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ある晩、ユウイは一人考えながら城の廊下を歩いていた。新しいドレスを作ると、依頼を請け負ったのはいいが、どうデザインすれば一番いいのだろうと考えている。社交界というものには当然流行り廃りがある。しかも、女性となればどの年代でも、その流行の最先端をより気にするものだ。今は素足を出すことに抵抗のない女性もいるらしい。いよいよ行き詰まってユウイは立ち止まって腕を組んだ。
「ユウイくん、お疲れ様」
ふと声を掛けられて、ユウイは顔を上げた。
「あ、帽子屋さん。お疲れ様です。あれ、なんでここにいるんですか?」
帽子屋は名前の通りシルクハットを被った男である。顔には常に白銀の仮面を付けているので怪しさ全開だ。ユウイとは旧知の仲である。ユウイの言葉に帽子屋は笑った。
「もちろん仕事だよ。姫様に素敵な髪飾りをと頼まれてね」
「髪飾り…」
そうだ、とユウイは思った。
「あのー、帽子屋さん。今最先端の流行りとか知りませんか?色々デザインしてるんですがこれ、という物ができなくて」
「なら実際にパーティーに潜んでみるのはいかがなものか」
「え」
ユウイは帽子屋の正気を疑った。平民の自分がパーティーに出られるはずがない。
「さっき料理番が人手が足りないとぼやいていたが…」
ユウイはそれだ、と思った。料理を運ぶ際にパーティー会場内を偵察すればいいのだ。なにか良いヒントが得られるかもしれない。
「ありがとうございます!帽子屋さん!」
ユウイは厨房に向かって走り出した。善は急げである。
「おや、ユウイ様。こんな所でどうされたのですか?」
厨房に向かうと料理長らシェフが明日の仕込みをしている。ユウイは彼らに自分を使って欲しいと頼み込んだ。
「ユウイ様が良ければお手伝い願います。グレイ様が漬け物を分けてくれたのですが、あれはユウイ様が?」
「あ、はい。母さんから習って、ずっと漬けてます」
「ユウイ様、ちょっとここで何か作れませんか?」
「へ」
料理長らがユウイをじっと見つめている。ユウイはやるしかないと腕まくりをした。
「あの、材料は?」
「ユウイ様のお好きなものを」
ユウイは調理を始めた。生米、チーズ、牛乳、クリーム、塩コショウを適量。母が教えてくれた料理は作り方こそシンプルだが美味かった。ユウイが作り上げたもの。それはチーズクリームリゾットだ。
料理長たちはユウイの鮮やかな手際に頷いていた。早速ユウイの作ったリゾットを口に運んでいる。
「ふむ…優しい気持ちになれるような味だ」
「シンプルな味付けなのにこの味は…」
「あの、ここで俺を使って頂けますか?」
「なにか事情があるようですな」
ユウイはファッションの流行を知るため、パーティーの会場内を見て回りたいのだと料理長らに正直に話した。村から出たばかりの自分にはそれを知るためのツテもないということも。帽子屋もいるが、彼は基本的に自分の作りたいものしか作らない。
「なるほど、それは熱心ですな」
「皆さんと同じです。もっと美味しい料理を作りたいって思うでしょう?」
確かにと料理長らが頷く。
「ユウイ様、パーティーは戦場ですよ。かなり上手く立ち回らなければ偵察の隙もない」
ゴクッとユウイは喉を鳴らした。だが、やらない手はない。
「頑張ります!よろしくお願いします!」
ユウイは頭を下げた。
「では、先程のリゾットのことを詳しく聞いても?」
「え、はい」
ユウイはパーティーに出されるメニューを聞いた。基本的にパーティーは立食形式で好きなものを好きなだけ食べられる。特に人気のある料理は頻繁に作って運ばなくてはならない。
「アルコールと相性のいいソーセージや揚げ物はかなり出ますからね」
「なるほど」
ユウイはこの間アルコールで失敗したばかりである。皆大人だなあと感心してしまう。
「ユウイ様、制服を手配しなくては」
「あ、そうですよね」
「ただ…」
料理長がユウイをくまなく見て呟く。なんだろう?とユウイは思ったが、料理長の真意は分からなかった。
「ユウイくん、お疲れ様」
ふと声を掛けられて、ユウイは顔を上げた。
「あ、帽子屋さん。お疲れ様です。あれ、なんでここにいるんですか?」
帽子屋は名前の通りシルクハットを被った男である。顔には常に白銀の仮面を付けているので怪しさ全開だ。ユウイとは旧知の仲である。ユウイの言葉に帽子屋は笑った。
「もちろん仕事だよ。姫様に素敵な髪飾りをと頼まれてね」
「髪飾り…」
そうだ、とユウイは思った。
「あのー、帽子屋さん。今最先端の流行りとか知りませんか?色々デザインしてるんですがこれ、という物ができなくて」
「なら実際にパーティーに潜んでみるのはいかがなものか」
「え」
ユウイは帽子屋の正気を疑った。平民の自分がパーティーに出られるはずがない。
「さっき料理番が人手が足りないとぼやいていたが…」
ユウイはそれだ、と思った。料理を運ぶ際にパーティー会場内を偵察すればいいのだ。なにか良いヒントが得られるかもしれない。
「ありがとうございます!帽子屋さん!」
ユウイは厨房に向かって走り出した。善は急げである。
「おや、ユウイ様。こんな所でどうされたのですか?」
厨房に向かうと料理長らシェフが明日の仕込みをしている。ユウイは彼らに自分を使って欲しいと頼み込んだ。
「ユウイ様が良ければお手伝い願います。グレイ様が漬け物を分けてくれたのですが、あれはユウイ様が?」
「あ、はい。母さんから習って、ずっと漬けてます」
「ユウイ様、ちょっとここで何か作れませんか?」
「へ」
料理長らがユウイをじっと見つめている。ユウイはやるしかないと腕まくりをした。
「あの、材料は?」
「ユウイ様のお好きなものを」
ユウイは調理を始めた。生米、チーズ、牛乳、クリーム、塩コショウを適量。母が教えてくれた料理は作り方こそシンプルだが美味かった。ユウイが作り上げたもの。それはチーズクリームリゾットだ。
料理長たちはユウイの鮮やかな手際に頷いていた。早速ユウイの作ったリゾットを口に運んでいる。
「ふむ…優しい気持ちになれるような味だ」
「シンプルな味付けなのにこの味は…」
「あの、ここで俺を使って頂けますか?」
「なにか事情があるようですな」
ユウイはファッションの流行を知るため、パーティーの会場内を見て回りたいのだと料理長らに正直に話した。村から出たばかりの自分にはそれを知るためのツテもないということも。帽子屋もいるが、彼は基本的に自分の作りたいものしか作らない。
「なるほど、それは熱心ですな」
「皆さんと同じです。もっと美味しい料理を作りたいって思うでしょう?」
確かにと料理長らが頷く。
「ユウイ様、パーティーは戦場ですよ。かなり上手く立ち回らなければ偵察の隙もない」
ゴクッとユウイは喉を鳴らした。だが、やらない手はない。
「頑張ります!よろしくお願いします!」
ユウイは頭を下げた。
「では、先程のリゾットのことを詳しく聞いても?」
「え、はい」
ユウイはパーティーに出されるメニューを聞いた。基本的にパーティーは立食形式で好きなものを好きなだけ食べられる。特に人気のある料理は頻繁に作って運ばなくてはならない。
「アルコールと相性のいいソーセージや揚げ物はかなり出ますからね」
「なるほど」
ユウイはこの間アルコールで失敗したばかりである。皆大人だなあと感心してしまう。
「ユウイ様、制服を手配しなくては」
「あ、そうですよね」
「ただ…」
料理長がユウイをくまなく見て呟く。なんだろう?とユウイは思ったが、料理長の真意は分からなかった。
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