花嫁に憧れて〜王宮御用達の指〜

はやしかわともえ

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2・バニー

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「…怒っていいかな?」

ユウイは配られた制服を見て呟いた。その制服はどう見てもバニー姿だ。腕には白いカフス。頭にはうさぎのピンとした白い耳。極めつけは露出の高い黒いレオタードに網タイツである。腰の部分にはちょんとうさぎの白い尻尾が付いている。

「俺のこんなカッコ見て喜ぶ人いる?一応着てみるけどさ。サイズが合うはずがないしね?俺は成人男性なんだから絶対に無理なんだし」

ユウイはぶつぶつ独り言を呟いて、んしょと侍女の服を脱いだ。そもそもこの服もぴったりだったことはかなりショックだった。男としてのプライドがガラガラ崩れたのである。ユウイはドキドキしながらレオタードを着てみた。残念だ。

「なんでぴったりなの?」

ユウイは信じられない気持ちでうさぎの耳も付けてみた。

「ユウイ殿?」

困惑した声に振り返れば、グレイがいる。ユウイは血の気が引いた。

「あ…グレイ様…」

「どうしたのですか?その格好は?」

グレイがユウイの手首を掴んで抱き寄せてきた。
彼の胸にもたれかかる形になる。

「何か無理なことを言われたのですか?」

「ち、違うんです。パーティーに潜入したくて」

「なんでまた?」

ユウイは料理長らにした話を繰り返した。

「なるほど。女王陛下にドレスを」

「はい、姫様にももう一着頼まれてまして」

「今回のパーティーは王女の婚姻を祝うものでしたね」

「はい、もう婚姻の儀は明後日です。ウエディングドレスが仕上がってるだけ良かったです」

「ユウイ殿、その格好は正直、心配です」

「あ、そうですよね。俺、男ですし」

「いや、そういう意味ではなく…」

ユウイは真意を捉えかねてグレイを見上げた。

「グレイ様?」

「その格好は私には少し刺激的で…」

ユウイは意味を理解して顔が熱くなった。

「わ、ごめんなさい!そんなつもりは!」

「いや、可愛らしいのは間違いないのですが」

可愛らしいと言われて、ユウイは胸がどきんと熱くなる。他の人間に言われたら複雑だろうが、グレイが言うと嬉しい。

「俺、グレイ様のことドキドキさせられるんですね?」

「ユウイ殿…気が付くのが少し遅い気が…」

グレイが苦笑しながら言う。しまった!と思ったがもう遅い。

「すみません、俺、鈍くて」

「いや、そんなユウイ殿が愛しいです」

愛しい…と真っ直ぐ言われて、ユウイの心臓がだんだんバクバクし始めてきた。

「グレイ様といるとすごくドキドキしちゃいます」

ギューとグレイにもたれかかるとよしよしと頭を撫でられる。

「ならキスでもしますか?ユウイ殿がせっかく可愛らしい格好をされてるのだから」

キス!?とユウイは慌てたが、したくないわけではないので、きゅと目を閉じグレイにアピールしてみた。グレイが近寄ってくる気配がする。唇に柔らかい感触。

「ん…」

ちゅ、と唇を吸われ、グレイの舌がユウイの口に侵入してくる。

(これ、よく聞く大人のキスだ!)

そう思ったが、ユウイはそのままグレイに身を委ねた。
ぢゅと舌を吸われてユウイの腰が震える。気持ちよくてたまらない。ようやく解放されたと思ったらふらついて、グレイに抱き留められていた。

「大丈夫ですか?ユウイ殿。少し休みましょうか」

「ひゃい♡」

グレイにお姫様のように扱われるのがユウイは嬉しい。彼のたくましい胸に頭を寄せるとトクトクと彼の鼓動がする。

「今日のパーティーはかなりのお偉方が集まるようです。ユウイ殿の知りたい最先端のファッションについてもきっと知られるでしょう」

「ふふ、楽しみですね」

ユウイの言葉にグレイも笑った。
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