花嫁に憧れて〜王宮御用達の指〜

はやしかわともえ

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6・グレイの部屋

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ユウイが気が付くと広いベッドに寝かされていた。天蓋のあるかなり高級そうなベッドである。ユウイは慌てて飛び起きて、自分が下着しかつけていないことに気がついた。

(なんだここ?!まだ履いてるだけマシだけど)

ユウイは毛布で体を隠しながら慎重に辺りを見回した。部屋の中は綺麗だ。

「ユウイ殿、起きられたのですか」

「グレイ様、俺…」

その瞬間涙がつっと瞳から流れる。寂しい気持ちはなかなか消えてくれそうにない。

「ユウイ殿…村に帰りたいのですね」

グレイの言葉にユウイは頷いていた。だが、まだ仕事がある。まさか自分がこんなにあっさりホームシックになるとは思わなかった。

「グレイ様、俺、ちゃんと仕事がしたいんです」

「はい。承知しています。ユウイ殿はずっと作業をされてますし」

グレイがそう言ってくれたのが嬉しい。

「確か、コロ村の祭は明日だとか」

グレイがユウイの傍に跪いた。

「明日村に一度戻りましょう。私たちもあなたを強引に城に連れてきてしまいました」

「あ、グレイ様たちのせいではないんです。なんていうか俺自身の問題で」

「ユウイ殿が安心して城に来られるよう、もっと配慮すべきでした」

グレイはどこまでも優しい。ユウイはまた泣きそうになってしまった。好きです、と反射的に言ってしまいそうになるのをなんとか堪える。まずは友達からだと自分に言い聞かせた。

「ユウイ殿、風呂に入ってきてください。着替えもありますから」

「わ、じゃあ入ってきます」

ユウイは浴室に向かって驚いた。大きな湯船だったからだ。平民の自分では絶対に考えられない待遇である。体を洗い、ユウイは湯船に浸かった。

「グレイ様、優しいし、素敵だな」

「ユウイ殿はそう思ってくれてるんですね?」

振り向くとグレイが立っていて、ユウイは心臓が止まるかと思うほど驚いた。

「あ、えーと、すみません。その、俺なんかが言っていいセリフじゃないですよね」

ユウイがアワアワしていると、ざぶりとグレイが湯船に浸かる。

「ユウイ殿、こちらへ」

ユウイはドキドキしながらグレイの傍に近寄った。何をされるか分からない。だがグレイならという気持ちもある。

「ユウイ殿は私を好きでいてくれてますか?」

「へ…ひゃ!!」

抱き締められてユウイは体を固くした。グレイの体は引き締まっている。胸から腹にかけて大きな傷痕があることにユウイは今更気が付いた。

「あ…これ」

ユウイがそっとグレイの傷を触ると、その手を握られた。

「騎士の名誉の負傷…といいますか」

グレイが困ったように笑う。

「痛かったですよね…?」

「大丈夫…と言いたいところですが、とても痛かったです」

よしよしとグレイに頭を撫でられて、ユウイはグレイの肩に顔を寄せた。グレイの腕の中は居心地がいい。

「ユウイ殿、明日は早めに出発しましょうか」

「はい」

✢✢✢

風呂から上がり、ユウイは服を身に付けていた。小柄なユウイに合う服をグレイが持っているはずもなく、ユウイが着るとブカブカだった。

「ユウイ殿、今日はそれで辛抱してください」

グレイに申し訳無さそうに言われたが、ユウイは嬉しかった。

(グレイ様素敵…。)

とメロメロ光線を打つくらいには。

グレイはユウイにベッドを使うように言ってくれた。グレイはどうするのかと思ったらソファで寝るらしい。ユウイは小柄だが、男と一緒に寝るのは嫌だろうなとユウイも納得した。

「おやすみなさい、グレイ様」

ユウイはもう眠たくてたまらなかった。

「ユウイ殿、良い夢を」

ユウイはもう眠っていた。
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