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4・花嫁に憧れて
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姫君の結婚式は盛大に行われた。ユウイはその様子を後ろから眺めていた。自分が作ったドレスを王族が着ているかと思うと不思議な気持ちになる。姫は終始ニコニコしていて、ユウイはホッとした。
「ユウイ殿」
ふと声を掛けられ振り向くとグレイだった。
「お寒いでしょう。ホットチョコレートです」
「わぁ、ありがとうございます」
生クリームの載ったホットチョコレートはユウイの大好物の一つだ。こく、と一口飲むと、濃厚な甘みが広がる。
「わぁ美味しい」
「よかった」
グレイが満足そうに笑う。どうやらそばにある屋台で買ったものらしい。ユウイは慌てて財布を出した。
「お金をお支払いしなければ」
「ユウイ殿、お気になさらず。私がしたいからそうしただけです」
グレイの言葉にはいつもメロメロになるが、今日は特別にそうだった。
(グレイ様大好き!。―)
「結婚式、しませんか?」
「へ?!」
唐突なグレイの言葉にユウイはポカン、となった。
「誰のですか?」
「私とユウイ殿の」
ユウイはその言葉に体が浮き上がるような気持ちになった。
「ユウイ殿、あなたのウエディングドレスを作りましょう」
「お、俺のウエディングドレス?」
ユウイはくらくらしていた。本当に?という気持ちでいっぱいだ。
「私は裁縫に不慣れですが、出来る事もあるはずです」
「グレイ様優しい、好き」
心の声が漏れてしまっていた。あ、と思ったがもう遅い。いつの間にかグレイに腰を抱き寄せられている。
「ユウイ殿がそう思ってくれて嬉しいです」
グレイが目を細めて優し気な表情でユウイの顔を覗き込んでくる。かああとユウイは顔が熱くなった。
「グレイ様、えっち過ぎます」
ぎゅっと目を閉じてユウイはふるふると首を振った。
「ユウイ殿に言われたくないですな」
「え?」
急に強張った声にユウイがそっと目を開けるとグレイが困ったように笑っている。
「ユウイ殿の方が私にとっては刺激的です」
「そんな」
「そこの!妾の結婚式でいちゃいちゃするでない!!」
姫にずばりと言われてユウイとグレイは頭を下げたのだった。
***
「ウエディングドレス・・俺が着てもいいの?」
その日の夜。ユウイは真っ白な紙の前で固まっていた。案が思いつかない時はいつも単調な作業で気持ちを切り替えるようにしている。ユウイは無心で布をハサミで切りだした。姫のドレスと王妃のドレスも作る必要がある。
無心で作業するユウイの手は早い。いつの間にか必要なパーツは全て切り出していた。外はいつの間にか真っ暗になっている。ユウイは作業の手を止めた。
「今日はここまでか」
ユウイはいつの間にかへとへとになっている。着替えてベッドに潜り込むと眠ってしまった。
次の日、ミユが運んでくれた朝食を摂ったユウイはミシンでパーツを縫い合わせている。
ミシンは今日も絶好調のようだ。外から騎士たちの声が聞こえて来る。今日も訓練に励んでいるのだろう。
「なにか装飾を付けよう。リボンかな」
ユウイは姫のドレスを見て呟いた。黄色のミニスカートドレスだが姫の品位は損なわれてはいけない。
「妃殿下は真珠にしよ」
ばたばたばたと足音がする。だが、姫は隣国に行ったはずだ。自分が疲れているのかと思ったらバタンとドアが開いた。
「ユウイ!妾のドレスは?」
「え?姫様、もう嫁がれたんじゃ?次のお祝いに隣国に持っていくつもりだったんですが」
ユウイが固まっていると姫がふんすと薄い胸をのけぞらせる。
「妾は好きなようにしていいのだ!だって姫様だからな」
なんという理屈・・とユウイは一瞬あっけに取られたがだんだんおかしくなってきてしまった。
「む、ユウイよ。何がおかしい?」
「さすが姫様です」
ユウイの言葉に姫は自信たっぷりにそうだろうとまたふんぞり返った。
「で、ドレスはどうなったのだ?」
ユウイはドレスを見せた。姫の瞳が輝きだす。
「なんと!可愛いではないか!」
「姫様は元気いっぱいなので足を出すデザインにしてみました」
「よいぞよいぞ。伝統なんてくそくらえだ」
姫の口が悪い・・・とユウイは思ったが、いつもこんな感じかと思い直す。
「もう出来るのか?」
「申し訳ありませんがもう少しかかります。最後は姫様のご都合のいい時に調整しますね」
「調整は母上と一緒にやってたもれ」
「え?」
姫が気まずそうにユウイから目線を反らした。
「姫様?」
「妾、こんな感じじゃろ?わがままを人の三倍くらい言ってきた」
自覚あったんだとユウイはおかしくなってしまった。
「母上はこんな妾をずっと見守ってくれたからな。最後くらいよい娘でいたいのだ」
