16 / 20
2
6・提案
しおりを挟む
「ユウイ殿、おはよう」
「ん・・グレイ様?」
ユウイはむくりと起き上がった。そしてハッとなる。
「俺、また机で寝て・・」
「ユウイ殿、すっかり机がベッドになってしまってますね」
グレイが笑いながらマグカップを渡してくれる。
「あの・・デザインを考えていてそのまま」
「承知しています。食べてはいらっしゃるようで安心しました」
「はい、しっかり食べてるので大丈夫です」
グレイの表情がなんだか曇っている気がしてユウイは首を傾げた。
「グレイ様、何かありましたか?」
「いや、陛下よりユウイ殿との婚姻を具体的にしろと仰せつかって」
「え!そうなんですか?」
「その・・・ユウイ殿は嫌じゃないですか?」
「はい、俺はグレイ様と結婚します」
グレイが優し気に目を細める。
「それなら準備をしましょう」
「準備?ってどういう?」
「私と共に暮らす新居を探さねばなりません。ユウイ殿がよければ城下町の住宅街に暮らすことになります」
「ひええ、結婚ってすごく生活が変わるんですね」
純粋にユウイが驚いているとグレイが真剣な顔で頷いた。
「あなたをもらい受けるからには、必ずあなたを幸せにして見せます」
その言葉に、どきっとなってしまったユウイである。
「グレイ様、素敵。―」
また心の声が漏れてしまったユウイにグレイは笑った。
「ユウイ殿は本当に可愛らしい方ですね。新居は私が探しておきます。ユウイ殿は自分の仕事に集中してください」
「すみません。いつもありがとうございます」
グレイと共に朝食を摂り、ユウイは仕事を始めた。
「ユウイ!妾がいなくて寂しかっただろう!」
今日も姫はこんな感じである。ユウイは心の中で苦笑した。
「あの、姫様、王妃殿下からこんな提案をされたのですが」
ユウイがそう言うと姫がむすっと腕を組む。
「どうせ妾が我が儘とかなんとか言っておったのじゃろう?」
「いいえ。姫のドレスに王妃殿下のドレスに使っている布を使って欲しいって」
「母上が?」
姫は本当に驚いているらしい。目を見開いている。
「姫様のこと、心配されていました。優しいお母様ですね」
「母上…」
「で、こういうデザインにしたんです」
ユウイは背中側のドレスデザインを姫君に見せた。背中は空いているがリボンで留める仕組みになっている。そのリボンを王妃殿下のドレスに使っているものを使う。
「これでよい、ユウイよ礼を言う」
「姫様のドレスの布を妃殿下のドレスに使ってもよろしいですか?」
「・・・妾は構わぬ」
ユウイはホッとして笑ったのだった。
***
「うあ、このスープ美味しい」
ユウイは昼食をグレイと食べている。いつものようにミユが食事を運んできてくれた。その際にユウイの結婚のことについて随分深いところまで聞かれたのだ。まだ何も決まっていないとおどおどしながら言ったら、頑張れと励まされた。どちらが年上か分からない。
「ユウイ殿、あなたのウエディングドレスのデザインは決まりましたか?」
グレイに問われてユウイはそろっとデザイン画をグレイに手渡した。タキシードのデザインもしている。
「ドレス、なかなか可愛らしいですな。タキシードも華やかです」
「今少しずつ作っているので、また確認に付き合って頂けますか?」
「分かりました。新居もまた見に行きましょうね」
「え、もう決まったんですか?」
「はい。ユウイ殿が気に入って頂ければそこにしようかと」
「わああ、嬉しいです」
未来への展望が見えてきてユウイは幸福な気持ちになった。
お昼を食べ終えてグレイは再び訓練に向かった。ユウイも作業を再開している。もうすぐ姫のドレスが完成する。ユウイはもうひと踏ん張りと作業を続けた。
姫のドレスの裾にフリルを縫い付けていく。
一段落してユウイが息を吐くとグレイがやってきた。
「ユウイ殿、今から新居を見に行ってみませんか?」
「わぁ、行きます!」
グレイが連れて行ってくれた場所、そこは所謂高級住宅街で、貴族が多く住む。ユウイはドキドキしながら新居までの道を歩いた。
「ここです」
グレイが示したのは白い建物だった。水色の三角屋根が可愛らしい。中に入ると広々としている。
「素敵ですね」
「ユウイ殿が気に入ってくれてなによりです。そうだ、ミシンを置きましょう。ユウイ殿がここで仕事が出来るように」
「でもミシンって高いんじゃ…」
ユウイが戸惑いながら言うと、グレイが笑う。
「ちょうどミシンの引き取りをしてもらいたいと依頼がありまして、それをもらってこようかと」
グレイは世渡りがうまいなぁとユウイは感心していた。二人で暮らすのは少し不安だが、グレイを信じてみようと思ったのだ。
「ん・・グレイ様?」
ユウイはむくりと起き上がった。そしてハッとなる。
「俺、また机で寝て・・」
「ユウイ殿、すっかり机がベッドになってしまってますね」
グレイが笑いながらマグカップを渡してくれる。
「あの・・デザインを考えていてそのまま」
「承知しています。食べてはいらっしゃるようで安心しました」
「はい、しっかり食べてるので大丈夫です」
グレイの表情がなんだか曇っている気がしてユウイは首を傾げた。
「グレイ様、何かありましたか?」
「いや、陛下よりユウイ殿との婚姻を具体的にしろと仰せつかって」
