿!ここにいらっしゃいましたか」
グレイが颯爽とやってきた。そして姫と王妃に頭を下げる。
「妃殿下、姫様、お騒がせして申し訳ありません」
「ユウイ、行ってやると良い」
「では失礼致します」
姫と王妃は二人で話したいのだろうとユウイは席を外した。
「お腹苦しくないですか?」
「大丈夫だ。昔はコルセットとかいう物で無理やりウエストを締め上げたのだろう?そんな物聞いただけでゾッとするわ」
今でもコルセットを使っている婦人もいるがユウイは笑って流した。
「これで雪まつりに無事に出られるな。ユウイ、お前も来るのだろう?」
「はい、王妃殿下にお誘いを頂いています」
ユウイは王妃のドレスも仕上げていた。これから最後の調整が待っている。姫の要望通り、時間が被るようにした。
「父上も母上にもこの祭はきっと楽しんでもらえる」
姫は前よりも穏やかになった…気がする、とユウイは密かに思っていた。隣国での暮らしを楽しんでいるようでユウイはホッとしている。結婚相手である王子や周りの者も姫に優しくしてくれているらしい。だからこそここに遊びに来られるのだろう。国王も王妃も特に咎める様子もない。ユウイはとうとう調整を終えた。
「わー!可愛い!さすがユウイだな!」
姿見を見ながら姫がはしゃいでいる。
「姫様、外に出る時は何か羽織ってくださいね」
「分かっておる!妾の可愛さは無限大だからな」
自信満々な所は全く変わっていない。ユウイは心の中で苦笑した。
そこに部屋をノックする音が聞こえる。もちろん王妃だ。
「妃殿下!お待ちしていました」
「は、母上」
姫が気まずそうにもじもじしているのを見て、王妃は笑った。
「可愛らしいドレスね、ノア。似合っているわ」
ぱぁっと姫が嬉しそうに笑う。
「では妃殿下、調整をしますね」
侍女たちの力を借りて、王妃も着替える。ユウイは最後の仕上げをした。
「これで完了です。お二人共、いかがでしょうか?」
「ユウイ様、素敵なドレスを本当にありがとう」
「ユウイ、礼を言うぞ」
ちょっとお茶でもとなり、ユウイは姫と共に茶会の席にいる。カリカリのスコーンに上等なケーキ、ユウイは一口食べてその美味しさに驚いてしまった。
(さすが料理長)
城の食事もさることながら、スイーツまでこのレベルなのかと改めて感激する。茶葉も相当上等なもののようだ。
「んむ、美味いな」
姫ももりもり食べている。
「ノア、ゆっくり食べなさい」
王妃が姫の口の周りをナプキンで拭ってやっている。18歳?とユウイは心の中で笑ってしまった。
「は、母上。ノアは悪い子でした。いつも母上になにかと逆らい…」
姫がしょんぼりとしながら言う。
「いいのよ、ノア。私も母として至りませんでした」
姫と王妃がお互いを見て笑い合う。ずっとあった確執が消えた瞬間をユウイは見た気がした。
「よし、ユウイ!雪まつりでは妾が案内をしてやろうぞ!」
いつもの調子に戻った姫にユウイは頷いた。
「して、式に妾は呼んでもらえるのだろうな?」
式?とユウイは首を傾げ、結婚式であることに気が付き顔が熱くなった。
「い、今準備中です」
「花嫁衣装を作っているのじゃろ?ユウイのデザインだ。きっと可愛らしいのだろうな」
姫に脇腹をツンツンされて、ユウイは照れ笑いをした。グレイとの式の日取りもだんだん具体的なものになってきている。本当に花嫁になれるのかと思うと緊張が上回ってしまうが、グレイと生涯を支え合っていこうとユウイは思っている。
「ユウイ殿!ここにいらっしゃいましたか」
グレイが颯爽とやってきた。そして姫と王妃に頭を下げる。
「妃殿下、姫様、お騒がせして申し訳ありません」
「ユウイ、行ってやると良い」
「では失礼致します」
姫と王妃は二人で話したいのだろうとユウイは席を外した。
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