「姫様。ご立派になられて」
「皆、妾を褒めちぎるだろう」
ふははと姫が高笑いをしている。ユウイはいつもの姫だったとホッとしたのだった。
「ユウイ殿」
ふと声を掛けられ振り向くとグレイだった。
「お寒いでしょう。ホットチョコレートです」
「わぁ、ありがとうございます」
生クリームの載ったホットチョコレートはユウイの大好物の一つだ。こく、と一口飲むと、濃厚な甘みが広がる。
「わぁ美味しい」
「よかった」
グレイが満足そうに笑う。どうやらそばにある屋台で買ったものらしい。ユウイは慌てて財布を出した。
「お金をお支払いしなければ」
「ユウイ殿、お気になさらず。私がしたいからそうしただけです」
グレイの言葉にはいつもメロメロになるが、今日は特別にそうだった。
(グレイ様大好き!。―)
「結婚式、しませんか?」
「へ?!」
唐突なグレイの言葉にユウイはポカン、となった。
「誰のですか?」
「私とユウイ殿の」
ユウイはその言葉に体が浮き上がるような気持ちになった。
「ユウイ殿、あなたのウエディングドレスを作りましょう」
「お、俺のウエディングドレス?」
ユウイはくらくらしていた。本当に?という気持ちでいっぱいだ。
「私は裁縫に不慣れですが、出来る事もあるはずです」
「グレイ様優しい、好き」
心の声が漏れてしまっていた。あ、と思ったがもう遅い。いつの間にかグレイに腰を抱き寄せられている。
「ユウイ殿がそう思ってくれて嬉しいです」
グレイが目を細めて優し気な表情でユウイの顔を覗き込んでくる。かああとユウイは顔が熱くなった。
「グレイ様、えっち過ぎます」
ぎゅっと目を閉じてユウイはふるふると首を振った。
「ユウイ殿に言われたくないですな」
「え?」
急に強張った声にユウイがそっと目を開けるとグレイが困ったように笑っている。
「ユウイ殿の方が私にとっては刺激的です」
「そんな」
「そこの!妾の結婚式でいちゃいちゃするでない!!」
姫にずばりと言われてユウイとグレイは頭を下げたのだった。
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「ウエディングドレス・・俺が着てもいいの?」
その日の夜。ユウイは真っ白な紙の前で固まっていた。案が思いつかない時はいつも単調な作業で気持ちを切り替えるようにしている。ユウイは無心で布をハサミで切りだした。姫のドレスと王妃のドレスも作る必要がある。
無心で作業するユウイの手は早い。いつの間にか必要なパーツは全て切り出していた。外はいつの間にか真っ暗になっている。ユウイは作業の手を止めた。
「今日はここまでか」
ユウイはいつの間にかへとへとになっている。着替えてベッドに潜り込むと眠ってしまった。
次の日、ミユが運んでくれた朝食を摂ったユウイはミシンでパーツを縫い合わせている。
ミシンは今日も絶好調のようだ。外から騎士たちの声が聞こえて来る。今日も訓練に励んでいるのだろう。
「なにか装飾を付けよう。リボンかな」
ユウイは姫のドレスを見て呟いた。黄色のミニスカートドレスだが姫の品位は損なわれてはいけない。
「妃殿下は真珠にしよ」
ばたばたばたと足音がする。だが、姫は隣国に行ったはずだ。自分が疲れているのかと思ったらバタンとドアが開いた。
「ユウイ!妾のドレスは?」
「え?姫様、もう嫁がれたんじゃ?次のお祝いに隣国に持っていくつもりだったんですが」
ユウイが固まっていると姫がふんすと薄い胸をのけぞらせる。
「妾は好きなようにしていいのだ!だって姫様だからな」
なんという理屈・・とユウイは一瞬あっけに取られたがだんだんおかしくなってきてしまった。
「む、ユウイよ。何がおかしい?」
「さすが姫様です」
ユウイの言葉に姫は自信たっぷりにそうだろうとまたふんぞり返った。
「で、ドレスはどうなったのだ?」
ユウイはドレスを見せた。姫の瞳が輝きだす。
「なんと!可愛いではないか!」
「姫様は元気いっぱいなので足を出すデザインにしてみました」
「よいぞよいぞ。伝統なんてくそくらえだ」
姫の口が悪い・・・とユウイは思ったが、いつもこんな感じかと思い直す。
「もう出来るのか?」
「申し訳ありませんがもう少しかかります。最後は姫様のご都合のいい時に調整しますね」
「調整は母上と一緒にやってたもれ」
「え?」
姫が気まずそうにユウイから目線を反らした。
「姫様?」
「妾、こんな感じじゃろ?わがままを人の三倍くらい言ってきた」
自覚あったんだとユウイはおかしくなってしまった。
「母上はこんな妾をずっと見守ってくれたからな。最後くらいよい娘でいたいのだ」
「姫様。ご立派になられて」
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