「え!そうなんですか?」
「その・・・ユウイ殿は嫌じゃないですか?」
「はい、俺はグレイ様と結婚します」
グレイが優し気に目を細める。
「それなら準備をしましょう」
「準備?ってどういう?」
「私と共に暮らす新居を探さねばなりません。ユウイ殿がよければ城下町の住宅街に暮らすことになります」
「ひええ、結婚ってすごく生活が変わるんですね」
純粋にユウイが驚いているとグレイが真剣な顔で頷いた。
「あなたをもらい受けるからには、必ずあなたを幸せにして見せます」
その言葉に、どきっとなってしまったユウイである。
「グレイ様、素敵。―」
また心の声が漏れてしまったユウイにグレイは笑った。
「ユウイ殿は本当に可愛らしい方ですね。新居は私が探しておきます。ユウイ殿は自分の仕事に集中してください」
「すみません。いつもありがとうございます」
グレイと共に朝食を摂り、ユウイは仕事を始めた。
「ユウイ!妾がいなくて寂しかっただろう!」
今日も姫はこんな感じである。ユウイは心の中で苦笑した。
「あの、姫様、王妃殿下からこんな提案をされたのですが」
ユウイがそう言うと姫がむすっと腕を組む。
「どうせ妾が我が儘とかなんとか言っておったのじゃろう?」
「いいえ。姫のドレスに王妃殿下のドレスに使っている布を使って欲しいって」
「母上が?」
姫は本当に驚いているらしい。目を見開いている。
「姫様のこと、心配されていました。優しいお母様ですね」
「母上…」
「で、こういうデザインにしたんです」
ユウイは背中側のドレスデザインを姫君に見せた。背中は空いているがリボンで留める仕組みになっている。そのリボンを王妃殿下のドレスに使っているものを使う。
「これでよい、ユウイよ礼を言う」
「姫様のドレスの布を妃殿下のドレスに使ってもよろしいですか?」
「・・・妾は構わぬ」
ユウイはホッとして笑ったのだった。
***
「うあ、このスープ美味しい」
ユウイは昼食をグレイと食べている。いつものようにミユが食事を運んできてくれた。その際にユウイの結婚のことについて随分深いところまで聞かれたのだ。まだ何も決まっていないとおどおどしながら言ったら、頑張れと励まされた。どちらが年上か分からない。
「ユウイ殿、あなたのウエディングドレスのデザインは決まりましたか?」
グレイに問われてユウイはそろっとデザイン画をグレイに手渡した。タキシードのデザインもしている。
「ドレス、なかなか可愛らしいですな。タキシードも華やかです」
「今少しずつ作っているので、また確認に付き合って頂けますか?」
「分かりました。新居もまた見に行きましょうね」
「え、もう決まったんですか?」
「はい。ユウイ殿が気に入って頂ければそこにしようかと」
「わああ、嬉しいです」
未来への展望が見えてきてユウイは幸福な気持ちになった。
お昼を食べ終えてグレイは再び訓練に向かった。ユウイも作業を再開している。もうすぐ姫のドレスが完成する。ユウイはもうひと踏ん張りと作業を続けた。
姫のドレスの裾にフリルを縫い付けていく。
一段落してユウイが息を吐くとグレイがやってきた。
「ユウイ殿、今から新居を見に行ってみませんか?」
「わぁ、行きます!」
グレイが連れて行ってくれた場所、そこは所謂高級住宅街で、貴族が多く住む。ユウイはドキドキしながら新居までの道を歩いた。
「ここです」
グレイが示したのは白い建物だった。水色の三角屋根が可愛らしい。中に入ると広々としている。
「素敵ですね」
「ユウイ殿が気に入ってくれてなによりです。そうだ、ミシンを置きましょう。ユウイ殿がここで仕事が出来るように」
「でもミシンって高いんじゃ…」
ユウイが戸惑いながら言うと、グレイが笑う。
「ちょうどミシンの引き取りをしてもらいたいと依頼がありまして、それをもらってこようかと」
グレイは世渡りがうまいなぁとユウイは感心していた。二人で暮らすのは少し不安だが、グレイを信じてみようと思ったのだ。
9
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?
桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。
前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。
ほんの少しの間お付き合い下さい。
虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト
春音優月
BL
真面目でおとなしい性格の藤村歩夢は、武士と呼ばれているクラスメイトの大谷虎太郎に密かに片想いしている。
クラスではほとんど会話も交わさないのに、なぜか毎晩歩夢の夢に出てくる虎太郎。しかも夢の中での虎太郎は、歩夢を守る騎士で恋人だった。
夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト。夢と現実が交錯する片想いの行方は――。
2024.02.23〜02.27
イラスト:かもねさま
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる