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3・偵察
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「ユウイ様、まずはドリンクを配っていただきたい」
「承知いたしました!」
バニー姿のユウイを見て、料理長らはやはりと唸っていた。どうやらこうなることを予期していたらしい。ユウイからすればなんとも複雑な心境である。他にも数名のバニーガールがいたが、ユウイのことを女性だと疑っていないようだ。ユウイは盆の上にグラスを載せ運び始めた。結構な重たさがある。
(意外と力仕事なんだな)
ユウイはパーティー会場内に入った。目新しいデザインのドレスを着た婦人たちに近付き、ドリンクを勧めながらドレスを観察する。
(あ、姫様だ)
ユウイはふと気が付いた。姫は今日フリルのあしらわれた淡い紫色の可愛らしいドレスを着ている。お祝いの言葉やプレゼントをもらっているようだ。
(ふふ、姫様はやっぱり可愛いドレスが好きなんだよな。俺も負けないくらい可愛いドレスを作るぞ)
姫は隣国へ嫁ぐことになっている。ユウイは頭の中でデザインを作り上げていた。
ふと見ると妃が国王に寄り添うように立っている。ユウイは何食わない顔で彼女の傍に近付き、観察した。採寸は済んでいるとはいえ、やはり本人を見なければイメージも湧かない。
(ふうん、話を聞く限り、華やかなイメージだったけど見た感じ堅実そうだな。もっと落ち着いたデザインのドレスの方が似合うのかも)
ユウイはす、とその場を静かに離れた。パーティーは夜が更けるまで行われ、ユウイはへとへとになりながら部屋に戻った。
「うぅ、疲れたし眠いけどデザイン…しないと。ユウイ、頑張れ!」
ユウイは残った気力を振り絞りペンを握った。
姫のドレスは今流行りだという足を大胆に露出したデザインになり、王妃のドレスは落ち着いた印象を与えるシックなドレスをデザインにした。
「も、もう駄目だ」
いよいよユウイは力尽きた。
✢✢✢
「は…!」
ユウイはガバリと体を起こした。寒い…と震える。当然だろう、レオタード姿なのだから。
「ユウイ殿、おはよう」
「あ…グレイ様、おはようございます」
グレイに温かいマグカップを手渡され、ユウイは受け取っていた。そして、だんだん顔が熱くなってきた。
「えーとグレイ様?俺、どこで寝てました?」
「机の上です」
ユウイはますます顔が熱くなってきた。と、いうことはグレイが自分をベッドに運んでくれたということになる。ユウイは恥ずかしさ以外に申し訳無さでいっぱいになった。
「ごめんなさい、グレイ様。俺、デザイン書いて限界になって」
グレイは笑った。
「気にしないでください。ユウイ殿の新しいドレスデザイン素敵です」
ユウイはハッとなった。
「見たんですか?」
「はい」
「あんな雑なラフを・・・」
ユウイは穴があったら入りたい気持ちでいっぱいになった。
「ユウイ殿のお仕事の邪魔をしていたら申し訳ない」
「そんなの全部俺が悪いんです。机で寝てたら確実に風邪を引いてました。グレイ様いつもありがとうございます」
ユウイは深々と頭を下げた。
「ユウイ殿、無理はしないでくださいね。今日からドレスを作り始めるのですか?」
「はい、そのつもりです。姫様の婚姻祝いにドレスを作りたいですし、王妃殿下にもなるべく早く」
「ユウイ殿、それならお昼は一緒に休憩しましょうか」
どうやらグレイはユウイが食事を摂り忘れるのではと心配してくれているらしい。
「はい、そうします」
ユウイは恥ずかしい気持ちを抑えて頷いたのだった。
「承知いたしました!」
バニー姿のユウイを見て、料理長らはやはりと唸っていた。どうやらこうなることを予期していたらしい。ユウイからすればなんとも複雑な心境である。他にも数名のバニーガールがいたが、ユウイのことを女性だと疑っていないようだ。ユウイは盆の上にグラスを載せ運び始めた。結構な重たさがある。
(意外と力仕事なんだな)
ユウイはパーティー会場内に入った。目新しいデザインのドレスを着た婦人たちに近付き、ドリンクを勧めながらドレスを観察する。
(あ、姫様だ)
ユウイはふと気が付いた。姫は今日フリルのあしらわれた淡い紫色の可愛らしいドレスを着ている。お祝いの言葉やプレゼントをもらっているようだ。
(ふふ、姫様はやっぱり可愛いドレスが好きなんだよな。俺も負けないくらい可愛いドレスを作るぞ)
姫は隣国へ嫁ぐことになっている。ユウイは頭の中でデザインを作り上げていた。
ふと見ると妃が国王に寄り添うように立っている。ユウイは何食わない顔で彼女の傍に近付き、観察した。採寸は済んでいるとはいえ、やはり本人を見なければイメージも湧かない。
(ふうん、話を聞く限り、華やかなイメージだったけど見た感じ堅実そうだな。もっと落ち着いたデザインのドレスの方が似合うのかも)
ユウイはす、とその場を静かに離れた。パーティーは夜が更けるまで行われ、ユウイはへとへとになりながら部屋に戻った。
「うぅ、疲れたし眠いけどデザイン…しないと。ユウイ、頑張れ!」
ユウイは残った気力を振り絞りペンを握った。
姫のドレスは今流行りだという足を大胆に露出したデザインになり、王妃のドレスは落ち着いた印象を与えるシックなドレスをデザインにした。
「も、もう駄目だ」
いよいよユウイは力尽きた。
✢✢✢
「は…!」
ユウイはガバリと体を起こした。寒い…と震える。当然だろう、レオタード姿なのだから。
「ユウイ殿、おはよう」
「あ…グレイ様、おはようございます」
グレイに温かいマグカップを手渡され、ユウイは受け取っていた。そして、だんだん顔が熱くなってきた。
「えーとグレイ様?俺、どこで寝てました?」
「机の上です」
ユウイはますます顔が熱くなってきた。と、いうことはグレイが自分をベッドに運んでくれたということになる。ユウイは恥ずかしさ以外に申し訳無さでいっぱいになった。
「ごめんなさい、グレイ様。俺、デザイン書いて限界になって」
グレイは笑った。
「気にしないでください。ユウイ殿の新しいドレスデザイン素敵です」
ユウイはハッとなった。
「見たんですか?」
「はい」
「あんな雑なラフを・・・」
ユウイは穴があったら入りたい気持ちでいっぱいになった。
「ユウイ殿のお仕事の邪魔をしていたら申し訳ない」
「そんなの全部俺が悪いんです。机で寝てたら確実に風邪を引いてました。グレイ様いつもありがとうございます」
ユウイは深々と頭を下げた。
「ユウイ殿、無理はしないでくださいね。今日からドレスを作り始めるのですか?」
「はい、そのつもりです。姫様の婚姻祝いにドレスを作りたいですし、王妃殿下にもなるべく早く」
「ユウイ殿、それならお昼は一緒に休憩しましょうか」
どうやらグレイはユウイが食事を摂り忘れるのではと心配してくれているらしい。
「はい、そうします」
ユウイは恥ずかしい気持ちを抑えて頷いたのだった。
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